じっくりと仕込んだ罠にかかった詐欺師たちは……
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
第178話 詐欺師たちの大乱闘
買い取り屋ミダルガンの近く、王都外壁付近の倉庫街。
その一角のレンガ造りの建物に、カイルは来ていた。
建物の扉を叩くと、大柄な男が扉を開ける。
「レンダだ」
「どうぞお入りください」
ガランとした大きな部屋がひとつあるだけの建物だ。一番奥に机と椅子がある。
「お待ちしておりました」
ミダルガンが立って待っている。そして、その隣に貴族のような立派な服を着た男が座っている。
入り口付近には5,6人の私兵が腰に剣を差して立っている。
「こちらへどうぞ」
レンダは向かいに座る。
「金は持ってきた。債券50枚を売ってくれるんだろう?」
「ええ。債券はご用意しましたよ。こちらは高貴な身分のかたでございます。ボバリエ様とお呼びください」
ボバリエと紹介された貴族らしい男は傲慢な態度でニマリとした。
「ああ。よろしく頼む」
レンダも負けず劣らず、傲慢な態度だ。
ミダルガンはその態度に少しムッとして、口を動かしそうになったが、落ち着いて座った。
「まず、金貨を確認させていただいてもよろしいですかな?」
「ああ……」
レンダは腰から金貨の入った皮袋を重そうに外す。そこから金貨を出して、一つひとつ積み上げる。
「ほら、金貨50枚ある。文句ないだろ?」
「お譲りするのに、額面と同じ金額というわけには……。こちらも金貨50枚払って手に入れたものでございますので」
ミダルガンの言葉にレンダは少し眉をひそめたが、
「ま、そりゃそうだな」
と言って、金貨を5枚上乗せした。
「これでいいか?」
「ふむ。よろしいでしょう」
ミダルガンは頷いた。
「こいつを渡すのはあとだ」
レンダはそう言って金貨をいったん袋に入れる。
「じゃ、債券を見せてくれ」
「ええ。こちらでございます」
そばに控えていた手下が、債券を持ってくる。50枚だ。
それを机にずらりと並べた。
「へえ……。これが債券ってやつか」
レンダはじっくりと債券を見た。
机に並んだ債券には連番の番号がつけられている。
しかし、第2期の債券は偶数番号しか発行されていない。だから奇数番号は明らかに偽造だ。
しかも、第1期は5桁、第2期は7桁。
この債券の番号が7桁であるのを見れば、彼らが第2期の本物を手本にして偽造したとわかる。
「ふん……」
レンダは騙されているフリをする。
そして、ふいに頭を上げて、後方を振り向いた。
その不思議な行動に、ミダルガンもボバリエも眉をひそめて顔を見合わせる。
「な、なにか?!」
「ああ……。外に誰かいるぞ。囲まれてるな」
「な、なに?!」
ミダルガンはバッと立ち上がり、私兵たちに合図をする。
しかし、内側からしか開かないはずの扉が勝手に開き、一瞬の間をおいて、外側から何人かの男たちが飛び込んでくる。剣を持っている私兵団だ。
「カラバル!」
怒鳴ったのはデフール一味の私兵隊長ダッカレだ。
「な、なんだ、お前たちは!!」
ミダルガンが叫ぶ。
ボバリエと名乗った男も立ち上がり、青筋を立てる。本当の名前はカラバルだ。
「デフール一味だな! 何しにきやがった!」
貴族らしい上品さはかけらもなかった。
「よくもデフール様の獲物を横取りしやがったな!」
ダッカレが怒鳴る。
「なに?! いったい何のことだ?!」
「そいつの金は俺らがもらう! 俺らが先に目を付けた獲物だ。お前たちは引っ込んでろ!」
「なに~?!」
「どうせお前たちの債券はニセモノだろう! いつもいつもデフール様の真似をしやがって!」
「ふん! 詐欺師にどちらが先も後もあるか! やっちまえ!」
カラバルの私兵が、机を守るようにデフールの私兵に飛びかかる。
剣がぶつかる音が建物に反響する。
「邪魔するな! 俺たちの獲物だぞ! このコソ泥ども!」
「うるさい! お前らこそ二度とデフール様のまわりをチョロチョロできないようにしてやる!」
建物内は大乱闘だ。
レンダは金袋を持って、机から離れる。
「問題が起きたようだな。俺は関係ないぜ」
と言って、出ていこうとする。
「おい、待て!」
カラバルとミダルガンが同時にレンダを呼び止めようと動く。
ふたりが机を離れると、机の上の債券がスッと消えた。
