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ミナ、カイルと過ごして気分高揚。2つの問題を一挙に解決!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!

第162話 2つの問題を一挙に解決



 テラスの手すりにもたれて頭を落として俯いていると、「ミナ」と声がして、後ろからそっとやさしく肩を抱かれた。

 はっと振り向くと、カイルがいた。


「カイル……」

 ぎゅっと抱きつく。

(会いたかった……)

 同じ街にいるのに会えないイライラがたまっていた。


「ゾーイが知らせに来た。また飛び出そうとしたから、少し叱ってくれって言ってたぞ」

「うう……。ごめん……」

「ごめんじゃないだろ。危険なことがまだわかってない」

 ミナは頭を上げて、カイルを見ると眉間に皺を寄せている。


 前もこんなふうに怒られたっけ。もうなんだったか忘れたが。


「はい。すみません……」

 ミナは目を伏せて、頭のてっぺんをカイルの胸にトンとつける。


 そのしぐさがかわいくて、クスッとカイルが笑う。

「少し休みが必要なんじゃないか? 神経を使い過ぎなんだろう」

「はい。ちょっと失敗しました……」

 二度ほど彼の胸にトントンと頭をつけた。


 ミナは反省しきりなので、殊勝な態度をしている。


 しかし、頭の中では次のことを考えている。

(地元に特典。……地元に恩恵……)

 反省する点がカイルの思っているところと少し違っていた。


「ミナ殿。ルジャンドー将軍がお呼びです」

 港湾職員が呼びに来る。


 ミナは一階の応接室でルジャンドー将軍に会った。

「この度はすぐに来ていただき、ありがとうございました。怪我人を出さずに収めることができました。助かりました」

 そう言って頭を下げる。

 ミナのそばにカイルが護衛のように立っている。


「ふむ。いやいや、お役に立ててよかったです。……が……」 

 カイルが立っているのを見て、将軍が首を傾ける。

「なんでお前がここに?」


「は。妻ですので」

「えっ? ミナ殿が妻?」

 ルジャンドー将軍の目が点になった。


「妻は無謀な行動をする癖がありますので、注意しにまいりました」

 カイルはまじめに言う。

「そ、そうか…。知らなかった……」

 妻というのも、無謀というのも、どっちも知らなかった。


 ルジャンドーは、カイルはレオストの騎士でバンリオルの私兵、としか聞いていなかった。


「ま、盗賊はだいぶ収まった。今日は、お前はもう外れていいぞ。明日も休め。ミナ殿のそばにいてやるがよい」

「はっ。ありがとうございます」

 カイルは一礼する。


 そして、ルジャンドーは戻っていった。


 カイルは原因をしばらく調べ、それからコブルーの服屋で少し高級な既成服を買い、身なりを整えて、夕方、高級宿ドーハイラに入っていった。

 ミナの部屋でふたりでゆっくり食事をする。フリーゼがいるので、給仕をしてくれる。



「原因はどうやら、港の狭さだな」

「そうなの?」

「ああ。商船が増えたから、漁民が使える埠頭が減った。それで漁民が不満を持っているんだよ。今に始まったことじゃないな」

「そうか……。港を拡張しなければどうにもならないってことね。お金がいるなあ……」


 拡張が必要なことは前からわかっていたが、なかなかお金ができなかった。

 いつまで経っても、お金が足りないのだ。


(ぐぐぐ……。お金ができたと思っても、必要な金額がどんどん上がるだけ……)

 楽な商売ができる社長などいないのだ。


「ミナ、せっかくふたりでいるんだから、楽しもう。後でダンスでもするか?」

「う、うん……。そうする」

 ミナはニコッと笑った。

(久しぶりに歌って踊るわ……)


 今夜はもう終業だ。何も考えない……。たぶん。

(自分でブラック企業になるのはやめた……)


 愛しい夫の顔を眺めていることにした。

 ちょっと心の余裕ができたミナだった。


 * * *


 9月11日。

 次の朝、カルジャンは商会員を集めて会議を開く。

 ラバル、ガレックなど、担当商会員全員が集まる。


「きのうは大変な騒ぎがございました。この原因は、漁民の不満から発しているようです」

 カルジャンが説明する。

「はあ……。なるほど」

 皆、頷く。


「ペレの荷主には、委員会から見舞金を出しました。まあ、保険には入っていたようですが……」

「ふむ……」

「ですが……。漁民の不満を根本的にどうにかすると言っても、すぐには無理かと……」

 カルジャンの言葉に、また皆「うんうん」と頷く。


「それよりも先に、競技出場者の宿の件を……」

 ラバルが遠慮がちに言う。


 そこへミナが書字版を携えてやってきた。

 全員が一度立ち上がり、ミナが座ると全員座る。


「はい。その件も、漁民の不満も、両方解決できる案をご提案したいと思います」

 ミナはニコリとして言った。

 昨日はカイルとゆっくりと過ごしたので、気分がいい。


「は、両方ですか……?」

 皆、きょとんとしている。


「はい。これは民泊企画でございます」

 ミナは書字版を見せる。


「漁民とは地元民。皆、コブルーに家がございます。そして、不満は最近、漁に出るのにすぐに出られない、すぐに戻れないなどの港の混雑です」

「ふむ。……それで民泊とは?」


「はい。民泊とは普通の民家に泊まること。出場者には、漁民の家に泊まっていただきます。そして、漁民は、部屋を出場者に貸すという名誉を得ます。

 こちらの祝祭委員会からは、民泊を申請する漁民には、十分な宿泊費を支払います。もともと宿に払うはずでしたから、かなりの額を支払えるでしょう。それは、漁民の臨時収入となります。その分、家の清掃、清潔なベッドの提供などを行っていただきます」

「な、なるほど……」


「部屋を貸せない者もおりますが、村をあげての歓迎会や楽しい催しを開催することで、交流していただき、楽しく過ごすことを奨励いたします。催しは野外で、大鍋で作る食事の提供、魚介類の炭火焼き、楽師と歌い手を招いて、ダンスの開催。これも委員会から経費を出します」


 食事と音楽とダンスは人を幸せにする。

 夕べ、ミナはそれを心の底から楽しんだ。落ち込んだ機嫌がすっかり直ったのだ。


「なるほど! これはいいですな。ちょっとした祭りということですな。漁村ですから、おいしい食材があるでしょう」

「はい。目的は、漁民と他の領の出場者が一緒にこの祝祭を楽しんでもらうこと。そして、宿を提供してもらうこと。これでしばらくは収まるでしょう」


「ふむ。確かに。わかりました。では、早速手配いたします」


 こうして、出場者150人の宿がないという最大の問題が解決に向かった。


 ――そして、この企画は漁民を興奮させ、祝祭の3日間はお祭り騒ぎの夜となったのであった。


次は見本市。盗賊掃討戦の次の段階が始まる……


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。その裏で、王国軍が盗賊掃討戦も進めており、かなりの盗賊が討伐された。祝祭開催まであと1か月。ミナも五大商会の番頭たちも、大量の人々がコブルーに集まる準備に明け暮れていた。そんなとき、漁民と人夫たちが大騒動を起こす。さらに、競技会参加者のための宿の確保ができていないという大問題が起きた。


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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫。工作員として王国軍の討伐戦に参加中。

ゾーイ … ミナの護衛騎士

レオスト … 王弟。王国軍の最高司令官

フリーゼ … ブリア領主から付けられているミナの侍女

カルジャン … バンリオル商会の番頭で、祝祭の役員、まとめ役

ラバル、がレック … 各商会の番頭で、祝祭の役員

ペレ … 梅の実に似た果実で、乱闘で台無しになった


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