民衆大歓喜! 大市に驚くべき突然の訪問者が……
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
第184話 歓喜のフリストル大市
8月1日。わずか3か月の準備期間を経て、王都フリストルの大市が開催された。
これは、盗賊と詐欺師の一掃を祝い、その成果を国民に還元するために、五大商会が企画したものなので、基本的には五大商会の「特売セール」の日である。
あちこちに貼られた告知板によって、たくさんの庶民がこの日に王都を目指した。
五大商会の特売など、今まで聞いたこともなかった。
さらに、人気女優が見られるとあっては、見逃す手はなかった。そのため、王都の近隣の町や村から人が集まってきたのだ。
また、富裕層も続々と王都に集まった。
「アラゴンキア王室認証品」という初の商品が並ぶというので、わざわざ地方からも集まってきたのだ。
中心となる広場の特設市場には、普段より2割も安くなった庶民用の商品が、大量に並んでいる。
食糧、日用品、布地、工具、農具、台所用品……。
庶民はこれらの店に大喜びで群がる。
「こりゃあ、今買わなきゃ損だよな!」
「いや、これからずっと、こんな値段になるんでしょ?」
「わかるもんか。今買っとけ!」
こうして、王都は大賑わいとなった。
「なんという人でしょう! まさか、こんなに集まるとは……」
準備委員会の担当者たちは驚愕だ。
ここには五大商会の会長たちと担当員たちが詰めている。
「大変でございます! リリアガナ劇場の割引切符がすでに売り切れで……」
まだ午前中なのに、すでに売り切れた。
「仕方がない。割引札を作って対応しろ! 番号と名前を控えろ」
「はは!」
「大変でございます! 認証商品の取引の依頼がたくさん来ておりまして、受付人数が足りません!」
「ええい。仕方がない。うちの本店から人を出せ!」
ダルザ商会のフレメルが怒鳴る。
「ブリアの認証品、香油が売り切れでございます!」
「なに?! もうか?! まだ午前中だぞ?!」
朝から開会しており、午後2時には式典が行われる。五大商会を代表して、バンリオルが挨拶をすることになっている。その時にはすでにない商品が続出だ。
「た、大変です! た、た、た……」
準備委員会の建物に、倒れこむように入ってきたのは、伝令役の担当員だ。
「今度はなんだ?!」
商人たちは皆驚いて立ち上がる。今までで一番大慌ての様子に、「何事か」と戦々恐々だ。
「陛下が……、陛下が……」
喉を詰まらせながら、担当者が息絶え絶えに言う。
「陛下が?! どうした?!」
「陛下が式典にお越しになると……」
「な、なに~!!!」
突然の知らせに、準備委員会は大慌てだ。
「なにゆえ……」
全員、青ざめる。
そこへ、王城から正式な使者がやってきた。
「申し上げます。国王アルースト陛下は、王都の大市の主旨をお喜びになり、自ら国民に挨拶をなさるとのことでございます。つきましては、台と緋色のじゅうたんのご用意を……」
「はは~!!」
五大商会の会長たちは、それぞれバッと飛び出す。
「私は緋色のじゅうたんを!」
「私はもてなしの準備を!」
「私は馬車停め場所の確保に!」
「私は警備隊に知らせに!」
そう言って、思わず自ら駆け出していく。
残ったバンリオルは「はあ……」と汗を拭く。
(私の挨拶は不要らしい……)
正直、ちょっとほっとした。
そして、2時になり、国王アルーストのお出ましだ。
大群衆が見守るなか、ほら貝が鳴り、近衛兵に守られたりっぱな馬車が広場にやってくる。
そして、ラッパの音とともに、馬車から国王アルーストが真っ赤なマントを翻して出てきた。
馬車の下に敷かれた緋色のじゅうたんの上を歩く。
「うお~!!」
民衆は大歓声を上げる。
「王様だ~!!」
ほとんどの者は国王を見るのは初めてなのだ。
「こ、国王陛下……。わしは初めて見たぞ」
「あれが王様なの? なんてりっぱな……」
民衆は神々しいものを見て、唇がふるえる。
リリアガナ劇場の舞台用に造られた舞台の上に、アルーストは上がった。短く切りそろえた頬から顎にある髭。頭には簡易な冠がはめられている。
48歳の王は堂々とした態度で、ゆっくりと群衆を見回す。
群衆は静まり返って、国王を見上げた。
「皆の者!」
大きな声で、群衆に呼びかける。
