盗賊たちは金貨の前で、盗賊の頭領オルデンをみつける
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
サイフラーはやっとのことで、プラウ川を渡った。
なんとか渡れないかと街道を歩いていると、筏を見つけたのだ。
それは材木を運ぶための大きな筏で、嵐で流れ着いたのか、桟橋ではなく、浅瀬の岸にひっかかっていた。
夜中になって、それに乗り、やっとのことで対岸についたが、筏をつける岸がない。しかたがないから、そこからは泳いで陸に這い上がった。
(俺は幸運だな……)
それくらいで嬉しくなるほど、すべてが壊れていた。最後の頼みは、コブルーで一世一代の盗みをすることだ。
ジャーガ団13人がぞろぞろと歩いていると、木陰にいた男たちがさっと前に出てきて、声をかける。
「おめえら……。腐れ盗賊だろ」
アンダルが言った。
オルデンが言った言葉をまねた。
「なに?!……」
サイフラーは剣を抜いて警戒したが、相手を上から下まで見て理解した。
「……おめえらもか?」
アンダルは黙っていた。こっちの方が人数が少ない。だから、取り込まれる可能性があった。
「コブルーに行くんだろ? 俺はアンダル。こいつらはクラッハ団だ。一緒に稼がねえか?」
「なに?!」
「俺らはコブルーで金庫を狙うんだ。だが、人数が足りねえ。だからよ……」
「いいぜ。付き合ってやる。取り分は4、6だ。俺らが6。それでいいなら、手を貸してやる」
サイフラーは人数に任せて強気に出た。
「わ、わかった……」
サイフラーもアンダルも、互いに相手を威嚇しながら、……実はホッとしていた。
そして、腹の中は互いにこう思っている。
(どうせ、最後にゃ、俺らが10割だ……)
第160話 盗賊の行きつく先
22人の盗賊は、やっとコブルーの街の中に入り込んだ。街の外郭の工事中の建物の近くの茂みに潜んでいる。
「で、おめえ、金庫の場所、知ってんのか?」
「知らん……。だが、五大商会を見張ってりゃ、わかるんだよ。だから、人数が必要なんだ」
「はあん……」
サイフラーはよくわからない。
すると、サイフラーの手下が言った。
「おかしら。五大商会ってのは、宝くじを売ってるところでっせ」
「なに?! そ、そうか……」
アンダルはそれを初めて知ったが、最初から知っているフリをした。
「そういうこった」
そう言いながら、考えた。
(そうか。五大商会で宝くじを売っているから、売り上げはまとめる必要がある。だから、五大商会を見ろってことか……)
そして、今わかったことを前から知っていたかのように言う。
「5つの商会が売った宝くじの売り上げを、一つの金庫にまとめて保管してるってこった。だから、商会の馬車を追って、行った先の倉庫に、他の商会の馬車も来るか見ていれば、そこが金庫ってこった」
「ほう……。それはすげえ」
サイフラーはヒュウと口笛をならす。
2つの盗賊団は作戦開始だ。4人ずつに分かれて、五大商会の馬車を探した。
石畳の道を馬車が走ってくる音がすると、盗賊たちは建物の陰からその馬車を見た。
「お、おい。あれは……コマキアの馬車じゃねえか?」
サイフラーはその紋章を知っていた。
「おめえら、あれをつけろ!」
「へい!」
4人の手下がつけていく。
こうして、五大商会の馬車を何台かつけて、行く場所を確かめた。そして、他の仲間が集めた情報とつき合わせる。そして、5つの商会がすべて入っていく倉庫を一つ見つけた。そこに金庫があるに違いない。
* * *
8月15日。
その夜、盗賊たちは倉庫の近くに潜み、作戦を練る。
「レンガ造りか……。馬車ごと入れる、でかい倉庫だな。出口は反対側にもあるってことか……」
「だが、どうやって入る? 兵士が正面を守ってる。あれを倒しても、反対側の兵士がやってくる。レンガじゃ火はつけられねえ。扉には頑丈な錠前がついている。斧で勝ち割ろうにも、その音で他からも兵士が来るぜ」
サイフラーは眉をしかめる。
「うう……」
アンダルが答えを考えているとき……。
「おかしら!」
倉庫を見張っていたアンダルの手下が走ってくる。
「ていへんです! 先回りして倉庫を襲っているやつらが!」
「なに?!」
2つの盗賊団は全員で倉庫へと走る。
