↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
196/237

宝くじの大興奮と、盗賊たち、最後の悪あがき

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!



第158話 宝くじの興奮と盗賊たちの焦り


 7月10日。

 この日、アラゴンキア王国中の五大商会の支店には、朝早くから人だかりができていた。


「本日より販売いたします!」

 店員が高らかに宣言すると、集まった人々がどっと前へ押し寄せる。

「おい! 本当に今日からか!」

「1枚くれ!」

「俺は10枚だ!」

「待て待て! 押すな!」


 商会の者たちは大慌てで列を整理する。

「お並びください! 1人ずつです!」

 これまで、商会にこれほど人が押し寄せたことはなかった。


 宝くじは1枚50アロ。2枚1ポル。50アロはだいたい500円くらいだが、この世界の感覚では、1人の2日分の食費だ。

 安いとは言えないが、農民でも、職人でも、漁師でも、誰でも買える値段だ。

 これを手にして、競技会の始まる前、9月末までに、予想する者の名前を書いて登録すればよい。


 だから、とりあえず買っておこうという者が次々と現れた。この世界では紙が高いので、紙を買う時に代金を払う。

 その日の夕方には、その噂は村々へと広がっていく。


 *   *   *


「おい! 宝くじ、買ってきたぞ!」

 村へ戻った若者が、広場で叫んだ。

 すると、畑から帰ってきた農民たちが、一斉に集まる。


「どれだ?!」

「見せろ!」

 若者は胸を張って、一枚の紙を掲げた。

 それは競技の名前を書き、その下に領地の名前を書き込むようになっている。

 1枚で2競技を当てなければならない。

 当たりが多数いるときには、あとは抽選だ。


「まだ書くなよ!」

「なんでだ?」

「代表が全部決まるのは9月だ。今、書いたら外れるかもしれねえ。」

「なるほど!」


「いやいや。お前、うちの領地が勝つに決まってるだろ。他の領地の名前を書いて、どうするんだ!」

「いや、だって、鍛冶師とかはどうしたって、王都に近い村が強いだろ? 作ってる本数が違う」


「なにぃ! うちの領地の鍛冶師を馬鹿にすんのか?!」

「やめろや。他の領地のことなんか俺らにわかるわけねえ。だから、自分の領地を書くしかないんだよ」

 村人たちは紙を囲んで大騒ぎになる。


 そこへ村の役場の者が、小さな箱を役場の窓口に置く。その上の壁には神の印が描かれた紙が貼ってある。

「みなさ~ん! こちらは神殿の寄付金箱です。幸運を祈りたい方は、こちらで祈ってください! 寄付金箱に小銭、入れてくだされば、神様に気持ちが届きますよ~!」


「な、なに~?!」

「俺、祈ってこ」

「俺も!」

「あ、そんなに慌てないで。この箱は毎日出しますから……」


 そこへ村の年寄りがやってきて、怒鳴る。

「静かにせい!」

 皆が振り返る。


「お前たち。収穫を忘れるなよ。もうすぐ収税時期だろ。今から浮かれてどうする?!」

「う……」

 長老に怒られて、みんな静かになる。

「この競技会は、仕事の意欲を高めるためのものだ。まずは仕事に精を出せ。そして、今年の収穫が良ければ、王様はまた来年も競技会を開催してくださるだろうよ」

「そ、そっか……」

「そだな……」


 黙って祈って、寄付金箱に小銭を入れると、村人たちは静かに帰っていった。


「さ、さすがですな……」

 村長は長老を称賛する。

「なに。まあ、今年は確かに、皆やる気が違うようだの。たまにはこういう刺激がないと、つまらんからな。今年はおもしろい夏になりそうだわい」

 長老は目を細めて、村人たちを見送った。


 * * *


 バイクレンの領兵詰所に、10歳くらいの少年が駆け込む。

「兵士のおっちゃんたち!! 助けてくれ~!!」

「なんだ、どうした?!」

 兵士たちが詰所から出て来る。

「おらの村が……おらの村が……」


 少年は緊張が途切れて泣きながら話す。


「おい! 上隊長に連絡だ!」

 詰所から数頭の馬が走り出る。


 * * *


 8月1日

 カイルは村のそばの林に潜んでいた。そばにはフライアがいる。周囲には50人の王国軍の兵士が取り囲んでいた。


 夜になれば村は寝静まる。そのとき戦闘開始だ。

 この村は10軒くらいの家しかない小さな集落だ。

 それが今、6人の子供たちを人質に取られ、11人の盗賊に乗っ取られていた。村人たちは盗賊の言いなりになり、母屋にいる盗賊たちの食事や酒の準備をしている。


 久々に屋根の下で寝られると、盗賊たちは大喜びでどんちゃん騒ぎだ。まさかすでに囲まれているとは思ってもいない。

 そして、夜が深まると眠り始めた。


 カイルはトーチで、村人と盗賊の位置を確認する。

(離れに子供が6人……外に見張りが3人)

