輸送革命の脅威。カイルはコブルーに潜入を…(第65、66話)
コブルー港で新しく採用される関税率に、聴衆は仰天! あまりの低さに夢かと思うほど。
しかし、ミナのプレゼンはそれだけではなく…。
「ここにないものは、後日発表されますので、少々お待ちくださいませ。
このように、コブルーは税率を大幅に下げます。それは明日から実施されます。
そして、もう一つ、大きな改革をいたします。
改革の一つは税率を下げること。
もう一つの改革は、一部の商品の荷運びのかたちを変えること。
この2つは対になって行われます。
その荷運びの新しいかたちを、これから皆様にお見せいたします。どうぞ、外をご覧ください」
ミナがそう言うと、大倉庫の扉がガラガラと開き、港が見える。護衛たちが扉を開けたのだ。
「さあ、皆様、倉庫を出て、あそこにある2台の馬車をご覧ください」
そう言って、ミナの護衛たちが倉庫の聴衆を外にいざなう。
ミナもバンリオルも他の文官たちも、馬車の周りに集まる。
「では、お願いします」
ミナが合図をすると、人夫たちが現れ、二つの馬車から荷物を運ぼうとする。どちらも同じ荷だ。
一方の馬車から人夫たちは穀物袋を担ぎ始める。
もう一方の馬車は、なんと荷台がそのままスライドし、地面に降りた。荷台には小さな車がいくつもついているのだ。
観衆は驚きの声を上げた。
「あれはなんだ?」
「どうなっているんだ?」
「なぜ荷を出さない?」
荷台ごと運ぶ人夫たちは船の前につくと、そのままタラップに荷台を上げる。そして、簡単に荷台を船に置き、荷台を滑らせながら奥まで運び込んだ。
もう一方の従来方式では、人夫たちが汗だくで袋を担ぎ、一つ一つ運んでいく。
「……終わりました!」
荷台ごと運んだ人夫たちがミナの前に並ぶ。
商人たちがもう一方の荷を振り返る。旧方式はまだ三分の一も終わっていない。
「ば、馬鹿な……」
「冗談だろ……?」
ざわめきが爆発した。
「あの荷台はなんだ?!」
「皆様、ご覧いただきましたように、これがこの港の新しい荷運びの仕組みでございます。
この箱は標準輸送箱と申しまして、船に運び込むために作られた専用の箱です。
専用の馬車で運び、港に着け、専用のタラップで船に運びます。船内も、段差のないように改造しております。
このやり方で荷を運べば、着岸から通関までの時間は圧倒的に縮まります。これがこのコブルーの新しいやり方です」
唖然とした聴衆の前に、バンリオルが進み出る。
「これが新時代の港の在り方です!」
ここに、ボリック・バンリオルの顔を知らない聴衆はいなかった。
ボリックは一つ言うごとに、聴衆に向かって両手を広げる。
「滞留時間は十分の一」
「盗難損失ほぼゼロ」
「人夫代は五分の一」
「さらに、この税率! コブルーは商人天国となるでしょう!」
誇らしげなバンリオルの顔を見て、商人たちはやっと本当に喜んでいいのだと悟る。
「う…うお~!!!!」
聴衆は興奮の雄たけびを上げた。それは商人の夢だった。まさかそれが現実になるとは…。
誰もが信じられない顔をして、互いに夢ではないかと腕をつかんでみたり、頬をはじいてみたりして、確かめ合う。
しばらくの興奮のあと、護衛の兵たちが並び、「王弟レオスト殿下のおなり~!」と高らかに言う。
聴衆は一瞬にして静かになり、兵が並ぶその先を見る。
すると、確かに豪華な服装を来た気品高い男が歩いてくる。そして、その男は台の上に立った。
「今から私、王弟レオストが宣言する。今この瞬間からこのコブルーは自由港となり、ブリアは自由都市となる! 誰にも手を出せない、商人たちの自由の港だ!」
「う、うお~!!!!」
一斉にこぶしを突き出し、観衆たちは再び雄たけびを上げた。中には興奮のあまり、涙する者もいる。
こうして、自由都市ブリアはその第一歩を踏み出したのである。
第66話 コブルー潜入
