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ミナの債券の説明に、財務庁もバンリオルも驚愕!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


第167話 債券という金融商品



 ミナは王府財務庁の行政棟の中の会議室で、長官カルドゥスに面会した。カルドゥスの周りには、数人の文官が並んでいる。祝祭を大成功させた天才官僚、ミナが来るというので、財務庁の官僚がぞろぞろと集まっている。


「ミナ殿。ブリアからいただいた要望の、コブルー拡張工事の予算の件のお返事ですが……」


 ブリア出張所からすでに用件を伝えており、財務庁で検討をしてもらっているはずだ。


 コブルーは国際港であり、さらに、自由港開発の事業となっているため、王府から予算が出ている。だが、それらは治安維持の警備兵、税官吏、法官の報酬、建物の補修などの費用にほとんどが当てられ、なかなか拡張工事までは手が回らない。


「王府から出せる金額は、金貨200枚ということになりました」

「200枚……」

 あまり期待していなかったので、予想通りというところだ。

「ありがとうございます。それだけでも、3つの埠頭の桟橋拡張工事はできそうです」

 ミナは微笑む。


 カルドゥスはミナがあっさりと納得したので、少し拍子抜けだ。

 そもそも、この金額では、埠頭を一つ増やすにはまったく足りないのである。それはカルドゥスにもわかっている。


 だが、祝祭で手に入れた利益を少し回せば、桟橋拡張とトロッコの設置は可能な金額だ。

(あとは、新しい埠頭の工事費……)



「王府からいただける予算については、理解いたしました。ですが、それでは埠頭の増設工事はできませんので、予算を捻出するための案をご提案したいと存じます」


「ほう、案と言いますと?」

 カルドゥスは期待した。ミナはいつも思いもよらぬことを言う。それが次第に楽しみになってきていた。


 ミナはカルドゥスに1枚、ほかの官僚たちに1枚。それに自分用に1枚の資料を配る。


「なんですかな? これは……」

 カルドゥスは資料を覗き込んだ。

「はい。こちらは、債券の案でございます。債券は金融商品というもののひとつでございます」

「債券? 金融商品……とは?」


 カルドゥスは興味深そうに資料を読む。

 官僚たちも1枚しかない資料を覗き込む。


「資金を調達するための新しい仕組みでございますので、まずは財務庁の許可をいただきたく存じます。そして、可能であれば、王府の発行する金融商品としていただきたいのでございます」


 ミナは木札と銀貨を何枚か用意して、実際にやって見せる。

 金貨は貴重なので、銀貨を使っているのである。


「今までのやり方はこうです」


「わたくしは、銀貨10枚を借りたいと思っています。そこで、銀貨10枚を持っていそうな人のところに行きます」

 そして、カルドゥスのほうを向く。そこに7枚の銀貨をおいておく。


「で、10枚を借りたかったのですが、7枚を5%の利息でなら貸せるということでした」


 まず、カルドゥスのほうから銀貨7枚だけを動かす。

「お金が移動しました。わたくしはこの銀貨を受けるとときに、証書を書きます」


 そして、木札を1本カルドゥスに渡す。そこには銀貨7枚、利率5%、10年で返済、と書いてある。


「ふむ。これはわかります」


「わたくしはまた、お金を持っていそうな人を探し、あと銀貨3枚を借ります」

 カルドゥスの左手に座る官僚の前に銀貨3枚を置き、それをミナのところに引き寄せる。


「わたくしは3枚を借りることができましたが、条件は異なりました。ですので、木札はこのようになります」

 そこには銀貨3枚、利率は7%、8年で返済、と書いてある。その木札を官僚に渡す。


「こうして、わたくしは10枚の銀貨を手に入れることができました」


「ふむ。これは資金を手に入れる、普通のやりかたですな」


「はい。では、次に債券の説明をいたします」


 官僚たちに銀貨を1枚1枚配り、全部で10枚を置く。


 そして、木札を1本見せる。

「この木札には銀貨1枚、利率は5%。満期は10年と書いてあります。これが債券というのものです。これが欲しいという人に売ります」


 そして、それを10本並べる。

「これらはすべて同じものです。この木札そのものが商品となります」


 そして、ミナはほかの官僚たちに言う。

「いかがですか? これを買ってくださいませんか? 木札1本は銀貨1枚です。買っていただければ、毎年利息がもらえます。そして、10年後には元金がそのまま返ってきます。損はしませんから、お得でございます」


