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大胆なミナの策に、商人一同唖然。そして、コブルーに技師を……

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


「債券で注意すべきことは、偽造される可能性でございます」

 ミナは説明を始める。


「ふむ。それはわかります」

 商人たちは頷く。ふつうの借用証書でさえ、偽造事件が起きるのだ。


「ですから、第1期では、わざと詐欺師にそれを買わせるのです」

「し、しかし、バンリオルの口座を持っていないと買えないのですよね? 詐欺師は普通、銀行に金を預けませんが……」


「はい。だからこそ、抽選申し込みの期間に口座を開設しなくてはいけません。詐欺師がこれを見逃すとは思えません」

「な、なるほど……。口座を作るには身分証が必要だ……」


「そして、抽選に当たったかのように見せかけます」

「ほう?」


「そして、第2期も抽選ということで、買えない人が多発する、という状況を作ります。その時こそが、詐欺師が手にした第1期の債券を偽造して、売ろうとする時なのです」


「な、なんと……。債券というのは、詐欺師をだますという、国家的な罠なのですか?」

 ダルザのフレメルが驚愕する。


 ミナは微笑む。

「いえ。実際に債券を販売しながら、詐欺師がやりそうなことを推測し、それを阻止することで、まずは安全な環境を作り、その後、大々的に債券を売り出すのでございます」


「はあ~……」

 全員が息を吐いた。


「か、カルドゥス殿。こ、これで……よろしいので?」

 コマキアのクミルトンがカルドゥスに詰め寄る。


「財務庁でも十分検討いたしました。この方法でまいります」

 と言いながら、ゆっくりと頷く。


(これでいいのだろうかと、本当はこっちが聞きたいわい。

 しかし、証書の偽造は最初から予想されること。ならば、最初から詐欺師どもを罠にかける準備をしたほうがよかろう……)


 心の中ではそんな言葉を言っていた。


「アラゴンキアは盗人を許しません! そして、治安がよくなれば、皆さまは民衆に、もっと安く商品を提供できます。すると、民衆はもっと買います。こうして、商売を発展させてまいりましょう!」


 ミナはこぶしを振り上げて、熱弁をふるうのだった。



第170話 コブルーと技師たち



 12月の初め。

 冬の澄んだ空気の中、22人の男たちが港湾局前の港湾広場に集まる。

 王立技師養成所から平民の学生12人と、貴族の学生6人、そして、講師4人だ。

 皆、分厚い防寒着に身を包んでいる。


 平民は応募者多数だったため、厳正な審査で選ばれた。


 彼らは昨日の夕方にコブルーに着いた。

 今日はミナが彼らを案内することになっているが、その前に、講師フェルビルの引率で、朝の港を見ようと、まだ日が昇りきる前に港を見にやってきた。港は時間が違うと見せる表情も違うからだ。


