ミナ、大市のイベント提案、王室ブランド、さらに着々とコブルーを改造中
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
レオストからの呼び出しがあり、ミナは再び王城に向かう。
「ミナ。国王陛下からの裁可が下りたぞ。
そして、商務庁が担当することになった。その名称だが……」
レオストはそばにいる文官に指で指示をする。
文官は書字板を開けて、文字を見せた。
「アラゴンキア王室認証品」
そして、それにはランクがある。
「王冠印」 ――国の宝と言えるもの
「紋章印」 ――芸術品と言えるもの
「儀仗印」 ――実用品と言えるもの
「それぞれ、3年で更新が必要となる。……これでどうだ?」
「す、素晴らしいです!」
「そして、これが認証印の意匠だ」
文官が巻紙を開く。
そこには、こまかくデザインされた認証印の案がある。
「もうここまで……」
その対応の早さに驚く。まだ提案して1週間ほどしか経っていないのだ。
「ははは。そなたの早い動きに、こちらも合わせなければな。大市にはこれを見せるのであろう? それならば、早く動かなければな」
「はい! 殿下。この度は、急な提案にも関わらず、ご対応いただきまして、誠にありがとうございました」
ミナは深々とお辞儀をする。
* * *
ミナは、王都の大市準備委員会が立ち上がったと聞き、その会合に出席した。
バンリオルもタンブリーから戻ってきているので、5人の大商人が集まっている。
「では、盗賊一掃を祝い、民衆にこの喜びを還元する記念行事として、8月1日に大市を開催したいと思います。本日は、ブリアからミナ殿に来ていただいておりますので、まずミナ殿のご提案をお伺いしたいと存じます」
議長役はダルザ商会フレメルだ。
「はい。本日はお呼びいただきありがとうございます。
この大市の主旨から、中心は民衆の食品や日用品の大安売りとなるとは思いますが、わたくしからぜひ、企画に入れていただきたいご提案が2点ございます。
1つ目。
ブリアでは、先日、「ラッスル公爵家・ブリア侯爵家結婚記念品」というものをブリア侯のご承認で認定いたしました。こちらをブリア領地の特産品として、販売したいと思っております。
これは、工芸品を商人が売り出しやすくするために、商品に称号を与えるという制度でございます。
結婚記念品の称号は今年限りなのですが、他の領地の皆さまも、このような称号の認証制度をご活用になってはいかがかと思いまして、先日、レオスト殿下にご提案いたしました」
「ほう……。称号の認証制度?」
5人とも、顔を見合わせる。
「はい。殿下よりお返事をいただきまして、王室から次のような称号を与えるという許可をいただきました」
ミナは資料を広げて、その称号を見せる。
「こ、これは!」
「アラゴンキア王室認証品……ですと?!」
「はい。これらを各地の領主から推薦してもらった特選品の商品につけ、大市で展示販売する、というのはいかがでしょうか」
これが1つ目のミナの提案だ。
「ほう……」
「これはおもしろいですな」
「ミナさん、ちなみに、ブリアの商品はどんなものなのですか?」
バンリオルが尋ねる。彼はブリアに詳しいからだ。
「はい。螺鈿の箱入りの香辛料の組み合わせ、化粧箱入りの香料の入った石鹸の組み合わせ、それから馬車の座席用のカラフルなじゅうたん『ブリア敷』、ガラス瓶入りのバンサラー香油などでございます」
「ほう。なるほど……」
「今年は準備に時間がありませんが、各地で一つくらいは持ち寄れそうですな」
ブラーゼ商会のカレイダが「ふむふむ」と頷きながら言う。
「なるほど。大市は大安売りですので基本的に庶民向けですが、富裕層もできれば呼びたい。これは良いですな。また、コブルーの見本市とは違い、王家に認められた高級な品ですから、富裕層には見逃せないでしょう」
コマキア商会のエクドールも頷く。
「で、ミナさん。もう1つの案というのをお伺いしても?」
フレメルが先を促す。
「はい。実は、リリアガナ劇場が、大市で7分間の舞台を5回開催してくださるということになりましたので、そのご了承をいただきたいのです」
「えっ、大市でというと……。広場で、ということでしょうか?」
「はい。簡易の舞台を設置していただければなお良いと思います。今上演中の題目の、おもしろい部分を7分だけです。目的は、続きを見に来てほしいということで、劇場にお客様を呼びたいのでございます。
ですから、その場で、2割引きの切符を販売いたします」
「なるほど。それは民衆が喜びますな!」
「民衆は舞台など見たことがないですからな」
「人気女優が出演していただけるので?」
「はい。サビリヤさんが出てくださるということでございます」
