盗賊たちの末路。ミナ、3つの領地の苦情解決!
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
「ほら、この輸送箱に乗んな」
レンダが立ち上がって、荷馬車をポンと叩く。
「えっ?!」
「隠してやるよ」
サイフラーは訳が分からなかったが、とりあえず、その箱の中に3人で飛び込んだ。
このまま知らない街を走っても、兵士に捕まるのは目に見えていた。
「閉めるぞ」
レンダが輸送箱の扉を閉める。
そして、閂をかけた。
荷馬車が動き始める。輸送箱はまっくらだ。
「ど、どこに行くんだ……」
「あいつ、何者なんす?」
「この箱、なんすかね……?」
3人はおっかなびっくりだ。
だが、とりあえず、兵士からは逃げられそうだった。
10分くらい移動して、馬車が停まる。
「ついたぜ。出な」
そう言って輸送箱の扉が開き、サイフラーたちが馬車を降りて数歩歩くと……壁だ。
振り返ると、鉄格子がある。
そこは檻の中だった。
「な、なんだ、ここは~!!」
「お疲れさん」
レンダが檻の格子の向こうに立っている。
ガシャンと鉄格子の扉が閉まる。
「お、お前~!! 俺たちに何をしやがった~!!」
「連れてきてやったんだよ。コブルー自慢の輸送箱に乗せてやって、新築の監獄にな」
レンダはいとおしそうに輸送箱をポンポンと叩く。
「レンダ……、てめえ……」
憎々しい声でサイフラーが唸る。
レンダの後ろには兵士たちがずらりと並んでいた。
「俺は危ない仕事専門って言ったろ?」
「ち、ちきしょうめ!!」
サイフラーは短剣を檻の中からレンダに投げつける。
レンダはそれを難なく剣の柄で弾いた。
「俺は強いんだぜ。お前にゃ勝てん。言ったろ? 人の言うことは聞くもんだ」
そう言って、後ろに向けてひらひらと手を振りながら、去っていった。
* * *
8月16日の朝。
「将軍、報告いたします。昨夜の捕り物は4か所。合計で98人の盗賊を捕獲しました!」
コブルーの町はずれに駐屯している王国軍の天幕で、ルジャンドー将軍に部下が報告する。
「ふむ。順調だな」
ルジャンドーは部下の報告に満足している。
罠のある囮倉庫はコブルーに5か所用意されている。
それが毎晩大活躍で、ホイホイと盗賊が取り放題に取れる。
小気味が良くて、軍人としてこんなに痛快な仕事はない。
村に広がる宝くじの興奮が、盗賊の心をかき乱す。祭りをぶち壊して、自分が儲けたい衝動にかられる。
そして、無性にコブルーの金貨を手に入れたくなる。
五大商会の馬車が囮となり、それを追うことで、盗賊は自ら知恵を使って金庫を嗅ぎ当てたつもりになり、自信に満ちる。
だが、得意満々な盗賊たちもレンガ造りの倉庫と頑丈な錠前に戸惑う。
そして、その開かない倉庫を他の盗賊団が襲う。それを見るといきり立つ。
それを横取りしてやるという、最高に高揚した気分の盗賊をお縄にする。
そこで取りこぼした盗賊は、周囲の通り道に置いてある輸送箱に収監する、という用意周到さだ。
捕獲した盗賊は、倉庫の中で護送箱に入れられ、監獄に連れていかれる。
今は、盗賊の首領どもを締め上げて、盗賊の荷を扱っていた悪徳商人をあぶりだしているところだ。
商人の中にはコブルーに来ている者も多いため、こちらから出向く手間がかなり省けている。
朝の報告を聞いていたルジャンドーのところに、伝令が走り込み、跪く。
「将軍。近隣の酒樽が減らなくなってきました! この3日間で消えた酒樽は1つだけでございます」
盗賊の位置を把握する「優勝祈願の酒樽」が、あまり盗まれなくなったのだ。
「ふむ。つまり……」
将軍は顎髭を撫でる。
「逃亡中の盗賊が、ほぼ片付いてきた、ということだな」
作戦の始動からやく4カ月。大量の盗賊を討伐した。その数約4000人。アラゴンキア内の盗賊は推定で4500人とされているから、あとわずかとなっている。
「あと少しだ。あと1か月で、ほぼ制圧できるぞ」
ルジャンドーはピンとはねた口髭をつまんで、ニタリと笑った。
* * *
マーガドナ鉱山。
谷間に掘られた採掘場には、朝からカン、カン、とつるはしの音が響いていた。
その脇の川では、数10人の男たち膝まで水につかり、大きな木箱のような洗い槽を揺すっている。
「もっと丁寧に洗え!」
監督役の兵士が怒鳴る。
「泥が残ってるだろ!」
「ちっ……」
ゴーリは舌打ちをした。
桶いっぱいの砕いた石を洗い槽へ放り込み、水を流しながら木箱を前後に揺する。
砂と泥だけが流れ落ち、重い鉱石だけが木箱の底に残る。
ここは最近つくられた囚人用の作業場だ。正規の労働者とはしっかりと分けられている。
このような囚人用の作業場が、マーガドナ鉱山にいくつも作られていた。
「なんで俺様が、こんな仕事を……」
腰は痛い。脚は冷たい。手は水でふやけ、指先は石で擦り切れていく。昼まで同じ作業だ。
昼飯を食べたらまた同じ作業。盗みも酒も女もない。あるのは石だけだった。
「おい! 手が止まってるぞ!」
兵士が棒で木箱を叩く。
ガン!