 朝日に照らされた海面には、大小さまざまな船が浮かび、その向こうには、建設途中の新しい倉庫が見える。

 漁船たちが並ぶ第1、第2埠頭はすでにたくさんの人が集まっている。

 だが、ほかの埠頭にはまだ人が少なく、じっくりと歩いてみるにはよい時間だ。


 学生たちは皆きょろきょろとしながら、フェルビルについていく。


 土木科講師フェルビルは、港湾広場から、ゆっくりと歩き進み、東の端にたどり着く。そこは海沿いの更地だ。その先には杭が打たれ始めた場所がある。


「あそこが、新しい埠頭になる予定地だ」

 フェルビルは、彼についてきた学生たちに言う。

「えっ……まだ何もありませんね」


「そうだ」

 教師は笑った。

「だからこそ、君たちの出番なのだ」

 フェルビルは腰に腕をかけて、学生たちに向かって言う。


「いいか。君たちが図面を書くとき、その紙を思い出してみろ」

「はい……?」

「真っ白だろう?」

「は、はい!」


「真っ白の空間に何を生み出すか。建築家はただの技術屋ではない。何もないところに価値のあるものを生み出す芸術家なのだ!」

 フェルビルは力強く言う。

「は、はい!!」


「フェルビル先生、つい2か月前、私はここに来たのです。祝祭の競技会を見るために。すごい人でしたよ。王都でも、あんなに多くの人を見ることはめったにありません」

 貴族の学生が言った。


「ああ。そうだろうな。コブルーは自由港として、ワモワ海に君臨する存在となるように計画されているとのことだ」

「それはすごい。つまり…。ここで造った私の作品の名が、異国でも語られるかもしれない、ってことですよね?」

「それ、ワクワクします!」


「ああ、そうだ。……港というものは、一人では造れん。見てみろ」

 フェルビルは腕を上げ、人差し指を右から左へとゆっくり動かす。

「埠頭……倉庫……道路……排水……水門……市場……宿」

 そして、学生の顔を見る。


「たくさんの機能が凝縮された場所なのだ。建物が1つあっても、桟橋が1つあっても、それだけじゃ港じゃない。それらを合わせて、最終的に港になるのだ。つまり……」

 フェルビルは得意げな笑みを浮かべる。


「知恵の集合体。それが港だ!」


 学生たちの目の色が変わる。そして、顔を見合わせる。


「完成した王都の建物は規制が多い。高さ、色、使う石、瓦。全体で美しさを作り上げるからな。だから、建築家としては面白みがない。だが、ここは違う。なんでもアリだ!」


 そう言って、丘を見上げ、色とりどりのカラフルな外観のミナリオラを指さす。

「見ろ! あの斬新な意匠を! 港だからこれが似合うのだ」


 そう言ってワハハと笑った。


 朝の冷たい風で赤くなった鼻と頬で、フェルビルはにこやかに港を見渡した。

 彼の眼にはすでに、建設されていく埠頭の絵が浮かんでいた。


 * * *


「皆様! ようこそコブルーへ!」

 ミナは港湾局の会議室に全員を集め、案内を始める。

 そばにはバラントンとセグリオがいる。


 ホワイトボード代わりの板に、濡らした筆で図を描いていく。


 そして、大まかに船がどのように埠頭について桟橋で荷を下ろし、その荷がどのように運ばれるか、それからどこに行くかを説明した。


「コブルーは急速に発展しておりますので、開発が急がれますが、正直、予算はまだ足りません。ですから、少しずつ開発することにしています。

 そして、大事なのは接岸時間をできるだけ少なくする仕組みでございます」


 学生たちは「ふむふむ」とメモを取る。


「……将来的には、軍船用の埠頭をもう一つ作ります。これは、将来、護送船団の仕組みを作る予定があるからでございます」


「ごそうせんだん……とは?」

 講師の一人で手を上げて質問する。

「はい。軍船に守られて商船が外国を回る、という仕組みでございます」


「ああ、街道で最近よく見る、商人護送団の海洋版ですね」

「その通りでございます」


 ミナはそのほか、コブルーで工夫しているいろいろな策を説明した。

「たとえば、コブルーには税関に優先枠がございます。これはあとから作ったものですので、桟橋は優先枠を塗料で線を引いて分けております。ですが、最初から埠頭を、優先枠を考慮した構造にしたほうがありがたいですね」


「なるほど。仕組みを知らないと設計ができませんね」

 学生たちはまた「ふむふむ」とメモする。


「では、そろそろ港をご案内いたしましょう」

 港の案内はブリアの技師ワットンが中心だ。細かい技術的な質問に答えられるからだ。


 皆でぞろぞろと港に出る。

「この港には1日に100隻を超える船が出入りします」

 ワットンが歩きながら説明する。

「あちらが第一埠頭。漁船専用です。ここは最初は小さな漁港でした……」


「あの……」

 学生がワットンに手を上げる。

「ここの排水ですが、どうでしょうか。少し傾斜がゆるいように思いますが。雨の日は水がたまりませんか?」


「ああ。さすがですね。はい。傾斜は少し緩いですね。ですが、下水は割と多く張り巡らしてあります。とはいえ、特に満潮と大雨が重なる日は排水が追いつきません。これは今度の工事で改善したい点です」


「ワットンさん、あちらの倉庫ですが、どれくらいの高さがあるのでしょうか?」

「ああ、あれは天井の高さは5メートルですが、棚は三段ですね。湿気がたまらないように、一段目を高くしてありますので」


 そんな質問に答えながら、学生たちは興味深そうにワットンの話を聞く。

 ワットンは左手前方を指さす。

「あの埠頭は20年前に造られたものです。滑車式の荷揚げ機を左右に備え、人夫が樽や石材を積み下ろししやすいよう工夫されています。設計者はゼンバロン。名前が埠頭の入り口に刻んでありますよ」


「その名前は知っています!」

 講師の一人が言った。

「ええ。王都でも有名な方ですね。もう引退されていますが……」


 ワットンはうれしそうだ。

「技師の一人として、憧れるかたですな」

 そう言って、誇らしそうに微笑んだ。


詐欺集団をあぶりだすミナの作戦はうまくいくのか……?!


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。

---今までのあらすじ---

ミナはコブルーで祝祭を開催して、かなりのお金を作った。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦を、五大商会が詐欺師掃討戦を遂行した。ミナが次に計画したのは港の拡張である。その資金作りのため、ミナは債券という金融商品を財務庁に提案した。商人たちが闇の組織に狙われているのを聞いて、ミナはそこに新たな罠を仕掛けるのだった。

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別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫。バンリオル商会工作員、24歳

バンリオル、ダルザ、コマキア、…… 五大商会

カルドゥス … 王府の財務庁長官

バラントン、セグリオ … コブルーのベテラン行政官、ミナの同僚

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