「毎年利息がもらえる……」

「銀貨1枚を渡せば、それが手に入るので?」

「で、10年後には元金が戻ってくると……?」


「はい。そういうことでございます」


「おお! 理解できました。これですと、大金を持っていない人も、お金を貸せるということですな?」

「はい、そのとおりでございます」


「ああ、なるほど。少ないお金しかない者も、利息をもらうことができる、ということですか!」

「こちらから、お金を持っていそうな人を探す必要もなく向うからやってくる、ということで?」


「はい。そのとおりでございます」


「いちいち、一人ひとりに貸し出しの条件を交渉しなくてもよい、ということですな!」

「はい。条件を一つにすることで、多くの方に参加していただけます。この条件に納得した人だけが買ってくれるでしょう」


「なるほど。銀貨が先に動くのではなく、木札が最初に存在する。木札が欲しい者が銀貨を支払う。……これはおもしろい仕組みですな」

 官僚たちは皆理解したようだ。


「一人で木札を何本も買うことができますか?」

「はい、何本買っていただいてもかまいません」

「……ですが、本当に利息が払われるのでしょうか。これだけでは信用できない気がしますが……」

 官僚の何人かが同意して頷く。


「はい。ですから、この債券の発行は国にお願いしたいのです。

 今回は、集めたお金をコブルー港の開発に使うという条件で国が発行します。

 名付けて『コブルー港建設債』。

 すると、王府の信用をもって返済を約束することで、民は安心して買うでしょう」


「それで、10年後に元金をちゃんと返還できるので?」

「それは新しく建設した埠頭の利用料からの利益で支払われますので、元本と利息を返せるような利用料の設定をするということになります」


「つまり……」

 カルドゥスは木札を手にして、じっと眺めながら言った。


「国が商人から金を借りるのではない。国の事業に、民が少しずつ参加するということですな」

「はい。その通りでございます」


「ふむ……」

 カルドゥスは顎髭を撫でる。

「おもしろい……」

 官僚たちも黙って不思議な高揚感を味わう。


「これは……今後の国の事業が、根本的に変わりそうですな……」

 カルドゥスはつぶやいた。


 * * *


 ミナは王城を辞すと、バンリオル邸に向かう。カイルがいるはずなのだ。


「やあ。ミナさん! ようこそ! あとでカイルを呼びましょう」

 ボリック・バンリオルはにこやかに歓迎する。


「今回は、債券についてのご意見をお伺いしたいのですわ」

 とミナは話を切り出した。

「債券……とはなんでしょうか?」


 ミナは財務庁でしたように、木札と銀貨を使って債券の説明をした。


「なるほど。一人からたくさんのお金を借りるのではなくて、たくさんの人から少しずつ借りることで、資金を簡単に調達できるということですな?」

「はい。その通りです。で、ボリックさんにご相談したいのは、利率がどれくらいだと、債券を買おうと思うか、ということでございます」


「……そうですね。金貨1枚を10年間預けるのですよね。で、利息が毎年もらえる。10年後に元金が返ってくる……。少なくとも10%は欲しいですな」


「じゅっ、10%ですか……」

 ミナはがっかりした。それは多すぎて、こちらには負担が大きい。


「アハハ。金を寝かせていてもよい人ならば、5%でもいいかもしれませんが、私としては、金を寝かせてやるほど優しい男ではないのですよ」


 同じ金を事業に投資すれば、その事業の利益が入ってくる。それは10%以上になることもある。街道商会はこのやり方だ。


「はあ……。さすがですね。ということは、この商品が合うかたは、お金を寝かせている人……」


「貴族たちはお金を寝かせていることが多いですし、引退した商人たちにはとても良い商品となりますな。でも、途中でお金が必要になったときにはどうなりますか? 返済していただけますか?」


「返済はいたしませんが、その場合は、証書をどなたかに売っていただければよいのです」

「な、なんですと?!」


 バンリオルはそこで目が覚めるように驚いた。


債券。それは資金を作り出す最大の手だ! ミナはその大事業に着手する。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。

---今までのあらすじ---

ブリア領主アンドリオンの妹の結婚式のため、ミナはコブルーで祝祭を開催して、かなりのお金を作った。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦を、五大商会が詐欺師掃討戦を遂行した。ミナが次に計画したのは港の拡張である。その資金作りのため、ミナは王都の財務庁にやってきた。

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫。バンリオル商会工作員、24歳

ボリック・バンリオル … バンリオル商会の代表、30歳


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