レンダは戦っているやつらを避けて、壁際を抜ける。
出口にはデフールの手下が剣を構えて、出口を塞ぐように立っている。
レンダは短剣を抜いて、ダッカレの手下の剣を吹っ飛ばし、蹴とばしてどかせ、出口を確保する。
そこを、認識疎外魔法ナスコムで姿を消しているフライアが、債券を抱えて出ていく。最初からこっそり扉付近に隠れていたのだ。
さっき、扉を開けたのはフライアだ。カイルが後ろを振り向いたのが扉を開ける合図だった。
フライアは認識疎外魔法ナスコムを切って姿を現す。フライアが建物を出たことを確認すると、カイルも外に飛び出した。カイルは債券を引き取り、フライアの手をつかんで走る。
デフール一味が取り囲んでいることを、カイルは建物に入る前からすでに知っていた。それは予定通りだ。
だから、扉を開けてやれば、彼らは勝手に飛び込んでくる。
その外側を遠くで囲んでいたのは、オルスク率いる警備隊だ。デフール一味は警備隊に監視されていた。
フライアをそこまで連れてきて保護してもらう。債券も警備兵に預ける。
「カイル! 出口を塞ぐのを手伝え!」
オルスクが叫びながら、部下を引き連れ、走り出す。
「わかった!」
カイルは警備隊に預けていた剣を持つ。
「ちょっと! あんたはあたしのダンナでしょ。あたしをちゃんと守ってよ!」
フライアは文句を言ったが、カイルは無視して突っ込んでいった。
「こんなおもしろい捕り物を見逃せるか!」
そう言いながら、警備隊とともに建物に戻っていく。
「まったく……。相変わらずガキなんだから……」
フライアは残った警備兵に守られて、木に寄りかかりながらため息をついた。
(夫婦ごっこ、今日が最後だっていうのに……)
残念そうに唇を尖らす。
やがて建物の入口から警備兵が20人以上なだれ込んだ。
「剣を捨てろ! 王都警備隊だ!」
カラバルとダッカレは、そこで初めて悟った。
奪い合っていた客も金貨も、最初から自分たちを捕らえるための罠だったのだ。
「お、俺たちじゃねえ! こ、こいつらが債券を偽造したんだ! 俺らは騙されて手にしただけだ!」
カラバルが言う。
「嘘をつけ! 最初に持ち掛けたのはカラバルだ! 俺たちこそ騙されたんだ!」
つい先ほどまで剣を交えていた者たちは、今度は競うように警備隊長を騙し始める。
オルスクは呆れたように言った。
「続きは本部で、ゆっくり聞こう」
2つの詐欺集団は、まさか債券の売り出しそのものが罠だったとは……。
――まだ気づいていなかった。
詐欺集団、ついに一網打尽! カイルはやっと、家に帰れるのか……?!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ミナは債券を発行し、その裏で詐欺師たちをひきつけ、討伐作戦を企んでいた。思惑通り、詐欺師の一味は動き出し、カイルが諜報員レンダとしておびき寄せる。馬商デフールの一味、サナンダがレンダに接触し、ニセ債券を売ろうとする。デフールの上にいるラスボス、バートンや、デフールのライバルであるカラバル一味も絡んで、王都警備隊は一網打尽を企てる。お取りになったレンダは債券を買うフリをしてカラバル一味に接触した。
、
------------------------------------------------
別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!
クリスタル・ハート・カフェ
https://ncode.syosetu.com/n1866mp/
------------------------------------------------
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
カイル(レンダ) … ミナの夫。バンリオル商会工作員、25歳
フライア(フラン) … カイルの相棒で、認識疎外魔法ナスコムの使い手。26歳
カラバル … 詐欺集団。デフール組織とライバル関係にある
サナンダ … 馬の売人。詐欺師デフールの一味。
デフール … 馬商で、詐欺集団の大物。バンリオル銀行に恨みを持ち、債券を買って悪だくみをしている。
オルスク … 王都警備隊の隊長
チェスコブ … 王都警備隊総隊長




