第7話 廃校舎編·怪
「分かってるって……イケテール君、何をだい?」
「さっきの花嫁の人形だ。オレ達が入った時には無かったのに、出ようとした時には置いてあった。これがどういう事か分かるだろう?」
アイリスはまさか、と目を見開く。
それを見てレントはフッと笑った。
「オレ達とは別の、第三者がいる。この廃校舎の中にな。」
それは、信じたくない事実だった。
「イ、イケテール、それは……今もいるって事?」
「おそらくな。」
「どっどうしてそれが分かるの!?」
「アレを見な。」
レントが指差した方を見ると、そこには先程まで置かれていなかった黒いマントがあった。
「ウソ……」
「おそらく、オレ達があの人形を倒して騒いでいる時に来たんだろう。」
「でも、人が来たなら分かるじゃない!!足音とか、姿が目に入るとかで。」
「……考えられるのは2つ。1つは、オレ達が前にも見た黒髪の女が置いた説だ。アイツはどうやら動けるらしいからな。」
「安心してる時に変な事言わないで!」
「もう1つは……考えたくないが、透明薬を飲んだ奴がこの廃校舎内にいるって説だ。」
クソマージメはそれを聞いて「イケテール君、だがしかし。」と声を上げた。
「透明薬は……何年も前に使用禁止になった筈だぞ?」
「え?」
アイリスは息を呑む。
「それなんだよな……クソマージメの言う通り、透明薬は5年前に作るのも使用するのも禁止になった。」
「じゃあ何が言いたいのよ?」
シェリーは不安げに問うた。
「……考えたくはないが、魔王の手下が潜んでいる可能性があるって言いたいんだ。そうだろう?イケテール君。」
「あぁ。それも、魔王にかなり近い奴だ。」
その言葉に女子は全員顔をこわばらせた。
アイリスは自分の鼓動がどんどん早くなるのを感じた。
「魔王が来てるって事はないの?」
リーズは祈るように聞いた。
「それはねぇな。魔王が1人でこんな所にノコノコ来る訳ねぇだろ。ここは国内トップレベルの魔法学校だぜ?」
その言葉に皆はホッと息をつく。
「じゃあ皆、この校舎は危ないから纏まって動こう!絶対に離れないように!!」
「そうね、そうしましょう!」
5人は固まって動いた。
玄関が見え、もう何も置かれていない事に喜んでいたその時だった。
「……ねぇ、アタシ達、何か忘れてない?」
シェリーの一言でアイリス達は「確かに。」と考え始めた。
「……何かが足りないよね。」
「そうそう。見慣れてるものっていうか……」
「……僕も、思い出せそうで思い出せない。」
レントがクソマージメの言葉にピクッと反応する。
「おい、クソマージメ。今何つった?」
「僕も思い出せそうでって……あ!」
「クソマージメ君、何か思い出した!?」
「僕だよ、僕だ!」
「は?」
アイリスとシェリーは急にどうしたのかとクソマージメを心配した。
「クソマージメ君、アナタは忘れてない。ちゃんとここにいる……って、ヤバい、結構ヤバい。」
「アイリス、アナタも思い出したの?」
「いや、完全には思い出せないけど……厨二病の子……」
「メーチャ君ね!」
「それだ!」と全員がチューニの存在を思い出した。
「どうしてメーチャ君はいないの?」
「確かアイツ、トイレに行ってた気がするぜ?」
レントのその言葉と同時に、奥から「アァァァァァァ!!!」という叫び声が聞こえた。
「メーチャ君よ!」
「急ごう!!彼の身に何か起きたら大変だ!」
5人は何度目になるか分からないが、再び廊下を走り出した。




