コブルー競技会。庶民に初の「王国一」の称号が与えられる
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
宣言が終わると、競技会が始まる。
アンドリオンは母の隣に座り、観覧する。
ミナはあちこちで調整をしなければならないので、競技場の隅に控えている。
警備兵たちも十分に配置されているから、治安も万全だ。
競技大会は鍛冶職人から始まる。アラゴンキアの23の領地から代表が出され、まず、高らかに代表の名が呼ばれる。
恥ずかしそうに、誇らしげな顔をして、鍛冶職人たちは手を挙げて声援に応える。
そして、それぞれが持ち寄った剣の前に23人の軍人が並び、藁で作った柱をどんどんと斬っていく。
予選では鎌を使い、農民が鎌で藁を斬った。
本番は剣だ。
軍人の剣さばきの差が出ないように、軍人と剣の組み合わせを変えて、何度も繰り返す。
その成績を点数にして積み上げ、高得点を出したもの3人が最終戦に選ばれる。
「優勝者はこの3本の中から決められる」
公平を期すため、剣に領地の名前は入っていないから、どこが残っているのか、観客はわからない。
ここで、将軍ルジャンドーが登場する。
将軍がこの3本の切れ味を確認するのだ。
ルジャンドーは1本の剣を持ち、まず振り具合を確かめる。それから柄をじっくりと眺める。
そして藁の柱の前に立ち、ズバッと振り下ろした。
すると、藁の柱の上半分がズズズ……と滑るように落ちていく。
「ふむ……」
それをあと2本繰り返し、ルジャンドーは1本の剣を手に取った。
「勝者はこの剣である」
そう言うと、係がさっとやって来て、その剣の製作者を調べる。
「勝者……!! ラッスル領のグレーン!!」
「おお~!!」
どよめきが上がり、ラッスル領の鍛冶職人が感動のあまり、よろよろと立ち上がって前に進む。
「お、俺が……。俺の剣が……!!」
係が観客を一度静め、鍛冶職人を隣に立たせ、改めて宣言する。
「アラゴンキア王国一の鍛冶職人は、ラッスル領のグレーンである!!!」
「おお~~!!」
再び観客席にどよめきが広がる。
「グレーン、グレーン!!」
庶民たちが祝福の声を上げる。
「お、王国一……」
その言葉はグレーンの胸を打ち、とめどなく涙があふれる。膝が落ち、その場で座り込む。
係は、座り込んで嬉し涙を流すグレーンを立たせ、メダルを首にかける。
それは、王国一の鍛冶職人という証明のメダルだ。
観客たちはただ喜んでいるだけではない。
庶民が貴族たちの前で「王国一」の称号をもらうという、信じられないほどの名誉に圧倒されている。
まるで新しい世界が扉を開けて、光が差したように、それぞれの心に新しい希望の光がついた。
それまで、自分の生まれた村だけが世界だった。村から一歩も出ないのが普通だった。
だが今、その世界は一気に広がった。
努力すれば、庶民でも王国一になれる。貴族たちの前で表彰される。
その事実は、多くの人々の胸に、新しい火を灯していた。
「グレーン、万歳!」
誰かが叫んだ。
「アラゴンキア、万歳!」
それに呼応するように、つぎの者が叫ぶ。
「国王陛下、万歳!」
民衆が立ち上がる。
「ブリア侯、万歳!」
全員が叫び始めた。
「ミナさん」
バンリオルがカイルとともに、ミナのそばにやってきた。
「まあ、ボリックさん。お越しになっていたのですね」
「ええ。この競技会を見にまいりました。
それにしても、なんとすばらしい光景でしょうか……」
「ええ。本当に……」
3人とも、この半年の苦しさが報われたと感じた。
カイルは思う。
(全員が力を合わせることで、まったく新しい世界が生まれるのか……。世界がいつの間にか進化している……)
バンリオルは思う。
(盗賊も偽商人もほとんど淘汰された。手形の仕組みも五大商会で共有された。競技会のおかげで、民の勤労意欲も最高潮。商品も変わるだろう。商人は新しい商売の時代に入るのだ……)
ミナは思う。
(これで、アラゴンキアは一段階進化した。……でも……最終目的地はまだ遠い……)
コブルー自由港は、まだ完成していない。
――だが、その未来へ向かう第一歩は、確かにこの日、刻まれたのであった。
「第四部 成長する王国 第1章 王国あげての一大事業」の終わりです。
次は、「第四部 成長する王国 第2章 安心安全な世界の構築」が始まります。
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦も進めており、かなりの盗賊が討伐され、最後にはコブルーに追い込まれ、罠にかけられた。見本市にも罠をしかけ、詐欺師たちも取り締まる。そしてやっと競技会が無事に開催された……。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
カイル … ミナの夫。バンリオル商会工作員、24歳
アンドリオン … ブリア領主。ミナの上司,26歳
ボリック・バンリオル … バンリオル商会の代表。ミナの支援者、30歳




