ミナは誤解をチャンスに変える…! (第55話)
第二王子レオストとブリア領主の王太子暗殺計画がばれ、カイルとフライアは逃げた。
一方、ドンリオルとともに王城にいたミナは…。
バンリオルも驚愕している。
(エカーリア? 王太子殿下はエカーリア様をご存じなのだろうか?)
ミナが混乱している間に、王太子アルーストは言った。
「私はレオストを昨日捕らえた。それはそなたの父君にも関係があることであろう」
「え? 殿下、今なんとおっしゃいました? …それはまことでございますか?」
バンリオルはさらに驚愕して思わず顔を上げた。
「まことだ。レオストが私の暗殺をブリア領主の手の者に頼んだ現場を私自身が目撃したのだ。今、塔に幽閉中だ」
「な、なんと…」
「しかし、私はブリア領主を捕らえることは忍びぬ。そこへそなたが王都にいると聞いて、交渉係になってもらおうと思ったのだ」
と、アルーストはミナに向かっていった。
ミナはまだ黙っていた。首をかしげて頭のなかで整理をしていたのだ。
(ええと…? 私がエカーリアだと思っていて、領主のことを相談したいということ?)
「畏れながら殿下、この令嬢はエカーリア様ではございません」
「なに?」
バンリオルの言葉に、アルーストは戸惑った。
「我が諜報部の報告では、この娘はエカーリアと名乗り、アンドリオンを兄と呼んでおると報告が来ておる。この娘はかなり賢く、今まで表に出なかったのは、身分を隠して裏でさまざまな活動をしているのだと言う。違うか?」
(なにそれ?)
ミナは思い切り首を傾げた。
「いや、この令嬢は、ミナと申しまして…」
いつも余裕のバンリオルも、さすがに汗をかいていた。何がなんだか、彼もわからなくなってきた。
村娘というには、ミナはもともと気品を持ち、マナーも身についているからだ。
殿下に「実はエカーリアだ」と言われれば、「そうだったのか」と信じてしまいそうだ。
(自分が間違っている? いや、そんなはずはない。フライアを村に行かせて調査させたのだから…。確かに村に住んでいた)
ボリックはそれを思い出し、自分は間違っていないと自信を持った。
ミナはやっと頭が整理させてきた。
「王太子殿下。そこには誤解があると存じます。まずは、ゆっくりとご説明させていただきたいのですが…」
「ああ、すまなかった。まずは座るが良い」
そう言って、王太子は二人に椅子を勧めた。
ミナは深呼吸すると、胸元から身分証を取り出した。
「わたくしがエカーリア様でないことは、この身分証を見ていただければおわかりになると思います」
ミナが差し出すと、王太子はそれを侍従に渡した。
「ですが、わたくしのことをエカーリア様とお間違えになるのも、無理はございません。実は、アンドリオン様にそのことを頼まれたからでございます」
「なに? アンドリオンに頼まれた? エカーリアのフリをすることをか?」
「はい、その通りでございます。そこにはいろいろな事情があるのですが、それをお話しすると長くなります。わたくしは今、アンドリオン様の行政顧問という立場であり、またエカーリア様の家庭教師なのでございます」
侍従が身分証を王太子に戻し、耳元でささやく。
「なるほど。この身分証には確かに、ブリア領行政顧問ミナ・クロエとあるようだ。しかし、女が顧問とは、大変めずらしいことではないか」
ボリックも、「行政顧問」という役職は初めて聞いたが、だいたいの理由が推測できた。
「畏れながら、このミナ嬢はたいへん賢い娘でして、アンドリオン様の行政の手伝いをしているのは確かでございます」
「ほう…そうなのか」
「で、それよりも、先ほど大変なことをお聞きしました。レオスト様が捕らえられたと? そして、ブリア領主をどうするか、とお考えなのですね?」
ボリックが話をまとめた。
「あ、あの…」
ミナはやっと話が見えてきた。
要するに、王太子は共犯としてブリア領主を捕らえなければならない。 だが、領主を捕らえ、その領土を敵国に割譲するのは、あまりにも忍びないので、その逃げ道をエカーリアに相談しようとした、ということなのだ。
「畏れながら申し上げます。王太子殿下は、ブリア領主の罪を許し、その温情を感じてグリダッカルにブリアを割譲することを受け入れよ、と考えていらっしゃるということでしょうか」
とミナは王太子に尋ねた。
「うむ。そういうことだ。領主を捕らえて領土を他国に割譲すれば、民は反乱を起こしかねぬ。そなたはカリディオンの長女ではないようだが、行政顧問であれば、理解できるであろう、ブリア領のおかれた状態を。そして、レオストが捕らえられた今、ブリア領主はどうすべきかを。もう後がないのだ」
「はい。ですが、そのことについて、わたくしに別の案がございます。そして、その案のために、わたくしはアンドリオン様に行政顧問の地位をいただいたのでございます」
「なんと? 案だと? 割譲か、戦争かではなく、別の案でもあると申すのか?」
「はい、その通りにございます。アンドリオン様は賢いかたです。防御は侵略の解決にならないということも理解なさいました。かといって、割譲は受け入れられません。
ですから、第三の道を模索しておいでです。そして、わたくしが第三の案をご提案させていただきました。もし、お時間をいただけましたら、ぜひそのご説明をさせてくださいませ」
そう言って、ミナは一礼した。
ミナは思いがけず現れたすばらしい好機に、胸が躍るのだった。
フライアとともに逃げたカイルはどうなった? そして、ミナはなにを提案するつもりなのか…。
カイルはブリアに戻れるのか?
次回はカイルのその後と、王子レオストの思い。
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