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独占契約が足かせに…ミナはどう解決するのか?(第72、73話)

ミナはエカーリアを披露する園遊会に出席する。そこには大商人バンリオルが来ていた。そして、バンリオルはミナに、ぜひコブルーに来て知恵を借りたいと言う。

しかし、コブルーではミナは襲われ、ミナの恋人カイルが襲われたばかりだ。それを心配する領主アンドリオンに止められ…。


初めてお読みになるかたは、下に用語集があります!

 ミナがとりなす。

「では、こうしましょう。わたくしはテンソル商会の者としてコブルーに行きます。

 そして、わたくしがボリックさんに何か良いご提案ができましたら、コンサル料…いえ、提案料をバンリオル商会からお支払いいただきます。


 そして、それをテンソル商会から領地に支払わせていただきます。これなら、領地も潤うお仕事となりますわ。いかが?」


「そ、それはすばらしい! もちろん、こちらとしては、しっかりとお支払いさせていただきます」

 バンリオルは大喜びするが、アンドリオンは渋い顔だ。


「君はすぐに悪知恵を使う…」

「悪知恵とは失礼な…」

 と、にらみ合っていると、


「お兄様ったら。ミナさんを独占し過ぎなのですわ」

 エカーリアが近づいて、アンドリオンをにらむ。


「こ、これはエカーリア様、はじめまして。ボリック・バンリオルと申します。お見知りおきを」

 バンリオルは初めてエカーリアを見たのだった。エカーリアも一礼する。


 そこへフィルベラもやってきた。

「そうですよ、アンドリオン。ブリアがどれだけバンリオルの恩恵を受けているか。それを考えると、バンリオルのお願いの1つや2つ、聞いて差し上げては?」


 ときどきバンリオルから王都の土産をもらうことのあるフィルベラは、もちろんバンリオルの味方であった。もちろん、バンリオルの取引量による税収が一番の貢献なのだが。


「ぐぐ…。わかりました、母上。ミナ、顔を隠していくのだぞ。貴族のような服も着るな。用が終わったらさっさと帰ってまいれ」


「はい。かしこまりました。ありがとうございます!」

 アンドリオンの渋い表情を見て、彼以外の4人は楽しそうに笑うのだった。



第73話 建築革命



 ミナはアンドリオンに言われた通り、カイルが買ってくれた庶民用のドレスを着て、黄色のスカーフで髪の毛を包み、その上にレースのケープをかぶる。これなら、顔の上半分と、特徴的な黒髪が隠れるだろう。


 そして、コブルーに行く馬車に乗る。馬車の中でボリックは説明を始めた。

 前回のように番頭ニキールと執事が一緒に乗っている。1泊の予定だ。


 騎士団の護衛を連れていけば逆に目立つので、バンリオルの私兵だけが現地でひそかに警護することになっていた。


「実は、ミナさんにご相談したいのは、うちの材木事業のことなのです」

「まあ。材木?」


 バンリオルが言うには、バンリオル商会はアーガリア大陸の国、スラーラから材木を輸入していた。それは、王都における住宅開発に必要な材木だ。


 しかし、1か月前から別の大商会であるルーガン商会が、アーガリアの別の国から材木を輸入し始めた。それがかなりの安値で、バンリオルは価格競争に追い込まれたと言う。


「その国は奴隷がいるのです。大変人件費が安く、材木がかなり安く調達できるようなのです。これではうちは売るだけ赤字になってしまいます。

 かといって、スラーラの森は独占契約をしており、この契約は解除できません。うちの信用にかかわりますので」


「つまり、赤字でも売らざるを得ないのですね」

「そうなのです」


(う~ん。価格競争はよくある話よね。MBAでは一番よくテーマになることだわ)

 ミナは過去の知識を思い出していた。


(奴隷を使っている商会と価格で争うのは難しい…。この世界には倫理的な制限ってないの?!)

