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バンリオルを価格競争から救う2つの策とは?(第73、74話)

大商人バンリオルが危機に陥る! 奴隷を使う国から買った材木を売る別の商会がしかけた価格破壊!

このままでは、バンリオル商会は大損に…。

こんなとき、ミナのMBA脳はどういう答えを出すのか…。


初めて読む方のために、下に用語集があります!

 3人は改めて、落ち着いて話せる会議室に移動し、お茶を飲んで一息ついた。


「価格競争に陥った場合の解決策は、主に二つございます」

 ミナがカップをおいて、話し始めた。


 バンリオルもニキールも身を乗り出して聞き始める。

「ふたつ…ですか?」

 バンリオルは真剣な顔で説明を待つ。


「はい。ひとつは、同じ工場、あるいは同じ運搬経路で、複数の商品を動かすことです」

「な、なるほど。利益を倍にして経費を抑えるのですね?」


「そうです」

 さすがにバンリオルは理解が早い。


「そして、もうひとつは商品価値を高めて差別化することです」

 この二つは価格競争に陥った時のMBA的基本戦略だ。


「な、なるほど。しかし、材木の価値を高めるというのは…」

 番頭もバンリオルも、顔を見合わせている。


 材木の価値を上げるには乾燥を長くするしかないと思えた。しかし、それでは余計に経費がかかってしまう。


「一つ一つ説明させていただきますね。まずは、動かす商品を複数にする戦略ですが…」

 ミナは細かく説明を始めた。


「材木を仕上げるときに出るものが、商品になります」

「木切れですか?」


「はい、まず木切れです。それは、かまどに使えばよい燃料になるでしょう。これをまとめて販売します。たとえば、鍛冶屋やパン屋など、大きなかまどを持つ店です」


「な、なるほど」


「少し大きな木切れは別に集めて、家具職人や大工に補修材として売ります。そして、おがくずは梱包の時の緩衝材となるでしょう」


「なるほど…。きちんと木くずを分別するのですね!」とニキールが言う。


「そうです。それらが商品になると思えば、作業の時に分別できるでしょう」

「ああ、それはすばらしい! それならいろいろ活用できそうですな!」とバンリオルも嬉しそうに言った。


「そうだ。厩の敷材にも使えるし、…農地にまけば品質改良にもなるな!」

 バンリオルは頭の中で次々に売れる案を思いつく。


「はい。活用法はわたくしよりも皆様のほうがよくご存じでしょう」

 ミナは二人の反応が良かったのでほっとした。


「で、二つ目の差別化。これは大事です。これはある種の建築革命と言えます」

「ほう…。それはどのような?」


 バンリオルはワクワクしてミナの次の言葉を待つ。


「拝見したところ、王都の建物は高さが決まっています。ということは、最初からそのサイズで材木をそろえるのです」


「な、なるほど! 柱を王都の住宅専用にするのですな?!」


「そういうことです。もともと王都の住宅建設のために森を契約なさったのですから、ほとんどが王都用でしょう。ですから、王都の材木として特化するのです。


 こちらの材木はしっかりと乾燥がされています。それは信用の証です。


 ですから、王都に搬入すれば、大工はすぐにそのまま使える柱や梁として使えるように、仕上がりを規格化するのです。しっかりと乾燥させるからこそできることです」


「ええ、そのとおりです! 乾燥が十分ですから、狂いは少なくなります。確かに、倉庫内ですぐ使えるようになるまで仕上げられます!」


 ニキールも嬉しそうに言った。金がかかる乾燥の工程を認められたのがうれしかった。


「そして、品質保証をします。たとえば、バンリオルの焼き印を押すなどします。そして、焼き印がついた柱に、もし反ったり、割れたりしたものがあれば、無料で交換すると約束します。


 そうすれば、バンリオルの材木は評判となります。それで建てた家は堅固で、扉が開かなくなることもないし、壁がゆがむこともない。バンリオルの家はいつまでも美しいという評判です」


 これはブランド戦略だ。

「な、なるほど! それなら、安い材木を買うよりもうちの材木を買ってくれそうですな!」


 ミナにはさらなる案があった。

「将来的には、木材の規格のサイズをいくつかに決めておき、それに設計のほうを合わせるのです」


「えっ、なんと? ……木材に設計を…合わせる?」

 バンリオルは驚きの表情でミナを見た。一瞬頭が真っ白になった。


「材木に合わせて設計する…のですか?」

 もう一度ゆっくりと言葉に出す。それは常識とは真逆だ。


「そうです。設計図を拝見したところ、梁の長さも統一できるのではないかと思われます。

 柱の高さだけでなく、梁も一定の規格にしてしまい、今後は、それに合わせて設計するのです。


 王都の建物は、高さの規定はありますが、幅や奥行きについての規定はありませんよね? 