(母屋には8人。……村人は台所に4人……)


 トーチに見える残りの点は兵士たちだ。


 カイルが頷くと、フライアがナスコムを起動する。

 そして、2人で姿を消したまま、子供を捕らえている小さな家に音を立てないように近づく。ここには見張りが3人だ。

 カイルはほとんど音もなく、その3人を殴り倒す。


 そして、盗賊の首にかかっていた鍵を取り、離れの扉の鍵を開けた。

 静かに扉を開ける。姿を消したまま中に入ると、静かな声で言った。


「声を出すな。助けに来た。静かにしていろ。できるか?」

 子供たちは縛られたまま、頭を動かして見回すが、誰もいない。

「だ、だれ?」

「声を出すなと言ったろ? 盗賊どもに気づかれるぞ」

 5歳から10歳までの6人の子供たちはぶるぶる震えている。

「安心しろ。声を出さずに静かにしていれば、守られる。いいな? 怖ければ、目を閉じていろ」

 子供たちはうんうんと頭を振る。小さい子は目を閉じた。


 カイルとフライアはナスコムを切り、姿を見せる。

「縄を切ってやるからじっとしてろ」

 2人で素早く縄を切る。


 子供たちを解放し、扉を開けてそっと外を見ると、母屋から盗賊が1人出てきた。そして、倒れている見張りに気づく。

「て、ていへんだ! お、おい!」


 慌てて引き返し、母屋に知らせに行こうとしたところ……。

 盗賊の身体が前方に吹っ飛ぶ。後ろからカイルが殴りつけたのだ。かろうじて身体を起こそうとしたところをまた殴って気絶させた。


「フライア! 子供たちを連れて逃げろ!」

 カイルが叫ぶ。

 そして、兵士たちに合図をする。

「隊長! 村人の安全を確保しろ!」

「よし!!」


 兵士が走り出す。一部はたいまつを持っており、あたりが明るく照らされる。残りの家に閉じ込められている村人を救出に向かう。


 カイルはそのまま母屋に飛び込む。台所に固まっている村人たちを真っ先に守らなければならない。おそらく縛られている。


 異変に気付いた盗賊たちは飛び起きて、うち3人が台所の村人を人質にするため捕まえようとする。カイルはそこに飛び込んで、あっという間に3人に斬りつける。

 兵士も飛び込み、ぶるぶる震える村人の縄を切って、連れ出した。


 しかし、頭領以下7人は剣を持ち、カイルに斬りつけようととびかかる。

 カイルの未来視が作動する。

 台所にいた村人たちが無事に逃げ出したのを横目で見ると、炉の灰を剣で撒き上げる。目つぶしだ。それからすかさず、灯り用の油壺を盗賊の足元に投げつける。


「うわ~!!」

 足元が滑る。2人がズルッと倒れた。そこをすかさず斬る。

 3人は窓に体当たりして、身体ごと飛び出す。しかし、窓の外には兵士がいる。


 焦った頭領と2人の手下は一斉にカイルに剣で挑む。しかし、2人を交わし、蹴とばすと、頭領に向かい、一撃でその剣をはじき、頭領を斬り倒した。手下たちはひるむ。そこへ扉から入ってきた兵士が手下を押さえる。


「ふう……」

 カイルは母屋を出ると、汗を拭き、一息つく。

「終わった……?」

 フライアがそばに来た。

 カイルは一瞬止まったが、バッとフライアを突き飛ばし、剣で矢をはじいた。


(もう1人いる!)

 矢が飛んできた方向に向かって腰の短剣を投げる。

 それは射手の背中に命中し、倒れた。12人目だった。


「あぶねえ……。森にいやがったんだな」

 フライアの手を引っ張って起こす。

「怪我、ないか?」

「う、うん…」

 カイルは念のため、フライアが怪我をしていないか、顔や腕を確かめる。


「油断禁物だな」

 カイルは汗を拭いた。


 フライアは胸にかけているお守りを服の上からこっそりと握る。それはカイルがくれたものだ。


「このままだと狙われる村が増える。……そろそろ最終戦だな」


アラゴンキア中の盗賊をコブルーに追い込む作戦は、そろそろ最終戦だ……!


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの長男との結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、ミナの予測よりも経費がかかり、予定していた宝くじの利益が足りない。そこで、宝くじ事業を来年から神殿に渡す代わりに、結婚式の費用をタダにしてもらえることになった。大喜びで、王弟レオストに報告に行くのだった。


------------------------------------------------

用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫で、バンリオル商会の工作員で、盗賊討伐戦に参加中

フライア … カイルの相棒で、認識疎外魔法ナスコムが使える女

トーチ … 索敵の魔法具

未来視 … カイルの特殊能力。命の危険を感じると、未来が見える

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=828069169&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。