 王都でロビー活動でもして、「奴隷を使っている商品の取引はしない」という法律をつくってもらいたいくらいだ。


「品質はどうなのですか?」

「同じアーガリアの材木なので、あまり差はないのです。ただ、ルーガンのほうは乾燥が少し劣ります。しかし、見た目ではすぐにわかるものではなく…」

「なるほど」


 価格競争に敗れた場合の次の手は、差別化だ。乾燥が不十分な木は、時間が経つと反ってしまい、建物の歪みの原因となる。品質は少し差があるとしても、それは時間が経たないとわからないものなのだ。

 これでは品質を訴えるのは難しい。


「その材木の用途は、王都の新規の住宅地の開発とおっしゃいましたか?」

「はい、そうです」


(ふうむ。何か考えられそうかも…)

 ミナのMBA脳がワクワクし始めた。


 ミナはバンリオルに案内され、コブルーのバンリオル材木倉庫を見てまわる。

山ほどの材木が積まれている。


 人夫たちは商会長がめずらしい女性の訪問客を連れているので、こそこそと噂話をしている。だが、若い女であることくらいしかわからない。


「こちらがいま入荷したばかりの荒挽きの材木です」

 番頭のニキールが説明する。広い倉庫の中を結構歩く。


「そして、こちらが乾燥を終えた材木です」

 乾燥には約1年かかる。かなりの場所と手間がかかり、経費となっているのだ。


「ルーガンはこれをアーガイルでやっています。あちらは土地も広いですから、その分倉庫代が安いですね。しかし、あまり乾燥が十分ではないので、反ったものもあります。うちもないとは言いませんが、かなり少ないはずです…」


 ニキールはこの工程を短縮したくはないのだろう。それは120年の歴史を持つ大商会のプライドだ。


「そして、こちらが仕上がりです」

 その場所ではおがくずや木の切れ端が混ざったまま端に積み上げられていた。


 ミナは仕上がりの材木を見て、触ってみた。仕上がりと言っても、現場で大工がサイズ直しをするだろうことが読み取れる。


「なるほど…」


 じっくりと倉庫を見て回った後、ミナはバンリオルに言った。

「王都で建設しているのは、前に見たような、同じ高さの建物ですか?」


「え、ええ。そうです。うちの系列の建設会社が建てています」

「その設計図を拝見することはできますか?」


 バンリオルは番頭と顔を見合わせる。ミナが設計図が読めるとは思っていなかったからだ。

「え、ええ。もちろんです。建材調達のために用意しておりますので」

 ニキールが答えた。


 こうして、3人はバンリオルの出張所に行き、その設計図を見ることにした。

 ミナは設計図を細かく見ながら、数字をチェックしていた。


 設計図の内容がわかるわけではない。ただ、寸法の数字を見ている。

「ニキールさん、この数字は材木の長さですか?」

「はい、そうです」


「倉庫の材木の仕上がりのサイズは、この設計図に合わせてあるのですか?」

「いいえ。合わせてはおりません。現場で大工がカットするようになっています」

「なるほど…」


 ミナは考えるときのポーズで、左手で右ひじを支え、右手をあごにおいた。

 そして、しばらく考える。


 それを見守っていたバンリオルが心配そうに声をかける。

「ミナさん、いかがでしょう?」


「はい。一応、案はございます。採用していただけるかどうかはわかりませんが…」

 とニッコリした。


「ぜひお聞かせください!」

 バンリオルは目を輝かせた。


ミナが提案するのは、利益を増やす商いのしかた。そして、未来の建築革命だった…。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! よかったら、評価、よろしくお願いします。


用語集

ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て、自由港を作り上げようとしている。

アンドリオン … ミナが住むブリア領の若き領主

エカーリア … アンドリオンの妹。元引き込もり。

ボリック・バンリオル … 大商人にして、諜報部を持つ

フィルベラ … アンドリオン、エカーリアの母

ブリア … コブルーのある領地の名前

コブルー … ブリア領内の港で、ミナが開発中

テンソル商会 … ミナが村娘のときに作った商会

ニキール … バンリオル商会の番頭



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