「おお?! サビリヤが?!」
「ミナさんは、サビリヤをご存じなので?」
バンリオルが驚いて尋ねる。
「いえ……。実は、先方が夫をご存じのようで、あちらからお声をかけていただきましたので」
「なるほど……」
バンリオルはクランスをカイルに紹介した本人だから、その意味を理解する。
「サビリヤが出るとなれば、これは大々的に宣伝しませんとな!」
「私はサビリヤを知りませんが……」
「美しい女優ですよ! 一度ご覧になると忘れられませんぞ」
大商人たちも美しい女優と聞くと、ウキウキするようだ。
こうして、大市の打ち合わせが終わり、すべての用事を終えて、ミナはカイルとともにタンブリーに帰っていった。
帰り道では、また街道の別の新しい宿をチェックしていった。
第183話 港の拡大と変貌
1月から始まった第1~3埠頭のトロッコ設置工事は、途中でいろいろなトラブルがありながらも、着々と進んでいた。
ワットン以下のもともといた技師たちが桟橋の拡張工事を担当した。
王立技師養成所から来たフェルビル以下新人技師2人が、トロッコの部分を担当した。
桟橋から伸びたレールが、魚市場と倉庫へと続く。
そして、6月初めに試運転が開始される。
6月にはカイルも王都のバンリオルのところに戻り、ミナはコブルーに来ていた。
そして、トロッコ工事監督の技師フェルビルとともに、それを見学していた。
港中の人が見守る中、貨車だまりから貨車がレールに乗り、まず桟橋に滑っていく。
ガタン……
ガタン……
と貨車が動く。
「おお~!!」
軽く押しているだけだが、新しい貨車なので、スムーズに動く。
「こりゃ、すげえ」
人夫たちは新しいおもちゃを見た時のように目を輝かせる。
これを使うことになる漁師たちは、驚きの表情で見守る。トロッコを見るのは初めてなのだ。
レールが桟橋まで伸びており、桟橋の先で止まる。
第1埠頭、第2埠頭は漁船用、第3埠頭は小型商船用だから、載せるのは魚か、小さな荷だ。今は代わりに土嚢を載せてみる。
人夫が土嚢を背負って、貨車に載せようとすると、フェルビルがさっと動き、貨車の側板を外した。
「さあ、どうぞ」
「お、おう」
人夫は土嚢を高く抱え上げようとしたが、側板が外れたため、荷台の縁で少し持ち上げるだけで載せられた。
「まあ、すばらしいです!」
ミナが感嘆する。
フェルビルはうれしそうに説明する。
「第1、第2、第3埠頭までは木造の桟橋なので、荷揚げ滑車がございません。ですから、あまり持ち上げなくてもいいように、貨車の側板を取り外しできるようにしております」
荷を入れた人夫たちが嬉しそうに言う。
「こりゃあいい。腰が痛くならねえな」
「おう!」
次に、人夫たちに貨車を市場まで運んでもらう。1人が押し始めたら、そのまま動き出した。
「お、おい。たった1人で押してるぞ!」
「今まで4人で運んでた荷物なのに!」
(なるほど。人夫の賃料が4分の1に……)
ミナは人件費がどうなるかを計算している。
(とすると、トロッコの使用料は……)
人夫たちは驚きの表情で貨車を眺める。
「いやいや、これじゃ、俺たちの仕事、なくなるだろ?」
しかめっ面をするものもいる。
ミナも貨車について歩きながらその声を聞いていた。
「皆様、ご心配はご無用ですわ。コブルー港はこれからどんどん拡張いたします。一時的に、仕事が減ったとしても、そのときはほかのところを手伝ってくださいませ。仕事はいくらでもございます。
船はこれから増えていきますので、むしろ忙しくなりますわ」
「そ、そうなんかい……」
ミナの言葉に港夫たちはまだ不安そうな表情だ。
「でも、確かに、2年前のコブルーとじゃ、全然違うよな。宿もあんなに立派なのができたし、去年は祝祭やったしな」
「おう。今年も競技会、やるんだろ?」
港夫たちがそんな話をしている。
「はい。今年も行いますわ。今年も全国からコブルーを目指して職人たちが集まりますので、皆さま、よろしくお願いしますね」
「お、おう!」
「皆様がお困りのことは、いつでも港湾局においでになって、ご相談くださいませね。できるだけ早く解決したいと思いますので」
「お、おう!」
人夫たちはミナの言葉に少しほほを赤らめる。
大事にされていると感じているのだ。
(確かに、コブルーの変化は激しい。人夫たちも仕事の変化で大変だわ。これは失業保険を作って、ある程度の生活を保障しないと……)
ミナはそんなことを考えながら、貨車についていく。
「おっ、ここ、少し回りにくいな……」
貨車を押していた港夫が少し力を入れて貨車を押す。
「えっ、ここですか?」
市場の中のレールのカーブが少しきついのか、回りづらいようだ。
「えい!」
2人で押してやっと回る。
