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第二回目のコブルー祝祭に、クルスト突然の訪問。いったい何をしに?!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!

第188話 コブルー祝祭前夜の騒動


 翌日、ミナは王都を出発した。

 カイルはまだ王都なのだが、ミナはタンブリーに戻っていかなければならない。

 コブルー祝祭が近いので、忙しいのだ。


 今年の祝祭の見本市は10月7日から始まる。あと2週間後だ。

 昨年は一部の展示だけだったのだが、先行した商会の利益が多かったということで、今年からは全部の展示が10月7日からとなった。


 もう一つの目玉は、外国枠が増えたことだ。


「エビーナの招き」では、そのことも報告したので、五大商会以外の商会も、各地からコブルーに押し寄せるだろう。ひとところでまとまってたくさんの外国の商品が見られるというのは、今までにない機会だ。


 昨年、唯一の外国枠として開催したバンサラーのクッシャリエ商会展が好評で、それを聞きつけたバンサラーの他の商会や、他の国も出展を希望したため、今年の外国の商会参加者は12商会となっている。


 昨年、ミナはクッシャリエ商会代表のザッカリムから金貨10枚を取ったのだが、その分の香油の商品は売れたし、今年はお礼として出展を無料にしたので、喜んでもらえただろう。


(がめつくお金を稼いだけど……最終的にはけっこう余裕ができたのよね……)

 と、ザッカリムから取りすぎたかな、と心の中で「てへっ」と舌を出しているミナであった。


 ザッカリムのおかげで、今年は国際見本市と言えるほど、大きくなった。


 これは、コブルーが国際港となるには十分な布石だった。


 * * *


 いよいよ、10月7日となり、見本市が始まる。 

 祝祭の仕事はほとんど五大商会の担当者が進めているので、ミナはいざという時の相談役だ。


「ちょっと様子を見に行きましょ」

 とミナは護衛のゾーイを連れて、準備委員会事務所を出る。ふわりとしたベールを帽子の上からかけている。ゾーイに守られて、きょろきょろと周りを観察する。


 たくさんの人々がコブルー港に集まる。10人に1人は異国の服を着た人がいる。

 港にトロッコが行きかうさまを見て、多くの人が驚きの声を上げる。

 トロッコの貨車には、愛称がつけられており、「フェルビル1号」「フェルビル2号」といった具合だ。フェルビルの2人の弟子、「ティーゼン1号」「ダロン1号」というのもある。


「船にはみんな名前がある。貨車にも名前があっていい!」というフェルビルの主張が通ったのだった。

 トロッコは動いていないときも、人がぞろぞろと集まって、見に来た。

 コブルーが機能的な港であることがアピールできる良い象徴だ。


 スラーラの商人たちは大道芸人たちを一緒に連れてきたので、これはとても良い人寄せとなった。

 異国情緒たっぷりで、国際港コブルーならではの雰囲気だ。


(カイルがスラーラのドラーハー港で大道芸を見たって言ってたっけ……)

 ミナも楽しみながら横目で見学する。周りにはたくさんの見物客が輪を作って見物している。


 だが、護衛のゾーイはしかめっ面だ。

「ミナ殿。事務所で待機しましょう。人が多すぎます。こんなところをうろうろして、何かあったら……」

「ま、ゾーイ。そんな治安が良くないことがあるなら、それこそ問題だわ」

 そう言いながら、横目で大道芸を見ながら歩いていると……。


 ドスン!

 ……と人にぶつかる。


「キャッ!……」

 と後ろによろけそうになると、さっと背中を抱きかかえられ、

「奥様。大丈夫ですか。大変失礼を」

 と言われた。

(その声?!)

 その顔が笑っている。


「カイル!」

 思わず抱きついた。が、2秒で身を離し、

「わざとやったわね?!」

 と目を逆三角にしてカイルをにらむ。


「ミナがよそ見しながら歩いているのが悪い。ゾーイに注意されたろ?」

 そう言いながら、カイルは愛おしそうにミナの帽子とベールを整えてくれる。

「う、うん……」


「ちゃんとゾーイの言葉を聞けよ。いつもミナは不注意すぎるんだから。護衛する身にもなって見ろ」

「はい。すみません……」

 カイルはゾーイの同業者だから、気持ちがわかるらしい。


「さ、ミナ殿、帰りますよ」

 ゾーイに背中を押されて、事務所に帰っていく。

(はあ~)とため息だ。

 夫がそこにいるのに、帰らないといけないなんて……。

(一緒に見本市を見たかったな……)


 カイルは笑って手を振ってミナを見送っている。

(カイル、また見本市の潜入のために戻ってきたのかな……)

