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第7話 前代未聞のプレゼン

異世界に来たミナ。今までのキャリアはすべてなくなった。

でも、何とか自立して、成功しなきゃ! じゃないとただの売り子で終わってしまう。

この世界が自分の求めることがあるとしたら、…それは経済の進化だ!

そう思って、ミナは勇気を出した…。



「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。エルノー村に住むミナと申します」


 商業振興会の広い会議室には、40人ほどの商人たちが集まっていた。

 もちろん、ミナのために集まったのではなく、定期会合のためだ。


 そこにお邪魔して、プレゼンをさせてもらう。正確にはプレゼンのプレゼンだ。


「今、村から街へ農産物を運ぶのは個人個人の人力に頼っていて、運べる量は決まっています。また、みな小さな荷車なので傷みも生じますし、雨にも弱いです。


 わたくしの提案はひとつ。商人の皆さまに、村の農産物を一括購入していただきたいのです。


 もちろん、売値はかなり安く設定することとなりますから、商人の皆様にはかなりお得な買い物となるはずです。


 村は無駄な行き来の時間がなくなり、売れ残りが減りますから、売値が低くても利益はあります。


 また、商人の皆様には、安く買えるだけでなく仕入れの量が安定しますから、市場で売るのはもちろんのこと、貴族のお屋敷や宿屋、飲食店などの大口の顧客の獲得も可能でしょう。


 今考えているのは日持ちする農産物です。まず根菜だけを対象にすれば、廃棄量も少ないでしょう。


 最初は、5日に一度定期便を作る予定で、シミュレー…いえ、実際の作業の流れを想定し、経費や売り上げの予測を立てています。


 ご興味のある方には、必要な初期費用、回収見込み、損が出る条件まで、紙にまとめてありますので、それをお見せできます」


 一気に話したが、聴衆は棒立ちで、特になんの反応も見せないように思われた。

 一息ついて、一同を見回して、ミナは言葉を続けた。


「これはこの村のためだけでなく、将来の大きな可能性のあるお話です。


 将来はこのような一括買い取り一括輸送を中心とした農業となるでしょう。


 農業が発展することは、国が発展することです。皆様が農業に貢献なさることは、国を守ることと同義です。ぜひ、一度詳しい説明をさせてください。


 …ご希望の方はコーダさんにご連絡いただければ、わたくしが参上し、説明をさせていただきます。

 どうぞ、よろしくお願いいたします」


 ミナは力強くスピーチをしたつもりだが、帽子をかぶって黒っぽい上着を着た商人たちは、なぜか唖然とした顔をしている。


 何か言い足りなかったのだろうか。間違った言葉を言っただろうか。…「シミュレーション」はうっかりしたが。


「ご清聴ありがとうございました」


 用意した言葉はここまでだ。ミナはお辞儀ではなく、スカートのすそをちょっと持ち上げる礼をして、壇上から降りた。


 拍手もなく無反応のように見えるが、何人かはきょろきょろとしている。


 何かを探しているようだ。何か足りなかったのだろうか。ミナにはよくわからなかった。



 ミナは材木商人コーダとともに会議室から出た。


 玄関ロビーに続く廊下で、コーダがミナに話しかけた。


「すごいお話でした…」

「え、そうですか?」

 ミナは意外に思った。


「でも、…皆様は特に質問もありませんでしたし、反応もなく、興味がないような…」

「いやいや。興味はあったと思いますよ。でも…」

「でも…?」


「まさか、ミナさんお一人でこの提案をなさるとは思いませんでした。みんなもそう思ったのだと思います。きっとどこかの大商人が陰にいるのではないかと…」


「えっ、そうなんですか?」

 それできょろきょろする人がいたのだろうか。


「若いお嬢さんがあんな商売の話をするなんて、前代未聞ですよ。いつ、『これは誰々の考えたことで…』と大商人の名前が出るのかと思っていたら、最後までお嬢さん一人でした。


 いや~、恐れ入りました。私なんかよりずっと商売人のようですな」


 コーダが笑いながら言う。


 つまり、ミナはどこかの大商人の代理人としてきたのだと思われていたようだ。


 いつまで経っても、黒幕の名前が出てこないので、みんなは煙に巻かれたように唖然としたらしかった。


 聴衆は話の内容より、場の違和感に意識が行き、種明かしがあるのではないかというほうに気が行ってしまったようだった。


(はぁ…。ダメじゃん…)

 ミナはがっかりした。理由はどうあれ、聞いてもらえなかったのなら、意味がない。


(勇気出したんだけどな…)

 深くため息をつく。


(うん。…すごく勇気、出した…)

 ちょっと涙が出そうになった。


 玄関ロビーで待っていたカイルが二人の会話を聞いていた。


 ミナに近づくと、預かっていた防寒のマントをミナに着せて、少し微笑んだ。


 ミナはコーダにお礼を言って、二人は商業振興会館を出た。


 外に出るとカイルはミナに改めて「どうだった?」と聞いた。


「うん、とりあえず…。できた」


 少し微笑んで答えた。コーダがあんなふうに言ってくれなかったら、今頃もっとがっくりとしていただろう。二度と挑戦なんかするものか、と思ったかもしれない。


「でも、…ダメかもしれない…」


 ミナは全然元気が出なかった。


 結局、ちゃんと話が耳に届かなかったようだ。


ミナが経済で国を侵略から救う物語。長いお話になりますが、ぜひお付き合いください。


ブックマークしてくださると、涙を流して喜びます。よろしくお願いいたします(*^^*)


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