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狙われたバンリオル。ミナはすかさず次の掃討戦を用意する

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


第169話 大商人たちの危機


 バンリオルは材木倉庫やプラウ川の河岸を訪れ、馬車で王都フリストルの本社に戻る途中だった。河岸から王都への道で、馬車に揺られてバンリオルは考え事をしていた。

(ミナさんが言っていた債券市場。ふむ……)


 馬車の中には番頭のエイダム、護衛としてカイルとニーボルンが乗っていた。

 このあたりは田園地帯だが、街道沿いには木々が立ち並んでいる。


 ガッと音がして、衝撃が走り、馬がいななく。しばらくすると、馬車が止まる。

「どうした?!」

 ニーボルンが馬車の小窓を空けて、御者に声をかける。


 カイルはハッとする。未来視が作動した。

 コンコンと馬車の扉をたたく音がする。両側だ。


 カイルが扉の窓のルーバーを通して外を見ると、子供が箱を持っている。反対側の扉を番頭が開けようとするのを、腕をつかんで「開けるな!」とカイルが止める。


 カイルは立ち上がって、扉をバンと一瞬開き、扉で子供を突き飛ばした。そしてさっと閉める。子供は箱を取り落として転げた。


「ピッターで狙われています! あの箱の中身は毒蛇だ。子供が蛇を馬車に投げ込み、馬車から出たところをピッターで撃つつもりです! 左右から狙っていますが、こちらにピッター、そちらは弓矢です」


 全員に言う。

 ニーボルンは小窓から御者に声をかけたが、返事がない。馬車は動かない。

 もう片方の扉を子供がどんどんと開けようとする。

 外からは開けられない。


「どうする?! このままでは動けないぞ」

 ニーボルンが言う。

「ビンセルはどうした?」

 バンリオルが険しい顔で尋ねる。ビンセルは御者だ。


「撃たれたようです……」

「なに?! な、なんということだ……!」

 バンリオルは歯噛みをする。


「敵がしびれを切らして姿を見せるのを待つか。こっちもピッターを持っているからな」

 ニーボルンが胸からピッターを出す。

「いや。ビンセルにもし、まだ息があるなら……」


 カイルは思った。助かるかもしれないのに、ここで時間をつぶすわけにはいかない。

「俺が囮になる。外に飛び出すから、すぐに扉を閉めてくれ。やつの姿を見たら、すぐに撃て」

「わかった!」


 カイルは扉から転げ落ちるように飛び出し、一回転して起き上がると、すぐに剣を構える。

 そして、心臓を狙うピッターを剣ではじく。

 その瞬間、敵が姿を現す。


 ニーボルンが敵をピッターで撃つ。ピッターは思考の力で撃てるので、ピッターを持つ敵を倒すには、急所を狙い、息の根を止めなければならない。

 敵はカイルに気を取られており、馬車のルーバーの隙間から撃たれるとは思わず、なすすべがなかった。


 そのすきに、子供は倒れたもう一人の子供を助けて、逃げていく。


 反対側の射手が飛び出し、弓を構える。カイルはあっという間に距離を詰め、剣で斬りつける。

「誰に頼まれた?!」

 剣を突き付けて問いただす。

「ぐぐ……」

(こいつはただの雇われ冒険者だ。問いつめても首謀者までには行きつかない)



 そして、カイルは馬車に戻り、御者を見るとピッターで心臓を打たれていた。

「ダメだったか……」

 仲間を一人失った。


 ビンセルは長年バンリオルの御者を務めた使用人だった。

(ついに犠牲者が……)

 バンリオルは帽子を脱ぎ、哀悼の意を表す。

 遺体を毛布で包んで木陰に置き、カイルが御者を務めて王都に帰っていく。


 生き残った襲撃者は木に縛り付けて、後で兵に遺体とともに回収に来てもらう。蛇の入った箱は石を載せて開かないようにしておく。


(防御ではもはや無理だ)


 バンリオルは何かを決意した。


 * * *


 今日は王城で五大商会の代表を呼んで、債券についての会議をする予定だ。

 12月となり、王城内の中会議室の暖炉には火が入っている。


 そこに財務庁のトップの官僚6人と、五大商会の代表がやってくる。それに書記1人と、ミナが加わり、13名の人数が集まる。

 そして、もう1人、異質な者が参加していた。



「では、これから債券検討会を始めます……」

 財務庁長官カルドゥスは開会を宣言するが、「おや?」と違和感に気づく。

「エクドール殿がおいでになっていないようだが……」

 それはコマキア商会の代表だ。


「は。それが……」

 コマキアの番頭クミルトンが答える。

「実は会長は先日暴漢に襲われまして……負傷しておりますので、今回は欠席させていただきました。私、クミルトンが代わりに参加いたします」


「な、なんですと……」

 会場がざわつく。


 ミナもそれを聞いて、サッと背筋が凍る。

(カイルが、ボリックさんも狙われているって言っていたっけ)


