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第8話 カイルの気配り

異世界に来てしまったミナ。今までのキャリアが完全に消えた。

でも、なんとかこの世界で生き伸びる!

ミナは勇気を出して、農民が野菜を買い取ってもらえる仕組みを考え出した。

でも、プレゼンは反応がなく…。


ミナを助けたカイルは、ミナを買い物に連れて行くのだった。





 カイルは微笑んで、ミナを慰める。


「ま、気にするな。また機会はあるさ。…今からグリエンダルに行くぞ」

「どこ? それ」

「魔石や素材、買ってくれるとこ」


 水晶玉を踏むグリフォンの絵柄のあるサインのある店にやってきた。

 大きな両開きの扉の右側を押して、中に入った。


 カイルは慣れているらしいが、ミナは初めてである。


 広々としたロビーの正面に木製のカウンターがある。

 ロビーは吹き抜けになっていて、天井が高い。

 丸いランプをいくつも組み合わせたような大きなシャンデリア。

 壁には腰板がつき、その上は上品な縞模様の壁紙だ。


 木製の小さな彫刻の装飾が壁の四隅にあり、カウンターの左手にはつややかな手すりを備えた階段が二階へと続いている。日本で言えば、明治時代の洋館のような様式だ。


 カイルは誰もいないカウンターに近づいて、ベルを鳴らした。奥の部屋から女性が一人出て来る。


「こんにちは、カイル。買い取りをご希望ですか?」

「こんにちは、セリナ。そう。いくつか持ってきた」


 そう言って、カイルはカバンからいくつかの素材を取り出してカウンターに並べた。いくつかの魔物の内臓の天日干しと、薬草3種、それに少し大きめの黄金色の魔石だった。


「ちょっとお待ちくださいね」

 そう言って、セリナはカウンターの下から、大きな帳簿のような本を取り出した。


 セリナは赤茶色の髪を後ろで丸くお団子にまとめた40代の女性で、この店のベテラン店員だった。

 丸顔で優し気な雰囲気で、襟の立った薄い紫色のブラウスときっちりとしたベルベットの黒っぽい上着がとてもよく似合う。仕事のできる雰囲気だ。


 ミナは大人の雰囲気のセリナにしばらく見とれていた。


「ああ、ちょうどよかったわ。ロックベアの肝臓は注文が入っています。あとは…」


 セリナは注文票をチェックして、すぐに売れるか売れないかを考えているようだった。


「この魔石はかなり質が良いですね。ロックベアの今の相場はグラムで5ポル。これは…」


 セリナははかりに魔石を乗せた。


「362グラムですから、…1810ポルですね」

「わかった。それでいい」

 カイルはぶっきらぼうに言った。


 ミナはすぐに計算できなかったが、1ポルは確か、1000円くらいの価値があったはず。とすると、1810ポルは約181万円相当? 


 それは、ひとりの若者が手にするには大きな金額だと思った。


 結局、もろもろ売って、カイルは2300ポル以上を手に入れた。230万円というところだ。


 カイルは月に一度くらい売りに来るから、相当収入があるようだ。


 通常の10倍の稼ぎだ。と言っても、冒険者が儲からないなら、誰もなりたくないだろう。


 二人で店を出る。

 しばらく、カイルは無言だった。そして、カイルはミナの知らない道をどんどん進む。


「カイル、どこへ行くの?」

「この街の中心街」

「中心街?」

「店が並んでいるところ」


 つまり、西海岸で言うところのビバリーヒルズか、東京で言うところの銀座だろうか。


「何か買うの?」

「そう」

 カイルは言葉が少ない。もともと無口なのだ。


「ここだよ」

 カイルがミナを連れてきたのは、婦人服の仕立屋だった。


「えっ、ここ?」

 なんでカイルがこんな店に用があるんだろう? まったくわからなかった。

(ヨーカに何かを頼まれたのかな?)と思った。


「いらっしゃいませ」

 おしゃれな服を来た店員が出てきた。いわゆるハウスマヌカンだろう。着ている服が商品なのだ。

「こちらのお嬢様の服でございますか?」


 店員はミナを見た。

「え、いえ。違います」

 と言ったのだが、同時にカイルが言った。

「そう。薄い草色の生地はあるかな? それで服を作りたい」


「えっ?」

 ミナは今聞いた言葉が信じられなかった。

(カイルが私に服を?)


「できれば艶のある生地。色は薄い草色に限る」

 とカイルが注文を付けた。


「薄い色は汚れが目立ちますよ。よろしいのですか?」

「ああ、かまわない」

「冬物ではつやのある生地は…」

「ああ、春ものでいいんだ」

「かしこまりました」


 店員は奥の倉庫に行って、布地を探しているようだ。


「…カイルったら…」

 ミナは小さな声でカイルに抗議した。(なんで買うんだ)って言いたいのだが…。


「ミナはずっとヨーカのお古ばかり着てるだろ。それ、やめた方がいい」

「えっ…」


 そんなことをカイルが気にしているなんて、思いもしなかった。


 最近は寒いので、厚手の服をヨーカからもらったが、確かに何度も洗って色があせた、地味な茶色の服だ。農村では汚れが目立たない服を着るのが普通だからだ。


「商人たちの前に出るのに、農民の傷んだ服じゃだめだ。最初に着ていた薄い草色の服。あれはきれいだった。スカートはアレだけど」


「えっ…」


「ミナには、つややかな草色の服が似合う」

(えっ…)

 3回目は声も出ないくらい驚いてしまった。


(私が最初に着ていた服、まだ覚えていたんだ…)

 ミナの人生でこんなに驚いたことはないと言えるかもしれない。


 店員が二人がかりで布をいくつか持って戻ってきた。


「お嬢様、いえ、奥様でいらっしゃいますか?」

 ミナは真っ赤な顔になって、何も言えなかった。


「ま、そんなとこで…」

 カイルが信じられないセリフを言ったのが、気が遠くなりそうな耳に聞こえていた。

 

あのあと、カイルは布地を3つ選んでデザイン帳もカイルが見て、採寸して帰ったのだ。


 ミナが来ていた若草色に似た生地があり、それはすぐに決まったが、店員が他にも勧めるので、カイルは淡いピンクと淡いオレンジの生地も選んだ。結局3着も買ってくれたのだ。


「商人たちの前に出るのに、農民の傷んだ服じゃだめだ」

と彼は難しい顔をして言っていた。


(そうか。振興会で話すには、あの地味な農民の着る古ぼけた服ではアンバランス過ぎたんだわ。だから、私の考えを話しているとは思われなかったんだ…)


 それはミナも同意する。


 それから彼は言った。

「あの場で、夫婦じゃないとか、家族じゃないとか言えば、逆に怪しい関係と思われるだろ?」

 それを避けた、と言っていた。


(意外とよく考えてくれてたんだ…)

 ちょっとカイルを見直した。冒険者だから、あまり社会のことを気にしないんだろうと思っていた。


(それは違ったわ…)


これは、経済で国を侵略から守ろうとするミナの、長いお話。

まだ序盤です。ぜひ、お付き合いください。


ぜひぜひ、ブックマーク、よろしくお願いします。それが今のところ、生きがいです(*‘∀‘)

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