 規格材を用意すれば、すぐに使える建材が増えますから、大工の仕事も熟練でなくてもある程度こなせるようになるでしょう。


 すると、人夫の費用が抑えられ、工期も短くなります。

 つまり、バンリオルの材木を使えば、建築費用が安くなる、という評判を立てるのです」


「そ、それはすばらしい!!」

 バンリオルはニキールと顔を見合わせた。


「ええ! それなら、他にも案があります。柱、梁、あとは壁材や階段用の板も規格を作れば、大工の作業が簡単になります!」

 ニキールは興奮して言う。すでにいろいろなアイデアが浮かんできたようだ。


 これはプレハブ的発想だ。工場でできるところは工場で済ませる。

 建物の高さが同じである王都の住宅だからこそ、規格材が活用できるのだ。

 そうすれば、現場の工期はかなり短縮できる。


「お役に立てそうですか?」

「ええ、もちろんです。素晴らしいです! ミナさん、感謝します! ミナさんは女神エビーナの遣いです!」


 そう言って、バンリオルは立ち上がり、ミナのそばに立って、深い礼をして感謝を表すのだった。



第74話 人材活用



 農民支援制度については、来年の3月から導入する予定で、今、ブリア中に広げるための専用馬車と木箱を製作中だ。

 あとは、品質チェックのための熟練した農民、御者のできる運搬役を雇う準備と、その教育。数量や品質を記録する仕組みを確立し、農家一軒ごとに支払うための役場の担当を作らなければならない。


 その準備はイソールズ卿が役人たちを集めて進めていた。


 そちらのほうはミナが関わらなくても進むはずなのだが、要所要所で確認のためと称して、打ち合わせに出席し、エカーリアを連れて行った。エカーリアは書字板を持って、ミナについてまわるのだった。


 

 夏の収穫が終わり、ひといきつくと、アンドリオンはイソールズとその下の文官たち、そしてミナを呼んだ。そして、ミナのそばにはエカーリアがついている。


「夏の収税が無事に終わったが、農民支援策のほうはどうなっている? どこまで進んでいるか?」

 アンドリオンは担当のイソールズに質問した。


「は、まだまだ木箱や専用馬車を調達している段階でして…。ちょうど収穫の時期と重なりましたので、文官を十分に動かせていないのでございます」


 イソールズは落ち着いて答えた。しかし、その落ち着きがアンドリオンには気に入らない。


「しかし、次はまた労役だ、祝祭だと、忙しくなるぞ。すると、あっという間に冬だ。少しは制度を担う文官の教育は進んでおるのだろうな?」


「は。いえ。実は文官が足りておりません。今までは村役場に2人の役人と、各男爵からの代官が派遣されており、だいたいどこも3人で回しておりました。


 これに農民支援が加わりますと、あと4人は必要かと。エルノーではミナさんを含めて3人です。

 しかし、これからは村の全員が参加となるので、最低4人、できれば5人は必要でしょう。

 その人数を集めるのが…」


「う~む……確かに、各村5人増やすとなると…」

 村の数はブリア全土で120だ。すると、600人が必要となるではないか。


 アンドリオンはしばらく腕を組んで唸って、次にミナを見た。


「ミナ、これをなんとかいたせ」

「は、はい。人手不足ということでございますね」


「そうだ。なんとかならぬか?」

「人材…」


 ミナはしばらく考えた。

人材不足。いったいどうすれば、役場の仕事が回るのか? ミナは頭を働かせる…。

そして、現代の仕組みを思い出す…。それは何か?



用語集


ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て、自由港を作り上げようとしている。

ボリック・バンリオル … 大商人にして、諜報部を持つ

ニキール … バンリオルの番頭

農民支援策 … 農民の野菜を一括で買い上げる制度

イソールズ卿 … アンドリオンの官僚

アンドリオン … ミナが住むブリア領の若き領主

エカーリア … アンドリオンの妹。元引き込もり。

エルノー … ミナが住んでいた村で、野菜買取りの発祥の地

ブリア … アンドリオンの統治する領地


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