↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
202/234

盗賊掃討戦のあとは、詐欺師掃討戦! 商人たちの戦いは止まらない!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!



第163話 第二の掃討戦の開始


 10月8日。

 各区画で見本市が始まる。

 正式には10月13日から3日間なのだが、早く始める分は問題ない。商人もコブルーに早く来るし、買い物をする貴族たちも早めにやってくる。

 だから、7日間の開催を目指して、今日からオープンする店が半分くらいあった。


 盗賊を呼ぶための偽情報の見本市の中身ではなく、本物の展示品がずらりと並んでいる。

 見本市なので、基本的にはまだあまり流通していない珍しいものが多い。


 港の広場や街角のあちこちに、板に描かれた地図があり、そこにどこに会場があるかを示す案内がある。それを見て、街中を回るのだ。

 移動しやすいように、辻馬車ならぬ辻バギーが走っているので、スピーディーに回れる。


 基本的には、比較的安い商品は中級区画以下で、高級な商品は上級、特級に置かれている。

 そのコーハラルの特級区画に、カイルはいた。


 たれ布が下がる紫のシャペロン帽をかぶり、上質の布の上着を着ている。どこから見ても、裕福な商人だ。

 そして、商品を見るフリをして、実は客を探っているのだ。


 これもミナが依頼してレオストが命じた仕事で、怪しい商人をみつけるためである。

 このような諜報商人は、カイルだけではなく、五大商会からそれぞれ3、4人が出ていた。


 ジオルダンはどう見ても商人には見えないので、仕方なく、カイルの護衛としてそばに着くことになった。


「ち。なんで俺がおめえを『旦那様』って呼ばなきゃなんねえんだよ……」

 ジオルダンは頭の後ろで指を組んで、口をゆがめる。


「だったら帰ってもいいんだぜ?」

 カイルは冷たい。

(そんな態度の護衛がいるか!)と言いたい。


「いや。ついていくぜ。ねえちゃんに約束したからな」

(ねえちゃん……)


 それはミナのことだった。

 ジオルダンはデヘデヘと、目を三日月にして笑う。

「『カイルをお願いね』ってねえちゃんが……。デヘッ」


「あんた……。言っとくけど、ミナはもう俺のもんだからな」

「知らん」

 ジオルダンは聞かなかったフリをする。


(まったく、ミナもミナだ。なんで俺がジオルダンに「お願い」されなきゃいけないんだ~!!……)と思いつつ、まあ、ジオルダンが役に立たないとは言わない。


 見本市で怪しい商人がいる可能性は4つある。


 1つ目は、商人同士の取引でやり取りされる金貨を奪おうとする偽商人だ。

 2つ目は、盗んだ商品を並べて売りさばこうとする悪徳商人だ。

 3つ目は、見本市の場を利用して、怪しい取引を持ちかける悪徳商人だ。

 4つ目は……


 実は、この見本市での代金のやり取りは、手形で行うことになっている。

 まだ試験段階なので、五大商会のみとなり、そのほかの商会ではまだ不可能だ。

 それでも、動く金貨は少ないと言える。

 だから、1つ目は、五大商会としては警戒が必要ない。


 2つ目の問題は、それが盗品かはわからないが、値付けを見ればある程度推測できる。つまり、安くてオトクと思わせる商品が怪しいということだ。


 3つ目が一番やっかいだ。おそらく一番数が多い。要するに、詐欺師である。存在しない商品を売るやからだ。だから、基本的には、これらのやからを見つけるというのがカイルたちの仕事だ。



「失礼……。あなたはどこの商人で?」

 かなり面長の、背の高い商人が、カイルに声をかける。

「私はバンリオル系列の商人、レンダです。これは護衛のオルデン」

「ほう。バンリオル系列ですか……。私はエッカールと申す者。少しお話できますかな?」

「……ええ。少しならいいですよ。なんでしょう?」


 エッカールは、衝立の向こうの商談用のテーブルにカイルを案内する。

「オルデン、誰も近づかないように見張りを頼む」

「へ、は、はい。旦那様」

 ジオルダンがぎこちなく返事をし、衝立の向こうに立った。


(フフン。「旦那様」と言わせてやった……)

 カイルはジオルダンに自分のことを「旦那様」と呼ばせ、ちょっと満足して、右の口角を上げる。



「ここだけの話なのですが……」

 エッカールが小声で話し始める。

(来たぞ……)