すると、10人ちょっとの盗賊団が、ちょうど錠前を外して扉を開けたところだった。
まわりには兵士が倒れている。
「おい、あいつらが出てくるところを、襲うぞ!」
「へ、へい!」
全員、剣を抜き、身構える。
――だが、なぜか静かになり、誰も出て来ない。
「おかしい……。どうしたんだ?」
「地下でもあるのか? どこかにつながっているとか?」
サイフラーとアンダルは顔を見合わせた。
そして、中に入ることを決意する。
「おい、てめえら。中に入るぞ」
「お、おう!」
2つの盗賊団が倉庫に入っていく。馬車が入るほどだから、かなりでかい。中は暗く、よく見えない。よく見ると、奥にもう一つ扉がある。
それも開錠されていた。扉から中を覗く。
そして、奥から声が聞こえる。
「へっへっへ! お宝、み~っけ!!」
そして、ギャハギャハと大笑いする大男の姿がある。
金貨の箱を開け、金貨をざらざらと掬っている。
金貨の入った箱がいくつか積み上げられている。
周りには11人の男たちが金貨を覗き込んでいた。
「あ、あの男は……」
アンダルはその男に見覚えがある。
(確か……オルデン)
自分に金庫の見つけ方を教えた男だ。
すると、オルデンがバッと後ろを振り向き、
「誰でえ!!」
と怒鳴った。
全員が剣を向ける。
アンダルが叫ぶ。
「やろうども!! 金貨を奪い取れ~!!」
「おお~!!」
手下たちがオルデンたちに襲い掛かる。
オルデンたちは12人、こっちは22人だ。圧倒的に強いはずだ。
オルデンたちは恐れをなしたのか、立ち向かうフリをしたが、そのまま後ろに逃げていく。
それが小気味がよくて、アンダルは久しぶりに勢いよく、「ワハハ!!」と大笑いをしながら、金貨の箱のそばに走り込むと、いきなり体が宙に浮いた。
「ゲッ!!」
「グアッ!!」
バン!と床が抜けて、落とし穴に落ちていく。
「ギャ~!!」
全員が叫び声をあげた。
深さは大したことはないが、尖った石が置かれ、それに身体を打ち付ける。
足をくじく。自分がふっ飛ばした剣が自分に落ちて来る。
「ギャッ!!」
ひとしきり叫び声をあげたあと、部屋は静かになった。
倉庫の上のほうの梁に隠れていた兵士たちが大量に縄を伝って降りてくる。
「ジオルダン、ご苦労」
そう言って奥から出てきたのは、ルジャンドー将軍だ。
「ち、ちきしょう……」
うめき声がする落とし穴を将軍は覗き込んだ。
兵士たちがたいまつを持ち、穴を照らす。
「ふん。ジャーガと……クラッハか。ん? 3人…足りないぞ?」
そこにいたのは19人だ。
実は、サイフラーと2人の手下は、直前で倉庫に飛び込むのをやめた。
何かがおかしいと感じたからだ。
もし、無事に金を持ち出せれば、「外を見張っていた」と言えばいい。
そう思って外に潜んでいたが、アンダルたちが入った後、倒れていた兵士たちが立ち上がり、扉を閉めた。
「くそ! これは罠だ!」
そう思って、3人で一目散に逃げ出した。
すると、少し先で、荷馬車が停まっていて、そこに男が1人、荷馬車に腰をかけて片膝を立てて、座っている。
「おい、サイフラー」
サイフラーは驚愕する。
「だ、誰だ?!」
暗くて誰だか見えない。
「俺だよ。レンダだ。安心しな」
「レ、レンダ……」
コブルーに隠された、盗賊をおびき寄せる囮倉庫たちの出番です!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの長男との結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。その裏では、王弟レオストが盗賊掃討戦を進めている。追い詰められた盗賊団は、次々と捕獲される。最後、コブルーにたどり着いた盗賊団を待っていたのは……。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
サイフラー … 盗賊団ジャーガの頭領。レンダの罠にはまっている
アンダル … 盗賊団クラッハの頭領。オルデンの罠にはまっている
コマキア … 五大商会の一つ
オルデン … 本名ジオルダン。元海賊。カイルの仲間の工作員
レンダ … 本名カイル。ミナの夫で、バンリオル商会の工作員で、盗賊討伐戦に参加中




