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追い詰められる盗賊たち。……コブルーの五大商会に何が?

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!



 翌日の朝早く、王国軍の将軍ルジャンドーが村役場の倉庫の中で作戦会議を開く。


 カイルとジオルダンはレオストの部下として参加している。フライアは近隣の宿に泊まっているため、参加していない。


「皆、ご苦労である。いよいよ掃討作戦は大詰めに入った」

 そう。もう3カ月も過ぎた。こんな大掛かりな掃討作戦はアラゴンキア始まって以来だ。


「かなりの盗賊どもが追い詰められ、バイクレン、デラー、エレミアにたどり着いている。

 一部はブリアにすでに入り込んでいる。

 引き続き、この地域の小さな集落が狙われる可能性があるため、もうしばらく我が軍の兵は対象の村付近で待機となる」


 王国軍の兵がこの地域に集中して駐屯しており、前日のような村を襲う盗賊の対処に当たっているのだ。


「次の作戦は、少しずつ囮倉庫にやつらを誘導することだ。そこで、工作員の出番となる」

 将軍は工作員チームを見る。

 カイル、フライア、ジオルダンだけではなく、王国軍所属の諜報チームの工作員もいる。


「まずは、デラー、エレミアの盗賊団を先にコブルーに誘導する。ここは橋を通らずともブリアに来られるからな。その後、バイクレンとなる」

 将軍はバイクレン担当の小隊長たちを見渡す。

「バイクレン隊はもうしばらく村を守れ」

「はっ」


 将軍はバイクレン隊の兵を持ち場につかせ、カイルをはじめとする、工作隊を残す。

 彼らの顔を一人ひとりぐるりと見回す。

「これから工作隊の作戦を説明する……」



 会議が終わり、朝食が出る。それを一皿もらって、カイルは床に座って手づかみで食う。ジオルダンが隣に座る。


「なあ、カイル。どう思う? こないだ船で捕まえたやつら…。どこかに送られているらしいが…。どこへいくんかな?」

「さあな。知らん」


「でもよ。甘くねえか? 海賊なら、捕まったらすぐに縛り首か、海に放り出すんだぜ? 陸の奴らはなんで捕まえてどこかへやるんだ?」

「全部じゃないぞ。まだ若い情報屋とか伝令みたいな連中だけだ。それから、頭領は生かして、悪徳商人をあぶりだすだろうぜ。後はみんな処刑だろ」


「ふうん……。それでも、海賊よりは待遇がいいような気がすんな」

 ジオルダンは不満気だ。

 海ではそもそも食べ物が調達できない。だから、海賊はその場で処刑となるのだ。


「そうか? 生き残ったやつもどうせ牢屋だろ?」

「牢屋なら、余計に甘いじゃねえか。何もしねえのに、メシ付きだぜ」

 ジオルダンは腹立たしそうにパンにかじりつく。


「いや。……そんなタダメシ食わせたりしないと思うぞ」

「そうなんか?」


 盗賊になるような精神的に未熟な者を、まともな人間が養うような仕組みはこの国にない。


 カイルは以前、ミナが言っていた言葉を思い出す。


「盗賊は獣と同じ。しつけがないの。彼らをしっかりしつけられる場所が必要なんだわ」


 それがどういう意味かわからなかったが、カイルはミナの「ダメなものはダメ!」というはっきりした性格をよく知っている。


 だから、罪を犯したものを決して許したりはしないだろう。

 もちろん、盗賊の処分をミナが担当しているわけではないが、きっと意見をしているはずだ。


(たぶん、アレだ)


 カイルはフフンと鼻を鳴らしながら、パンをお茶で流し込んだ。



第159話 合流する盗賊たち



 マルーズ領の盗賊団クラッハの頭領アンダルは、デラー経由でブリアまでたどり着いたところだった。

 ここに居座ろうと思ったのだが、王国軍に再び追い払われ、30人いた仲間は9人になり、もう後がない。


 森にしばらく隠れ住んでいたが、天幕もないから雨を避けることさえできない。

 森の奥で獣を狩ろうと思っても、逆に魔物に襲われる。それで仲間が何人か失った。

 踏んだり蹴ったりとはこのことだ。


 小さな村の様子を陰からうかがって、食料を盗んでやろうと観察していたが、村はなぜか沸き立っている。宝くじがどうとか、コブルーがどうとか、村人たちは楽しそうに笑い合う。



 ――盗賊の首領になる者の共通の性格というものがある。それは、他人の幸せそうな顔を見ると、妬ましくなり、ぶち壊したくなる、というものだ。


「この世は俺様のもの」なのに、この俺様が幸せでないのに、幸せそうに笑うとは何事だ!……という思いがふつふつと沸き上がる。

 そして、ぶち壊してやり、相手が恐怖の顔になるのを見て、ワハハと快感に浸る。これがたまらないのだ。

 ――こうして、盗賊は盗賊になるのだ。


 だから、村人たちが宝くじを楽しそうに見せ合うのを見ていると、腹が立ってきて仕方がない。

 だが、今は国中がこうなのだ。だから、叩き潰すのはその根源であるコブルーだった。


(コブルーの祝祭を台無しにしてやりたい)