群衆は、自分に声をかけられたと感じて、息を飲む。
「今日の大市は何の記念か、知っておるか?」
優しい声だった。
「アラゴンキアが生まれ変わった記念なのだ!」
群衆から小さな声が上がる。
「え?……」
「は……?」
アルーストは続ける。
「ほとんどの者は知らぬかもしれぬ。だが、昨年春から今年の春まで、約1年かけ、アラゴンキアでは王弟レオストの下で、大々的な盗賊討伐を行った。詐欺師摘発も行った。たくさんの兵士が戦った。
――なんのためか?」
アルーストは群衆を見回す。
群衆は緊張して、一言もしゃべらず静かに耳を澄ます。
「そなたらの富を奪う者をアラゴンキアはもう許さぬからだ!!」
アル―ストは国王らしく、力強い声で言った。
「見よ! この市場の商品を!」
そして、市場のほうを指さす。
「盗人に奪われていたのは、商人だけではないぞ。そなたらもだ。
盗人が商人から奪うから、そなたらが手にするときには、商品は高くなっていた。
だが、これからは違う!」
群衆は王の言葉の迫力に、ごくりとつばを飲み込む。
「アラゴンキアの素晴らしい商品を、これからは今までよりも安くそなたらに提供できるのだ! なぜなら、盗賊におびえる必要がもうないからだ!」
「おお……」
小さな地鳴りのような唸り声が群衆の中に響く。
「――それだけではない」
アルーストは「王室認証品」の文字がある天幕を指さす。
「あれは、王室が認証した、王家の印章を持つ商品だ。
――誰が作ったのか?」
アルーストは民衆を指さす。
「民衆だ! この中にいる優れた職人、優れた技能者が作ったのだ」
民衆たちはビクッと身を震わす。
「素晴らしい腕を持つ職人たちは、その商品を正しく評価され、その腕にふさわしい報酬を得るであろう。
昨年から始まったコブルーの競技会も、腕の良い技能者を称えるためだ。
真面目に働く者は、その働きにふさわしい報酬を得る。
――それがアラゴンキアが目指す国のありかただ!」
「おお……」
群衆は祈るように手を組み、アルーストの言葉を、神の声のように聞く。
「良いか! これからのアラゴンキアでは、奪う者ではなく、作る者が富む!
正直に働く者が称えられ、その腕にふさわしい報酬を得る国となる!
この国はより安全で豊かな国となるのだ。
今日の大市はそれを祝う祝祭だ! 皆、大いに楽しむがよいぞ!」
そして、アルーストはこぶしを振り上げる。
「おお~!!!」
大歓声が上がる。
「アラゴンキア万歳!! アルースト陛下万歳!」
バンリオルが叫ぶと、群衆が唱和する。
「アラゴンキア万歳!! アルースト陛下万歳!!」
突然の国王の演説に、群衆は皆涙する。国王の姿を見るのは、一生に一度、あるかないかなのだ。しかも、自分たちに向かって国王が演説をしたのを聞いたのだ。
ある者は隣に立つ見知らぬ者と抱き合う。
ある者は子供を肩車して、子供は国王に手を振る。
ある者はこぶしを振り上げて、やる気に満ちた歓喜の声を上げる。
(本当に……)
バンリオルは空を見上げた。
(新しい時代が……)
そして、ブリアの方角に顔を向ける。
(始まるな……)
1年半越しに行われた大規模なアラゴンキア浄化作戦は、詐欺集団を一掃してやっと終わり、商人たちは大喜び。アラゴンキアに新しい時代がやってきた!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ミナはブリア領主のため、妹エカーリアが王弟レオストの長男ゼビルスと結婚できるよう、資金づくりを計画する。その際に、大掛かりな盗賊掃討戦、そして詐欺集団掃討戦を提案した。一方で、王国初めてとなる債券販売を始め、コブルー港拡張工事の金を捻出する。一連の討伐が終わり、商人たちは大歓喜し、王都で記念の大市を開催することになった。そこでミナは新たな産業振興策を考えてレオストに提案する。詐欺集団は無事に掃討され、王都は喜びに包まれ、大市を開催した。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
カイル … ミナの夫。バンリオル商会の諜報工作員、25歳
ボリック・バンリオル カイルの雇い主でミナの支援者の大商会会長
五大商会 … 王都に銀行を持つ5つの大商会。ミナとともに盗賊・詐欺師の討伐戦に参加した




