アンドリオンとバンリオルのミナ争奪の結果は… (第72話)
人は、誰かに必要とされると頑張るもの。
ミナはエカーリアにひそかに期待を…。
これまでのあらすじ。
アメリカ西海岸のコンサル会社で働いていたミナは、異世界に来て、ブリア領を侵略から守るため、豊かにすることになった。その一つがコブルー港の自由港化である。ミナは大胆に関税率を引き下げ、規則を厳しくする。しかし、それに反対する反乱分子に恋人のカイルが襲われ、ショックを受ける。しかし、心の癒しで立ち直ったのだった。
初めてお読みになるかたは、下に用語集がありますので、ご参考に。
「ま、お兄様! ミナさんにそんなことをおっしゃったのですか?」
とエカーリアがアンドリオンを怖い目でにらむ。
「う…。言った…かな。いや…」
アンドリオンはタジタジだ。
「はい。おっしゃいましたとも」
ミナはつっこむ。
「君が仕事から手を引くと困ると言ったのだ」
「大丈夫です。これからはエカーリア様も手伝ってくださいますわ」
そう言って、ミナはエカーリアにニッコリした。
「は、はい! が、頑張ります。わたくしが頑張らないと、ミナさんがご結婚できないのですよね?」
「そうなのです。今は仕事が多すぎて結婚のことなど考えられないのですわ」
そう言って、わざと疲れた顔をする。
「君は、結婚したい男はいないと言ったではないか」
「申しましたけど、それは忙しいから恋心を感じる暇がないのですわ」
「な、なるほど…。ならば、少し暇になれば、恋心を感じられると…?」
「そうかもしれません。アンドリオン様がご自分でおっしゃったではございませんか。忙しいと釣書を見る気も起こらないと。わたくしも同じですわ」
と、悩ましそうに首を傾ける。
「わ、わかった…。少し考えよう。仕事を減らせばいいのだな?」
「そうです。そして、わたくしの後任にエカーリア様がなっていただけるよう、わたくしが農民支援の仕事をお教えしたいと存じます。ですから、わたくしの仕事にエカーリア様をお連れしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「エカーリアが君の後任に…?」
アンドリオンはまじまじとエカーリアを見た。
「わたくし、大きな声を出す訓練をしておりますの。もう怖がりの子供ではございません。わたくしもお兄様のお手伝いをしたいのです」
そう言って、エカーリアは楽しそうに笑った。
「そ、そうか…」
(いつの間にか別人に変わった…)
アンドリオンは不思議なものを見るようにエカーリアとミナを交互に見た。
「わかった。許可する」
(やった! これでエカーリア様の教育ができるわ!)
ミナは心の中でガッツポーズをした。
ミナはひそかに計画を持っていた。せっかく学んだMBAの知識を誰かに教えるのだ。エカーリアならもともとの知識があるし、アンドリオンの補佐として役立つに違いなかった。
「2週間に一度は昼食会をしよう。よいな?」
アンドリオンはうれしそうに提案した。
その10日後、アンドリオンは城内で園遊会を開いた。
それは、前領主カリディオンの謹慎が解けただめだったが、隠棲していた理由を病気のためと言っていたので、領地の貴族たちに元気な姿を見せるという目的であった。
そして、もう一つの目的は、エカーリアを披露することだ。
ミナのこころの癒しを受けて1か月が経っており、声を出す練習もし、さらに、ミナによる暗示法を学んだため、この園遊会はその成果を見るための場として最適だった。
ミナも、このような場は初めてなので、どうふるまっていいかよくわかっていない。そのため、フィルベラが2人を指導するという立場になり、3人がともに行動するという設定になっていた。
(ダンスがなかっただけ、助かった…)
と、内心ミナはほっとしていた。まだダンスを習っていないのだ。早急に習わなくては…。
「ミナさん、わたくし、ドキドキしますわ…」
「エカーリア様、それはわたくしも同じですわ」
と、ミナが小声で打ち明ける。
「そうなのですか?」
「でも、平気な顔をするのです。誰でも、初めてのことをするときは、ドキドキするものなのです。それに挑むのが大切ですから。わたくしも平気な顔をして頑張ります」
そう言って、ミナはこぶしに力を込めた。それを見て、エカーリアはほっとしたようにクスッと笑った。
これは大富豪たちの前で行うプレゼンではない。あれよりもずっとましなはずである。
真夏の三時ごろから始まる園遊会は、広間から開け放たれた庭で行われる。
広間では、カリディオンに挨拶をする貴族たちが列をなしていた。
そして、テラスではエカーリアに挨拶をする貴族たちが集まる。若い女性や男性の貴族たちが色とりどりの衣装でエカーリアの前にやってくる。
「エカーリアでございます。初めまして」
と、エカーリアはちゃんと挨拶をしている。フィルベラがそばにいるので、安心しているようだった。
ミナは少し離れたところでそれを眺めていたが、「ミナさん」と声を掛けられた。
振り返ると、バンリオルがいた。
「ボリックさん、ブリアに帰っていらっしゃったのですね」
「ええ、それが、少々問題が起きましてね。その解決に戻ってきたのですが…。ここでミナさんにお会いできてよかった。ちょっとお願いしたいことがあるのですよ」
「まあ、何でしょうか」
「コブルーで少々問題が起きまして、その解決に力を貸していただきたいのです」
「まあ、わたくしが、ですか?」
「ええ。ミナさんに何か良いお考えでもないかと思いまして…」
バンリオルはめずらしく、少し悩んでいるような顔をしていた。彼は商いの女神の知恵を持っているとしか思えないミナの知恵をなんとしても借りたいと思った。
「わたくしでお役に立つのでしょうか…?」
と考え込んでいると、アンドリオンがいつのまにかやってきた。
「ならぬ。ミナはコブルーには行かせぬ。また命を狙われたらどうする?!」
「これは、領主様。お招き感謝いたします」
バンリオルは一礼する。
ミナは少し不機嫌な顔をして扇で口元を隠しながら、アンドリオンに抗議する。
「領主様、日ごろからボリックさんのお力をお借りしながら、こんなときには冷たいですこと」
「そなたの家族が大怪我をしたのであろう? また襲われたりしたらどうする?」
アンドリオンはカイルの怪我をミナに思い起こさせて、怖がらせる作戦だ。
「公けにしていかなければよいのではありませんか?」
「顔を隠していくということか? しかし、君はブリアの行政顧問なのだぞ。なぜ商会のためにコブルーに行かねばならぬ?」
それを言われると、ボリックも強く願うことができない。
大商人バンリオルの危機。それはいったい?
ミナはこの問題をどう解決するのか? 次回、ミナのMBA脳、炸裂!
用語集
ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て、自由港を作り上げようとしている。
アンドリオン … ミナが住むブリア領の若き領主
エカーリア … アンドリオンの妹。元引き込もり。
カリディオン … 前ブリア領主でアンドリオンの父。王太子暗殺計画に加わり、謹慎していた。
フィルベラ … アンドリオン、エカーリアの母
ボリック・バンリオル … 大商人にして、諜報部を持つ
コブルー … ブリア領内の港で、ミナが開発中