 後ろ髪をひかれながら、事務所に戻る。


 まだまだ、詐欺師の摘発はこういう場では油断なく進められているのだ。


(国際見本市だけでも、見たかった……)


 だが、本番の3日間はアンドリオンが来るので、そのときに一緒について行けば見られるのだ。そう思ってあきらめることにした。



 * * *


 10月10日。

 ミナが準備委員会事務所に詰めているとき、突然大騒動が起きた。

「た、大変です!」

 バンリオル商会の番頭カルジャンがやってくる。この見本市の全体を管理する役割を担っている。


「いったいどうしたのですか?」

 ミナも驚いて立ち上がる。

「王都からの急報でございます。な、なんと……クルスト殿下がお越しになると……」

「ええ~?!」

「開会式と閉会式には挨拶をなさるそうです」


 昨年は王族として、王弟レオスト殿下が最終日に挨拶をした。レオストはコブルー港開発事業部長だからだ。

「王族の挨拶があるというのは嬉しいことですが……なぜクルスト殿下が?」

 他の担当者たちも腕を組んで唸る。


「この知らせは領主様にも行っているのだろうな?」

「はい。それは正式に行っていると思います。こちらの知らせは王都のバンリオル本店からの知らせですので、タンブリーを経由せず、直接コブルーに届いたものと思われます」

 競技会担当のダルザ商会番頭ラバルの問いに、カルジャンが答える。


「とにかく、王族をお迎えする準備だ! 急げ!」

「はっ」


 大慌ての担当員たちの動きを見ながら、ミナは考える。

(たぶん……。クルスト様はここで自分の存在をアピールしようとなさっているのだわ)

 それは悪いことではないし、コブルーの祝祭に箔がつくから良いだろう。

 ただ、彼の少し焦りを感じるだけだ。


(アンドリオン様も大変ね……)

 王族の扱いは難しいのだ。


 港湾局に戻ると、そこにもアンドリオンからの知らせが来た。

 随行人数、宿の手配、食事の内容、競技会の席の準備。いろいろな仕事が書いてある。


(これはセグリオとバラントンに任せておこう……)

 ミナにとってはまだ他人事であった。



 その夜、ミナの泊まるドーハイラの宿に、ボリック・バンリオルがカイルとともにやってきた。


「ミナさん、お聞き及びだと思いますが……」

 バンリオルはクルスト殿下がコブルー祝祭に来る件の裏情報を得ているようだ。

「ミナさんは殿下にクルスト奨学金というのを提案なさったとか」

「はい。そうですわ。もうご存じなのですか?」

 まだほんの2週間くらい前なのだ。


「ええ。五大商会に案内が来ましてね。『こういう制度を作るが、協力するか』という打診でした」

「まあ! 動きが速いですね!」


「ええ。アルースト陛下は、このご様子をとてもお喜びで、案も大変すばらしいですが、クルスト殿下がやる気に満ちていることをお喜びなのです。


 それで、殿下はコブルーに行って祝祭を祝福してくるとおっしゃったようですが、実際にはそれは口実で、ミナさんに会いにいらっしゃるのですよ」


「ま? そうなのですね?!」

 バンリオルは「王の剣」という立場なので、アルーストと直接つながっているのだ。


「で、またミナさんは大変なことになるかもしれません」

「えっ?」

「クルスト殿下は、ミナさんがブリアで働くのは非効率だとおっしゃっているのですよ」


「えっ? 非効率……」

「それに、……これは私にも責任があるのですが……」

 とバンリオルはため息をついて言葉を濁す。


「殿下はカイルがミナさんの夫であることをご存じで、カイルはほとんど王都におりますので、ミナさんがブリアにいる意味がないとおっしゃって……」


「ま、まあ!」

 ミナは慌てる。

(うっ、心を見透かされている……)


王太子クルストは、いったいコブルー祝祭で何をしようと言うのか……。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。

---今までのあらすじ---

ミナはブリア領主のため、妹エカーリアが王弟ラッスル公レオストの長男ゼビルスと結婚できるよう、資金づくりを計画する。その際に、大掛かりな盗賊掃討戦、そして詐欺集団掃討戦を提案した。そして、アラゴンキア初の職人たちの技能競技会の開催、債券の発行など、新しい事業を次々と進めていった。そんのある日、ミナは王太子に呼び出される。そして、王太子は自分の名を広めるためにミナに案を出せと命令した。

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別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才官僚と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫で、バンリオルの諜報員。25歳

フェルビル … 王立技師養成所から呼んだ技師

スラーラ … 対岸の大陸の国

アンドリオン … コブルーのあるブリアの領主でミナの上司。27歳

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