 五大商会の代表たちは互いに顔を見合わせる。

(う~む。うちだけではないようだ……)

 と、バンリオルは心の中で苦虫をつぶす。


「最近の陰の勢力の襲撃は目に余りますな」とひとこと言う。


「ま、ご無事でなによりでしたな」

 カルドゥスもホッと息を吐く。


「では、始めます。今回の会議の内容は、機密となりますので、決して外に漏らさぬように願います。

 これは、財務庁だけの案件ではございません。犯罪対策でもございますので、王都の警備を担当する王都警備隊総隊長のチェスコブ殿にもお越しいただいております」


 チェスコブは立ち上がって、一礼する。王都警備隊とは王国軍の一部だが、警察のようなものだ。国防の長である王弟レオストの指揮下にある。


 商会側の多くがチェスコブを見て驚いている。

 財務関係の話だと思っていたら、そうではなかった、という印象だ。商会側は詳細を聞かされていなかった。


「我が隊も商人襲撃の件はいくつか対処しておりますが、まだ犯人はわかっておりません。早急に対応したいと思っております」

 そう言って座った。


「今回、お集りいただきましたのは債券という新しい商品を扱う件でございます。これはブリア侯行政顧問のミナ殿からのご提案でございます。まずは、その仕組みをご説明いたしましょう」


 カルドゥスが部下に目配せをし、木札と銀貨を使った説明をさせる。


「こ、これは……」

「なんとおもしろい……」


 バンリオル以外の商人たちは初めて聞くので、興味深そうに聞き入る。

「ミナ殿の案とは。いつもおもしろいことをお考えになりますな」

 ダルザ商会の会長フレメルが言った。


「そして、これの利点は、お金が必要になれば、木札をほかの人に売ることで換金できる、という点です」


 ミナは木札を、別の相手に売る、というシミュレーションをやってみせる。


「その場合は、銀行を通してやっていただくのが条件です。でなければ、利息の振り込みができませんので」

「確かに」


 ミナが説明を始める。

「今回、債券を発行しますのは、コブルー港開発の件となります。名前は『コブルー港建設債』、略して『コブルー債』でございます。これは7期にわたって販売される予定です」


「ふむ……」

 商人たちは頷く。


「初めての試みでございますので、コブルー債の債券は試験販売として、いろいろと細かい仕組みを試しながら、少しずつの販売となります。今回は、金貨1枚で販売させていただきます」


「ほう……。金貨1枚で参加できると……」

「そして、最初の2回はバンリオル銀行本店に口座を持っている人のみに、販売する、ということで始めます」

「バンリオル……」


 4つの商会のものは、皆バンリオルを見る。

 バンリオルはニコリと笑って見せる。

 ここまでは先に財務庁と打合せをしているとおりなのだ。


「なぜバンリオルからなのです?!」

 コマキア商会の番頭クミルトンが声を上げる。


「これから、仕組みを説明させていただきます。すると、なぜバンリオル銀行からなのかがおわかりいただけると思いますので、少々お待ちください」

 とミナはいったん収める。


「第1期販売の債券は100枚のみ。つまり、最大で100人ということになります。その購入を希望する者は、先に予約を受け付け、多い場合は抽選とします」


「え、抽選……ですか?」

「先着順ではだめなのですか?」

 商人から質問が出る。


「はい。実はこの第1期、第2期の販売は、詐欺師を抽出するためのものなのです」


「な、なんですと?!」


 商人一同、驚愕する。


次にミナが罠をしかけるのは、債券そのもの……!


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。

---今までのあらすじ---

ミナはコブルーで祝祭を開催して、かなりのお金を作った。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦を、五大商会が詐欺師掃討戦を遂行した。ミナが次に計画したのは港の拡張である。その資金作りのため、ミナは債券という金融商品を財務庁に提案した。商人たちが闇の組織に狙われているのを聞いて、ミナはそこに新たな罠を仕掛けるのだった。

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別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫。バンリオル商会工作員、24歳

ボリック・バンリオル … バンリオル商会の代表、30歳

ピッター … 攻撃の魔法具。魔弾が発砲される


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