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ミナを襲う計画を察知して…(第67話)

コブルーの人夫たちと寝起きして、情報収集をするカイル。大改革をする裏には必ず反対勢力がいるはず…。改革を推進するミナが危ない!

第67話 選ばない絵を選ぶとき



 その夜、コブルーの港は珍しく静かだった。

 潮の満ち引きの音と、遠くで軋む船の縄の音だけが聞こえる。


 ミナは頭に黒いケープをかぶり、倉庫街へ向かっていた。

 護衛は5人。アンドリオンがつけてくれた精鋭だ。

 税関の官吏が、荷の申告状況と実態がどれほど異なるかということを報告したいというので、荷の確認に倉庫に行くことになっていた。


 倉庫の扉を開けて中に入る。思ったよりも空いていて、あまり荷は積みあがっていない。

 すると、柱の影や、積み荷の裏から、冒険者らしき男たちが8人ほど現れ、反対側では扉が閉められた。


 そして、冒険者たちの後ろから、ローブを着た一人の男が前に進み出た。

「行政顧問ミナだな。ここで死んでもらおうか」

「あなたは誰?」

 落ち着いた声でミナが問う。


「誰でもよかろう。どうせ死ぬんだからな」

「税関官吏ファザール。答えなくてもわかっているわ」

「なに?!」


 しかし、突然ミナの姿が消える。

「な、なに? どこへ消えた?!」


 慌てたファザールは冒険者たちに叫ぶ。

「全員殺せ!」

 護衛たちと冒険者たちの乱闘が始まる。


 しかし、護衛たちは敏捷な動きで、あっという間に冒険者たちを薙ぎ斬る。

 失敗を悟り、扉から逃げようとする官吏の前に、黒髪の男が突然現れた。

 カイルだ。官吏の肩に剣を突き刺し、逃げられないように足を斬る。


 倉庫内の賊の全員が動きを止めた。


 騎士が一人、カイルのそばに近寄る。

「なめられたもんだな。騎士団5人に対して、冒険者8人とは」


 そう言ったのは、ミナの専属の護衛のゾーイだった。

「ああ、…俺も冒険者だけどな」

 そう言って、カイルはニヤッと笑った。ゾーイは騎士団の訓練でときどき剣を合わせた仲だった。

「ああ、あんたはラフカーンのお墨付きだからな」

 とゾーイがフフッと笑った。


 そこへ、黒いケープをまとったフライアが現れる。そして、ケープを脱いだ。

「終わったわね」

「ああ」


 倒れたファザールが女を見上げる。

「あの女じゃないな、お前…。最初から罠だと知っていたというわけか…」

 憎々しげな目でフライアを見る官吏は、騎士団に縛り上げられ、引きずられながら連れ出される。

 他の冒険者たちも拘束された。

 全員、コブルーの港湾警備所につれていかれ、詰問されることになるだろう。



「……失敗だ」

 倉庫から引きずられて出て来るファザールの姿を建物の陰から苦々しそうに見る男がいた。


 男はホアーブに駆け込んだ。

「……あの魔法使いだ。やつを呼べ」

「あんた、あいつは高すぎるから金が払えんと言ってただろう。一度断わったじゃねえか」

 店主はあきれたように言った。


「そんなこと言ってられるか。やるかやられるかって状況になっちまったんだよ」

 理性はとうに消えていた。


                 * * *


 ミナはカイルとフライアの隠れ家で潜んでいたが、カイルが迎えに来た。

「終わった。ミナ、帰ろう」

 カイルはミナに黒いケープを掛けた。そして、宿へ送り届けるため、石畳の道を歩いていた。今度はフライアではない。本物のミナだ。

 

 宿に続く細い路地を歩いていると、突然、カイルがビクッと震えた。

「カイル?」

 ミナがカイルの腕をつかむ。


 カイルは壁にミナをおしつけ、ミナを自分の身体と壁で守るようにして身を固くした。すらりと剣を抜く。

「なに…?」

 ミナはカイルが危険を感じているのだとわかり、ひそかにピッターを構える。


 カイルの目には死の絵がパラパラと浮かぶ。だが、死以外の絵が出て来ない。

「カイル?」


 ミナが半歩動いた。カイルの背からそれてまわりを見ようとした。すると、カイルの絵が止まる。カイルが死なない絵だ。


「ミナ、動くな!」

 カイルはミナに怒鳴る。そして、ミナを再び自分の身体で隠すと、剣をやみくもに振り回す。


(こいつはナスコムを使っている。だが、トーチを使う余裕がない。こいつはすぐそばにいる!)


 自分ではなくミナを狙っていることはあきらかだった。なぜなら、ミナが自分から離れると、自分の危険が去るからだ。


 だが、ミナの身体をカイルが隠せば、カイルを襲わざるを得ない。だから、剣は相手に届くはずだ。

 剣先に、確かな抵抗が走った。何もないはずの空間を刃が裂いた感触。

 これは知っている感触だ。カイルは振り回した剣が風魔法の風刃を斬ったことに気づいた。


(こいつ、風魔法も使うのか?!)

 なんてやっかいな! これでは剣が届かない? 


 しかし、風魔法はセイルフェンですら連続には使えないのだ。

(次は剣で襲ってくるか?!)


カイルは相手を想像して敏速に剣を振り回した。

「グッ」

 しかし、斬られたのはカイルだ。脇腹から血しぶきが飛ぶ。

 だが、その瞬間を逃さず、カイルが反撃する。

 男はその剣をよけきれず、かすり傷を負った。そこでナスコムが切れる。


 男の姿があらわになる。怒りの表情でカイルに剣を突き刺そうとした。

 だが、カイルが膝を折り、崩れかける。


(だめだ! 立て! ミナの姿がさらされてしまう…)

 しかし、次の瞬間、驚くべきことが起きた。


 男が目の前で吹っ飛んだ。心臓から血しぶきを上げて、ドサッと石畳に倒れた。

 カイルはミナが、ピッターを発したことに気づいた。


「カイル!」

 危険は消えた。

 カイルは倒れた。


カイルの固有スキル、「未来視」が危険察知に役に立つ! しかし、カイルは重傷を…。


いつもお読みいただき、ありがとうございます!


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