第12話 イチャつくな
「クソマージメ君!どうしてここに!?」
クソマージメはハァ、ハァと息を切らしていた。
おそらく、走ってきたのだろう。
「決まってるだろう!イケテール君を連れ戻す為に探していたんだ!さっき、君達が何か言い合ってる声が僕の部屋まで聞こえてきて目が覚めたんだ。それで、イケテール君が部屋にいない事に気付いた。一体、何をしているんだ?」
クソマージメ君はパジャマに三角型のナイトキャップを被っていた。
「最近、夜中にキィィーンって音が聞こえるっていう噂があるからそれを確かめに来たの。」
「そうそう。そしたらこの雌ブタと会ったって訳。」
アイリスがレントを殴ろうとするのをシェリーは必死に押さえていた。
「おー怖い怖い。もう雌ブタじゃなくて雌ゴリだろ。雌のゴリラ。」
「アンタねぇっ……!!」
「アイリス、今はみんな寝てる時間だから静かにしないと起こしちゃうわよ!」
「今更それ言う?」
チューニはシェリーにツッコミながら部屋に戻ろうとしていた。
「おい待てチューニ。どこに行くつもりだ。」
「ヒッ……!いや、ちょっとトイレ行きたくなったていうか……」
「……分かった。お前ぇ、怖ぇんだろ。」
「いいいいいいやっ!?僕は謎の金属音とか怖くないしっ!?」
「誰も何がとは言ってねぇよ。」
レントはアイリスにしかやらないドSの笑みをチューニに向けた。
アイリス以外の人間にその笑みを向けたのはチューニが初めてだった。
「まぁいい。トイレに行きてぇなら廊下の奥にあるトイレを使え。」
「え?」
「わざわざ部屋に戻ろうとしなくても、ちゃーんと廊下にもある。」
レントはニヤニヤしながら言った。
アイリスは「本当に性格悪いなコイツ」と思っていた。
「ちょっと。別にどこのトイレを使おうがその人の自由じゃない!」
「そうだぞイケテール君。スターマジックさんの言う通りだ。」
「チッ。まぁいい。行きたいんなら早く行け。」
チューニが自分の部屋のトイレに向かおうとしたその時、また聞こえた。
あの音が。
キィィーン
その場が一気に静まり返る。
「ねねねねぇっ、ちょっと流石に戻ろうぜ?」
「そ、そうよね!明日に響くと悪いし。」
「もう日付回ってるけど。」
「じゃ、じゃあみんな、戻ろうか。」
アイリスが「お休み。」と言い切る前にガチャッとドアが開く音がした。
よく見ると、一番奥の部屋のドアが僅かに開いている。
そして、何かがキラっと光った。
「あぁぁぁぁあぁぁ!!!出たっ!!出たっ!!出たぁぁぁぁ!!!」
「みんな、逃げるわよ!」とシェリーが言う前にチューニは大絶叫しながら猛スピードで階段を駆け降りていった。
「チューニ!!待ちやがれ!!」
「キョークド君、まずは落ち着こう!!」
男子陣が全員階段を降りていくものだから、アイリスとシェリーもそれに続いた。
「待って!!みんな速い!!スピード落として!!」
「雌ブタ、お前ぇが遅いだけだろ。」
「雌ブタって言うなぁぁぁ!!!」
「あ、悪ぃ。雌ゴリだったな。」
「ふざっけんじゃないわよぉぉぉ!!!雌ブタでも雌ゴリでもないわぁぁぁ!!!」
アイリスはレントに言い返す事に夢中になっていた為、足を踏み外してしまった。
「キャッ!?」
「は?」
アイリスが突然悲鳴を上げた為、レントは思わず振り返る。
自分に向かって落ちてくるアイリスがその目に映っていた。
ドサッ!!
全員が一斉にレントとアイリスを見る。
「同胞!!大丈夫か!?」
「アイリス!!」
「イケテール君!!スターマジックさん!!」
アイリスとレントは入学初日に起きた事故と同じように階段から落ちた。
「痛ぇ……何すんだ雌ブタ……じゃなくて雌ゴリ!!」
「呼び慣れないならもう普通に呼んで!!」
「雌ブタ!!」
「違う!そうじゃない!名前で呼べって言ってんの!」
アイリスはあの時と同様、レントの腹の上に座っていた。
「お二人さん、やっぱり階段は二人にとっての運命の場所でしか……」
「違う!!」
「イケテール君達……いい加減イチャつくのはやめてくれないか?照れ隠しなのは分かったから、せめて後にしてくれ。今はそんな事をしてる場合じゃないんだ。」
「クソマージメ君まで!?」
「レント……お前……入学3日で彼女いるとかマジ!?言ってくれよ!!」
「違ぇわ!このブスが一方的に絡んでくるだけだ!!」
「二人とも、照れないの。」
「照れてない!!」
「照れてねぇ!!」
二人とも額に青筋を立てながら慌てて距離を取った。




