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ミナ、あっという間にお金をひねりだす (第71、72話)

自由港を作るために、関税を下げたら、お金が足りなくなりました…。

さて、どう解決するのか?


初めて読む方は、下に用語集があります。

「なんだ、良い方法でもあるのか?」

 アンドリオンが顔を向ける。


「はい、サブスクでございます」

 ミナは得意げな顔で答えた。


「は? さぶすくとはなんだ?」


「(あっ、うっかりした…)

 つ、つまり…月額の利用料をもらって、ある種の便宜を優先的に受けられる権利を売るのです」


 思わずサブスクと言ってしまったが、つまりは毎月定額を支払うことで得られる優先権のことだ。


「便宜とは?」

「コブルーには、あと1週間もすれば、王都から警備兵や法官がやってきます。

 商人たちが困るのは、取引が増えれば必ず起きる揉め事と、治安の乱れです。


 だからこそ、警備や裁きが必要になります。ですが、取引が増えれば当然、問題も多くなり、その裁きを待つ時間が長くなります。


 そこで、会員制度をつくり、一定の金額を毎月支払う者は、警備や裁きの優先権を得られるようにするのです」


「ほう…。それはそんなに魅力的なものなのか?」

「ええ。きっと。早速、ボリックさんを呼んで、意見を聞きましょう。ちょうどブリアにいらっしゃいますので」


「ああ…。バンリオルか…」

 アンドリオンは顔を曇らせた。


「何か問題でも?」

 ミナは怪訝な顔をする。

「いや……別に」

 アンドリオンは不満気だったが、それ以上は言わなかった。



 次の日、バンリオルを城内に呼んで、ミナが優先権制度の話をする。文官の教育のために、何人かを同席させる。


「裁判の優先と簡略化、重点警備、荷揚げ・積み込みの優先列、通関の優先列、そして、あとはデータ…ええとコブルー全体の港湾取引記録をご提供します。1か月遅れになりますが」


「な、なんと! 取引記録?! それは本当ですか?」


 バンリオルはアンドリオンが驚くほど、その条件を喜んだ。


(港湾全体の取引記録がそんなに価値があるものなのか?)

 心の中で、アンドリオンはあきれている。

(商人とはわからぬものだ…)


