コブルー港の税率に、商人、驚愕! (第65話)
1か月以内に輸送箱を完成させよ、とミナに言われて、青ざめる文官たち。
「これは侵略から国を守る戦いです!」とミナにはっぱをかけられた文官たちは…。
「戦士が戦場で命をかけるように、我々も戦士のように挑むのです。それが領地を、国を救います!
そう言われれば、できませんとは言えない。
「まずは1か月先のゴールから逆算して、今何をすべきなのかを考えてください」
文官たちはごくりと息を飲み込み、死地に赴く戦士のように顔をこわばらせて頷いた。
「試験用の船はうちの船をご利用ください。ついでに、うちの船の一部を改造して、その箱に合わせましょう」
バンリオルは上機嫌で言った。
第65話 自由都市宣言
1か月後の4月の半ば。ミナとバンリオルは再びコブルーにやってくる。文官たちは港にずらりと並び、誇らしげに1か月の奮闘の結果を見せた。
完成した「標準輸送箱」がそこにあった。
「これがもっとも効率よく並べられ、重いものも楽に運べる形です」
文官は胸を張った。
木製だが頑丈で、下部には頑丈な鉄の台車がついている。重い樽が入っていても、大人四人で押して移動できるはずだ。扉は後方ではなく、横に付けて広く開くようにした。
雇った人夫たちに運ばせる。市場から穀物や酒樽を調達し、大型の船をひとつ借り、専用のタラップで輸送箱の使い勝手を検証する。
「うん、これならいろいろなものを簡単に運べそうですな」
バンリオルも満足した表情で頷いた。
「初期段階は、着いたほうの港にタラップはありませんから、箱自体を組み立て式にしております」
文官たちはなんどか他国での荷下ろしも検証していた。
「すばらしいですわ! これでいきましょう。これらの設計図は公開して、各国の商人につくってもらえば、世界共通の仕組みとなります」
「これはすごい。…これなら、商人たちは飛びつくでしょう」
バンリオルはあまりの革命的発想に、頭が追い付けないくらい感動していた。
「皆様、よくやりました! 見事なお仕事ですわ!」
そして、バンリオルとミナは、文官を交えて、コブルー港の税率を細かく決めた。
「税率5%」というのは平均であって、モノによって細かく税率は分かれる。それを文官に計算させ、だいたいの税率を出した。
食料 2%
塩 7%
酒 6%
香辛料 5%
染料 6%
織物 4%
………
「皆様、これでいかがでしょうか?」
ミナが文官たちとバンリオルを見回す。
皆、大きく頷いた。
「これなら、商人は殺到するでしょう。もちろん、真っ先にバンリオル商会が利用させていただきます」
そう言って、バンリオルは満面の笑みを見せた。
自由都市ブリアのコブルー港はこうして形を整えたのだった。
タンブリーの領主は、その日、賓客を迎えていた。
明日のコブルーの自由都市宣言に出席するレオスト王弟殿下をお迎えしたのだ。
王族がブリアを訪問することなど、まずない。領主アンドリオンにとって、初めての重要な外交だった。とはいえ、レオストと父カリディオンの密約がばれて、父は隠棲。レオストは塔に幽閉となったのだから、アンドリオンにも責任があり、華々しく迎えるのも気が引けた。
ひっそりとした歓迎の宴であった。
その後、ミナはブリア侯行政顧問として城に呼ばれ、初めてレオスト殿下に会った。アンドリオン、バンリオル、セグリオの同席の中、ミナはレオスト殿下に挨拶をした。
「お初にお目にかかります。ミナ・クロエにございます」
きれいに一礼する。
「そなたがミナか。王弟レオストである。兄上によると、大変賢いそうだな」
「いえ。とんでもございません。周りの殿方の温かいご指導のおかげでございます」
と、上司や大商人を持ち上げておいた。
レオストは42歳。兄のアルースト王とは4つ違いだ。
レオストは第二王子であるため、軍人として育てられていた。背が高く、肩幅の広い体躯で、その立ち姿だけで戦士とわかるほど無駄のない筋肉がついている。だが粗野さはなく、動きには王族特有の気品があった。鋼のような灰色の瞳。髪は深い黒にわずかに青みを帯び、首の後ろで軽く束ねられている。
普段は静かな威圧感をまとっているが、ミナを見てふっと笑った。
「このような若い娘に助けられるとは…。勇猛な戦士と謳われようと、何ほどの者でもないな」
そう自嘲して、高らかに笑った。
「は、恐れ入ります…」
なんと返事して良いかわからなかったが、おそらくお礼を言われたのだとはわかった。
「まあよい。私は報告は受けておるが、兄上同様、商人の考えはわからぬのだ。自由都市の宣言はするが、あとはそなたらに任せるぞ」
「は、お任せくださいませ」
そう言って、セグリオは頭を下げ、ミナとバンリオルも後に続いた。
4月30日。その日は朝からコブルー港の大倉庫に、百人を超える商人たちが集まっていた。
レオストの許可を得て、王府から出された予算で、輸送箱や専用馬車の発注は順調に進んでいた。そして、明日から実際にコンテナで商品を動かすのだ。
今日はブリアの自由都市宣言をレオストがすることになっていた。
大倉庫に集まったのは、大商会の代表または代理人たち、中小の商人、船主、運送業者たちだ。
ざわめきが止まらない。
「急に集めるなんて何事だ」
「新しい税の話らしいぞ」
「また搾り取られるんじゃないのか?」
「うわさによると、王族が来ているようだ」
「な、なんだと? そんな立派な宿はここにはないだろう?」
聴衆の前に文官セグリオが立つ。後ろにはミナとバンリオルが控えている。
「皆のもの! 本日はよく集まってくれた。このコブルーは400年の歴史を持つ自然の良港である。しかし、この港は明日から進化する。今までとはまったく異なる仕組みで動く港となるのである」
セグリオの言葉に、聴衆は大きくざわめいた。
「何の話だ?」
「聞いてないぞ? あんたは聞いているか?」
口々に隣の者と話し出す。
「これから、その仕組みを説明する。静かに聞くように」
そう言って、セグリオは下がる。そして、ミナが前に出た。
「ブリア侯行政顧問のミナでございます。これから、このコブルーの港がどのように変わるかをご説明します。まず、税率ですが…」
ミナは武道で鍛えた張りのある声を出す。
それを見て皆、息を飲んだ。女性の行政官にも驚いているが、いきなり税率の話である。「上がるのか?」と誰しも思った。
「税率が大幅に下がります」
「な、なんだと?!」
「そんなバカな?!」
「うそか、冗談か?」
「俺たちをバカにしているのか?」
ミナは両手を前に出して、「お静かに願います」と言った。
「これから新しい税率を発表いたします」
すると、文官たちが後ろに並び、それぞれに大きな看板のような札を持っている。プラカードだ。その札を裏返して、高く掲げる。そこには大きな文字で税率が書いてあった。
食料 2%
塩 7%
酒 6%
香辛料 5%
染料 6%
織物 4%
「し、信じられん…」
「これは夢か?…」
聴衆は呆然としていて、目の前の数字が信じられない様子だ。ぽかんと口を開けたまま、札の数字にみいっていた。
ゴールから逆算して、何をすべきか考える。
それが無理だとわかったら、ゴールをずらし、もう一度考える。
これが計画の立て方です。
事業において、重要なのは税金。これは大きく利益を左右そます。
特に、関税は国と国との間の関係性にかかわる大きな要素。それを動かすことで、国を動かせるのです。
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