コブルーの潮風は、カイルにとって初めての香りだ。港町というものに今まで来たことがなかった。魔物がいるのはたいがい森。内陸部だからだ。
久しぶりにマントを着て、いつもの剣を差している。斜め掛けのカバンには最近狩ったセイルフェンの魔石と臓物の干し物、それにセイル二枚を持っていた。
コブルーにはそういうものを扱う店がひとつだけある。ホアーブという小さな店だ。
薄汚れた扉を押し開け、店に入っていく。扉についた鐘がカランと鳴った。
「やあ」
「誰だい? このへんじゃ見かけないな」
60歳くらいの男がカイルを見て怪しむように目を細めた。浅黒い肌で、少し太ってはいるが、若い頃は力自慢の男だったように思える。
「タンブリーのそばに住んでる冒険者だ」
「タンブリーに住んでるもんが何しに来た?」
「買い取りしてもらいたいものがあるんだ」
「ほう。見せてみな」
カイルはカウンターに魔石と臓物と二枚のセイルを置く。
「ほう…。これは驚いた。魔石は…セイルフェンじゃないか。これを狩れる者は少ないぞ」
「で、こっちがその臓物とセイルだ。りっぱだろ?」
店主は臓物と二枚のセイルを見る。
「お前さん、一人で狩ったのか?」
「ああ、俺はパーティーを組まない」
「ふうん…。いい腕だな」
そう言って、店主は魔石の傷をルーペで確認している。そして、臓物の大きさを見て、セイルの幅を測っていた。
「なんでうちに持ってきたんだ?」
「俺はな、他の国に行ってみたいんだ。だからコブルーに来た」
「なるほど…。冒険者ってのは旅好きだからな」
店主は警戒を解いて、魔石を測りに掛けた。
「こりゃ、結構な大きさだな。330グラムか。今の相場は1グラム…ええと…1.8ポルだな」
「ええ?! そりゃないだろ。タンブリーならもっと高い」
「なら、タンブリーに持っていきな」
「ちっ…。あそこの女とケンカしたんだよ…」
「グリエンダルだな。じゃ、仕方ないな。1.8ポルだ」
「…でもさ、アーガリアならもっと高く買ってくれるんじゃないか? セイルフェンはブリアにしかいないだろ?」
「ふん。セイルフェンはいないが、風魔法を使う魔物はほかにもいるさ。だから、高く売れるとしても、よほどのマニアみたいなやつだな。そんなやつにお目にかかることはめったにないぞ。売りたくないならもって帰りな」
「ち…。わかったよ。じゃ、こっちはどうだ? 臓物とセイル2枚だ」
「これはアーガリアでも人気でな。奥方たちの扇にするんだよ。色を塗ってな。ま、1枚10ポルだな。臓物は100ポルってとこだ」
「はあ…。そんなもんか。ま、いいよ、それで。魔石はやめとく。相場は日々変わるだろ?」
「……お前さん、腕が立つようだな」
店主は銀貨を12枚だす。
「ああ、俺は腕がいいぜ。なにか仕事があるならくれよ。俺はアーガリアに行きたいんだ。金がいる」
少し焦る様子を見せた。
「ふん…。国を出るなら金がいるな。ま、アーガリアにはここにはいないいろんな魔物がいるって言うからな。バーズとかな」
「ま、冒険者冥利につきるってやつだな」
「ふん。かっこつけてるが、おおかた、タンブリーでまずいことでもしたんだろ。ま、仕事が欲しいなら、また顔を出しな」
「ああ、わかった」
カイルはそう言って、店を出た。
すでにシステムが出来上がった現代から見れば、よく見えないけど、
当たり前に思えるインフラも、たくさんの工夫や手順の構築の連続です。
いったい、最初はどうやって作っていったんだろう?
そんなふうに考えながら世の中を見ると、案外、たくさんの発見や不思議がありますよ!
成功者の脳は、いつもゼロから考えます。だからこそ、ゼロから1を生みだせます!
これは、あなたの成功脳を活性化するための機能小説。続けてお読みくださるとうれしいです!
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さて、カイルはコブルーで諜報活動開始。つぎはいったい…?