「で、この特典を得るために、このような毎月の利用料をご提案します。どう思われますか?」

 と、ミナは特典付き優先権の料金を提示した。


「こ、これは…全特典で月800ポル…。これは本当ですか?!」

 バンリオルは目を丸くした。


「はい。その月に利用が1回もなくても、お支払いいただきます。5回だとしても、割増しはございません。月額は同じです。これで満足していただけますか?」


「も、もちろんですとも! うちのみならず、多くの商会が飛びつくでしょう」


 …とりあえず、これで20の商会が参加し、毎月1万6000ポルの収入を得ることができることになる。

 あまり増やしては優先権の意味がなくなってしまうので、一応様子を見て少しずつ枠を広げる予定だ。


 バンリオルが帰っていき、アンドリオンはしばらく唸っていた。


 思いもよらぬ形で、お金が得られるのだ。まるで魔法のようだった。

 文官たちも顔を見合わせて、煙に巻かれたような顔をしている。


「ミナ、もしかするとこれは…」

「はい?」

「港以外にも使える仕組みではないか?」


 アンドリオンは興奮を抑えて、恐る恐るミナに尋ねる。


「はい。使えます。領地内の裁判の優先と簡略化、領地内の輸送の警備優先請負、通行料の割引などを組み合わせて、毎月1000ポルくらいは得られるかもしれませんね。


 結構、参加する商会は多いと思います。プライク商会もきっと参加するでしょう」


「そ、そんなに? なぜ港よりもよりも利用料が高いのだ?」


「港は毎日使うわけではございませんし、警備の範囲も広くありませんが、領地内となると、かなり広くなりますから、その分、高くなります。


 それに、こちらには通行料の割引など、実質的にお金を節約できるものが含まれますので」


「な、なるほど…」


 アンドリオンはしばらく黙って考えていたが、顔を上げて、文官に言った。

「イソールズを呼べ!」


 こうして、サブスク戦略は領地一帯に広げられるかたちで立案された。その名は「特典付き優先制度」であった。



第72話 エカーリアの変身



 エカーリアはあれから人が変わったように明るくなった。


 自分が見捨てられた存在ではなく、愛されていたからこそ守られていたとわかると、世界が一変する。


 そして、家族から与えられていた深い愛情に気づくのだ。愛情はもともとあったのに、まったく気づけなかったのだ。


 過去の見方を変えると、今まで何を勘違いして、間違った過去を事実だと思っていたのかと、自分でも不思議なくらい過去が変わるのだ。


 そんなエカーリアの変化に、フィルベラもアンドリオンも気づき、ひそかに喜びあっていた。


ミナはエカーリアに発声訓練をさせている。今までのエカーリアの声は小さくて、これでは仕事をしようにも差し障るからだ。

エカーリアは腹式呼吸を学び、そしておなかから声を出す声の出し方を教わり、その訓練を毎日していた。


 サブスク案が通った次の日、アンドリオンに提案したとおり、ミナはエカーリアを誘ってアンドリオンの昼食会に行くこととなった。


 アンドリオンと仕事ではなく、客として会い、一緒に食事をするのは、ミナにとっては初めてのことである。


 領主一族の専属の料理人がつくった料理を、ミナは初めていただいた。


「このお料理、すばらしいですわ。このソース、どうやってつくるのかしら?」

 とミナが首を傾けて考えると…。


「君は料理をするのか?」

…とアンドリオンが言い、怪訝な顔をする。


「今はいたしませんが、もともと料理は大好きです」

「えっ、ミナさんは料理が好きなのですか?」


「ええ。わたくしがいた元の世界では、料理はひとつの趣味のようなものなのです。絵を描いたり、音楽を奏でたりするのと同じ趣味なのです。


 ほとんどは、クリスタという魔法人間ヒューマノイドのことだのようなものがやってくれるのですけど。

 時々は、自分なりに味を組み合わせて料理をするのが楽しいと思えるのです。

 ですから、仕事が休みの時には、楽しみとして料理をするのですわ」


「ふ~む。その魔法人間というのがよくわからぬ…」


「お兄様、ミナさんはあちらの世界のことをいろいろと話してくださったし、絵も描いてくださったのです。火もないのに勝手にお鍋が熱くなる魔法とか、いろいろあるのですよね?」


 エカーリアは嬉しそうに言う。


「そうか。そのような話はさぞかし楽しかったであろう。ミナは私にはそのような話をしてくれぬ。一切聞いたことがない」

 そう言って、少し不満気にした。


 その様子を見て、ミナとエカーリアは顔を見合わせてくすくす笑う。


「アンドリオン様、エカーリア様は、お兄様には縁談がない、とおっしゃっておいでですが、本当でございますか?」


 ミナはちょっと意地悪な質問をする。


「う…。な、ないわけではないぞ。しかし、…忙しくて、釣書を見る気がせぬだけだ」

「では、あるのですね?」


「ま、一応領主だからな。貴族たちから送られてくる。そ、そんな話はどうでもよかろう」


「でも、お兄様はわたくしには結婚しろとおっしゃるではありませんか」

 エカーリアが反撃する。


「わたくしには結婚するなとおっしゃいましたわ」

 ミナも反撃する。


いつもお読みいただき、感謝です! ありがとうございます!


よかったら、ブックマーク、よろしくお願いします! 


用語集

ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て、自由港を作り上げようとしている。

アンドリオン … ミナが住むブリア領の若き領主

コブルー … ブリア領内の港で、ミナが開発中

ボリック・バンリオル … 大商人にして、諜報部を持つ

ポル … この国の通貨の単位 1ポルは約1000円

 (この国では20万円が標準月収)

プライク商会 … ミナが最初に取引した商会

イソールズ … アンドリオンの官僚

エカーリア … アンドリオンの妹でパニック障害を持っていた

フィルベラ … アンドリオン、エカーリアの母


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