 カイルは警戒する。それはだいたい詐欺師の話の出だしの常套句だ。


「実は、亡命王族の財宝を預かっておりまして……」

「ほう? どちらの?」

「はあ。それは申せません。私の身が危なくなりますので……」

「ほう……」


 カイルはその男の特徴を観察する。ひょろりとした体形で、茶色の髪の毛が頭の間なんかで分けられ、ストレートに伸びて、肩までの長さだ。

 身なりはヨーカイダの者のようだが、ここで調達した服かもしれない。


「で、その財宝を捌(さば)きたいのですが、捌いてくれる商人を探しているのですよ」

「ほう……。で、その財宝はどこにあるのですか?」

「はい。コブルーに持ち込んでおります」

「ほう、コブルーに……。で、私になにをお望みで?」


「亡命王族の財宝を捌くのは大変難しいのです。どこの王族かバレると、新王族がその財宝を返せと言ってくる可能性があります。ですから、亡命先で売ることはできません。必ず、別の国で売る必要がございます。そのために、私はかの国からアラゴンキアにやってきたのです」

「なるほど……」


「ですが、私はここに人脈がない。ですから、その財宝をあなたにお預けし、売っていただきたいのです」

「なるほど。私に委託するとおっしゃるのですな」

「ええ。売り上げの2割を報酬といたします。いかがでしょうか」

「2割……ですか」



「すごく高価なものですから、2割でもかなりの額になりますとも」

「ほう……。で、その財宝は見せていただけるので?」

「え、ええ。お見せすることはできますが……。ただ、契約書を交わしていただいてからとなります」


「えっ? それは順番が逆でしょう」

 レンダは言う。

「財宝が確かに売れるものか、確認せずして契約書を交わす者などおりますまいよ」

「ええ。それはおっしゃるとおり」


 エッカールは胸の内ポケットから、小さな袋を出す。

「こちらは、ほんの一部でございます」

 そう言って、袋から出したのは、金の腕輪と指輪、首飾りだ。


「ほう……。触っても?」

「ええ。もちろん」

 レンダはまず腕輪に触る。金を確かめるなら重さだ。ある程度の重さで、それが本物かどうかの検討がつく。

 次に首飾りを持ち上げる。


「ふむ……。本物のようですな」

「もちろんです。これだけでも、十分な証明となりましょう。全部で荷馬車一台分ございますよ」

 エッカールは満足げに微笑む。


「で、契約書というのは?」

「ええ、こちらです」

 エッカールが見せた契約書には契約金が金貨5枚と書かれてある。

「財宝をお預けすることになりますので、保証金とお考えください」

「なるほど……」


 レンダは考え込むフリをする。

「ええ。もちろん、今すぐにお決めいただかなくてもいいのです。他にも何人か、すでに検討中の商人がいますので、早い者勝ちとなりますが……」

「ふむ……」


 詐欺師の口上はだいたいこうだ。


 1.あなただけの特別な儲け話だと吹聴する。

 2.めったにない機会だと思わせる。

 3.商品を全部は見せず、想像させる。

 4.幻の競争相手に勝ちたいと思わせる。


「……残念ですが、私にはまだそのような人脈がございません。お役に立てないと存じます」

 そう言って、レンダならぬカイルは、席を立つ。


「な、なんともったいない……」

 エッカールは少し失望したように言った。

「儲け話に乗れる者はそう多くありませんな……」


 断られたら、

 5.相手が損をしたような捨て台詞を言う。

 ……でワンセットだ。



 エッカールは去っていく。

 しかし、ジオルダンはこっそりと部下に合図をし、エッカールを付けさせる。


 カイルとジオルダンの役割は、怪しそうな商人をあぶりだすことだ。そして、後は他の者がこっそりと後をつけ、調査をするのだ。



 ミナは3月の五大商会を集めての祝祭説明会で、見本市の偽商人掃討戦を提案していた。


「商人の敵は盗賊だけではございません。詐欺師、偽商人もです。これらは見本市で一掃いたしましょう」


 ――盗賊掃討戦の次は、悪徳商人掃討戦の開始である。


盗賊討伐の次は悪徳商人掃討戦! ミナはアラゴンキアのならず者をとことん許さない!


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---

ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦も進めており、かなりの盗賊が討伐され、最後にはコブルーに追い込まれ、罠にかけられた。次はいよいよ見本市が始まる。


------------------------------------------------

別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

https://ncode.syosetu.com/n1866mp/

------------------------------------------------

用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫。バンリオル商会工作員、偽名はレンダ。24歳

レオスト … 王弟。王国軍の最高司令官。40代

ジオルダン … トガリア商会の工作員。偽名はオルデン。32歳


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=828069169&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。