「もうしわけございません! 車輪の間隔に対して、曲線が小さすぎました。直ちに直します!」
フェルビル指導の新人技師が慌てて頭を下げる。
「図面では通る計算だったが、荷を載せるとその分、車輪が少し傾くからな」
フェルビルが新人に言う。
「そ、そうですね……」
「では、ここの直しをお願いしますね。ほかは問題なさそうですね」
とミナは優しく言った。
「はい!」
トロッコは8月には完成の予定だ。10月半ばの開港記念祭はまた見本市があるので、忙しくなる。それには間に合うだろう。
それからミナは、新しく作った補給セットの様子を見に行く。
港湾局補給部が創設され、そこに派遣されている担当官に補給セットの倉庫を案内してもらう。
倉庫の中には何人もの人々が、それぞれの食糧を運んでは箱に入れてまとめる。
「ミナ殿、こちらが補給セットの中身となります」
担当官がセット見本を示す。
セットの種類によって、壁に木札で、穀物袋5袋、豆2袋……などと数量が書いてあり、その通りに並べていくのだ。そして、ちゃんとそろっているかを木札を見ながら、指さし確認する。
それから水樽、酒樽、油樽などが並んでいる。
同時に注文できるロープ、帆、工具なども揃っている。
必要なものを一度に納品できれば、それだけ桟橋利用時間が短くでき、桟橋回転率がよくなるのだ。
「売れ行きはいかがですか?」
「ええ、このセットを注文すると、船にとっては桟橋利用料が節約できますから、結構注文が来ています。
これからどんどん広まると思いますので、さらに注文が増えるでしょう」
「それはよかったです!」
食糧は港湾局が市場から一括購入をするので、仕入れは安くなる。それを市場価格で売るので、港湾局の人件費はそこで出る。それを桟橋まで運ぶ荷賃も港湾局の儲けだ。
桟橋利用料が安くなれば、船にとってはオトクである。
それで補給船が増えれば、港は儲かる。
(コブルー債券の利息を払うために、しっかりと儲けなきゃね……)
頭の中で常に計算をするミナであった。
「見本市が近づきますので、これからまた忙しくなります。よろしくお願いしますね」
「はい。かしこまりました!」
そのあと、今年もコブルー開港記念祝祭を担当するバンリオル商会担当カルジャンとの打ち合わせだ。港湾局の並びの建物の中に祝祭準備委員会の本部が置かれている。
去年は「結婚記念祝祭」だったのだが、今年から「開港記念祝祭」となる。実質の開港は5月なのだが、毎年10月に開催することになる。
「今年から、宝くじは神殿主催となります。そこが去年と異なる点ですね」
「はい。心得ております」
二度目なので前ほどの緊張ではないが、競技会は去年よりも村の興奮が激しいため、前回以上の客が来ると見込んで、会場を少し大きくする予定だ。
「去年の反省点から、いくつか変更がございます。それを各社と確認してくださいね」
「はい、かしこまりました」
今年はミナがコブルーに常駐しなくても進みそうだ。
(私は、今年はエカーリアプロジェクトが忙しいから……)
港の拡張工事に加えて、2つのイベントを背負って、大忙しのミナであった。
債券発行、コブルー港拡張工事、補給セット販売……。そして、エカーリアの結婚式は9月、そのあとにコブルー祝祭が10月。ミナはそこまでは大忙しなのだ。
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ミナはブリア領主のため、妹エカーリアが王弟レオストの長男ゼビルスと結婚できるよう、資金づくりを計画する。その際に、大掛かりな盗賊掃討戦、そして詐欺集団掃討戦を提案した。一方で、王国初めてとなる債券販売を始め、コブルー港拡張工事の金を捻出する。一連の討伐が終わり、商人たちは大歓喜し、王都で記念の大市を開催することになった。そこでミナは新たな産業振興策を考えてレオストに提案する。そして、大市で開催する王都の人気女優のイベントを企画した。
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別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!
クリスタル・ハート・カフェ
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
カイル … ミナの夫。バンリオル商会の諜報工作員、25歳
王弟レオスト … ミナの支援者で、エカーリアの婚約者ゼビルスの父
ボリック・バンリオル カイルの雇い主でミナの支援者の大商会会長
五大商会 … 王都に銀行を持つ5つの大商会。ミナとともに盗賊・詐欺師の討伐戦に参加した
ワットン … ブリア領の土木技師
フェルビル … 王立技師養成所から呼び寄せた技師