「さっさと動かせ!」
「うるせえ!」
ゴーリが睨み返す。
「俺を誰だと思ってやがる!」
「お前は囚人だ。それ以外のなんでもない」
兵士は鼻で笑った。
その一言に、ゴーリは言葉を失う。
周囲を見回す。
かつては頭領だった自分が、顎で使っていた下っ端の伝令や情報屋と一緒くたにされる。
それだけで大きな屈辱だ。
そして、皆、黙々と石を洗っている。
誰一人、逆らわない。逆らえば飯がもらえない。そしたら飢え死にだ。それだけだ。
これが冬も続くのだろう。
「……ちくしょう」
ゴーリは歯を食いしばり、また木箱を揺すった。
ガラ、ガラ、ガラ……。
川の水が泥を洗い流していく。
まるで、自分の誇りまで流されていくようだった。
そのとき、隣の男がぼそりと言った。
「何も考えるな」
「……あ?」
「怒りで体が抵抗するから、余計に疲れるんだよ。怒っても石は軽くならねえ」
それは白髪の男だった。
ゴーリは顔をしかめる。
「俺は首領だぞ。えらそうな口をきくな!」
「首領? ここでなんか意味があるのか?」
男は石を洗いながら、「フン」と鼻で笑った。
「首領も下っ端も、ここではみんな石を洗う囚人だ」
その一言が、ゴーリの胸に重く突き刺さった。
ギリギリと奥歯がきしむ。
「だがな。ここも悪くないぜ。今までにはないもんが、ここにあるんだよ」
「なんだよ……、それ……」
カンカンカン!!
「よ~し。上がっていいぞ~!!」
兵士が鐘を鳴らす。
「体を洗ってこい! 飯の時間だぞ~!!」
ゴーリはほかの囚人たちとともに、水を浴び、汗まみれの服を着替えて、食事の列に並んだ。器を持って順番を待つ。
神殿の導師見習いのローブを着た男が、大きな木杓子でシチューを注ぐ。
導師見習いは器にそそぐときに、一人ひとりに声をかける。
「今日もよく頑張ったな。えらいぞ」
囚人たちは黙って頭を下げる。
この言葉は、給仕担当が、囚人にかけろと上から指示されている言葉だ。
導師見習いはその意図をくみ取り、一人ひとりにしっかり顔を合わせて、声をかける。
白髪の男はその言葉に答える。
「へい。頑張りやした」
「ああ、頑張った! お前はちゃんと神様の役に立ってるぞ。明日も頼むな!」
「へい! ありがとうごぜいやす!」
ゴーリはなんだか居心地が悪い。
(猿芝居しやがって……)
ムスッとしながら、器を差し出す。
「新入りか。よく頑張ったな。えらいぞ。今日は疲れただろう。神様はちゃんと見てくださっている。お前が洗っているのは石ではない。心だ。今日洗った分だけ、心が磨かれたぞ。よくやった」
導師見習いがにこやかに言いながら、シチューを注ぐ。
(…………)
ゴーリは不思議と、怒りが静かになっていくのを感じた。
反論を言おうにも、なぜかいつもの口汚い脳の回路が燃料切れで止まったようだ。
不思議な感覚に違和感を覚えながらも、席に座って、黙ってパンをかじりながらシチューをすする。
(うめえ……)
安っぽいシチューが、なぜかうまく感じた。
母親に褒められた時のような……。
ちょっと子供に戻って弱みを見せてもいいような……。
ゴーリが今まで知らなかった感情が、芽生えていた。
ミナが3つの領地の所長から言われた苦情は、これですべて解決!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。それと同時に、盗賊掃討戦を進行し、国中の盗賊をコブルーに追い立てた。盗賊団の首領サイフラーは、レンダの口車に載せられ、コブルーで金貨を奪おうとする。しかし、直前で罠だと気づき、逃げ出したが、そこでまたレンダに出会った。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
レンダ … 本名カイル。ミナの夫でバンリオル商会の工作員。盗賊討伐戦に参加中
サイフラー … 盗賊団ジャーガの頭領。レンダの罠にはまっている
ゴーリ … 先につかまった盗賊ファラフ団の頭領