 そんな気持ちがふつふつと募る。一世一代の盗みをして、ワハハと大笑いしたいのだ。それでこそ、今の屈辱的な気持ちが晴れるというものだろう。



 そんな思いで、アンダルはコブルーを目指していた。

 街道は通れないが、そのそばの林の中を仲間とともに通る。

 夜になると、小さな集落に出て、こっそりと食べ物や酒を探す。


 馬鹿な村人どもが優勝祈願とかなんとか言って村に祀っている酒の小樽はちょうどいい獲物だ。

 アンダルたちはそれを担いで、森へと戻っていく。


 8月3日。

 ブリア領の境界線を越えたところのけもの道の途中の広場で、クラッハは別の盗賊団に出会う。全員、馬に乗っている。


「おい。おめえら。盗賊だろ」

 男がいきなり声を掛けた。アンダルは身構える。

 その男は巨体で、両腕に刺青がある。頭には青い布を巻いている。いかにも盗賊の首領といった風体だ。


「な、なんでえ……。やるってのか? おもしれえ。くしゃくしゃしていたところだ」

 アンダルは虚勢を張った。


「ば~か。おめえらを殺ったって、1アロにもならねえって、わかってら」

 アンダルは馬鹿にされ、頭に血がカッと上る。こんな口を利かれることはめったにない。頭領同士ならではだ。


「……じゃ、なんだよ?」

 震える怒りを隠しながら、アンダルは目を光らせ、獣のように相手の隙を狙う。


「俺はオルデン。こいつらは俺の手下だ」

 オルデンのまわりには、11人の手下がいた。

「おめえら、追われた盗賊だろ? 俺らと一緒にコブルーでひと暴れしねえか?」

「え?!」


「わかってるだろ? 王国軍に追われて、俺ら盗賊はもう壊滅寸前だ。だけど、このままじゃ終わらねえ。俺はコブルーの金庫をねらっているのさ」

「き、金庫……だと?!」


 アンダルはゴクリと唾を飲み込んだ。

 コブルーをつぶすのに、これほどいい獲物はない。

「おめえ……。金庫がどこにあるか……知ってんのか?」


「ははん。知ってるぜ。俺はもう一か月も前からコブルーに来ていて、五大商会の動きを見ていたからな」

「五大商会……?」


 アンダルはそれがなんだかわからない。

「ほれ見ろ。おめえは何にも知らんだろ。金庫を襲うなんて、おめえにゃ100年早え。だから、仲間になんな」


「五大商会くらい……知ってら。バンリオルと……」

「へん! 知ったかぶりすんじゃねえ。五大商会がコブルーで何をしてるか、知んねえだろ? ハッタリなんか面倒くせえんだよ。さっさと決めな。一緒にやるか、やらねえのか?」


「…………」

 アンダルは返事ができなかった。


「この作戦には、20人の兵隊が必要なんだ。俺らは12人。おめえらは9人。ちょうどいいだろ?」

「作戦……だと? おめえが考えたのか?」

「ああ! 俺は見かけによらず、頭がいいんだぜえ! ガハハハ!」

「うそつけ……」


 アンダルは警戒を解かない。

 盗賊は別の盗賊団の頭領など、絶対に信用しない。必ず相手を出し抜こうと思っているからだ。


「わりいが、俺は誰とも組まねえよ」

 そう言って、アンダルは手を振った。


「ふん。お高いんだな。ま、いい。俺らはコブルーにゃ詳しいが、おめえらは知らんだろ。勝手にすんだな。どうせ腐れ盗賊なんかいくらでもいる」


 そう言って、オルデンは馬を方向転換し、

「てめえら! 行くぜ!」

 と駆け出して去っていった。



アンダルはそれを見送り、少し考える。

(コブルーに詳しい……?)


 確かに、アンダルはコブルーをまったく知らない。

 金庫の場所はおろか、倉庫もわからない。

 コブルーはその辺の村と違って、夜でも兵士が巡回する港だ。隠れる場所もない。


 どうやって祝祭をぶっつぶすか、まったく考えがなかった。

 だが、とにかくコブルーに行くのだ。とりあえず、それだけだった。



いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの長男との結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。その裏で、盗賊掃討戦を仕組み、国防担当の王弟レオストの作戦が進行する。ミナの夫カイルは、その作戦に参加し、盗賊を追い詰めていた。盗賊はコブルーに逃げ込み、そこで集まった金貨を盗もうとするのだが……。


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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫で、バンリオル商会の工作員で、盗賊討伐戦に参加中

ジオルダン … 偽名オルデン。元海賊。カイルの仲間の工作員

ブリア … コブルー港のある領地でミナが働いている場所

フライア … カイルの相棒で、認識疎外魔法ナスコムが使える女


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