ミナ、レオストからもちょっぴり稼ぐ……
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
第157話 公爵夫人からの贈り物
6月17日。
銀月宮で殿下に面会を求めると、レオストはちょうど前々日、討伐から戻ってきたところだった。
ミナはいつもとは違う部屋に通された。そこは、銀月宮の中でも私室に近い奥の部屋である。
「ミナ、待たせたな」
レオストが部屋に入ってくる。
ミナが頭を下げたままでいると、レオストの後ろから、女性が1人入ってくる。
「ミナ、頭を上げよ。これは私の正妻、シャンドラだ」
ミナが頭を上げると、そこにはきらびやかな衣装に身を包んだ40代の美しい貴婦人がいた。強さと美しさが共存した、凛とした女性である。ドレスを着てはいるが、現代風に言うとキャリアウーマン的な雰囲気だ。
「あなたがミナね。わたくしはシャンドラ。よろしくね」
「こ、これは公爵夫人、お目にかかれて光栄でございます!」
ミナは慌ててもう一度深くお辞儀をした。
そして、3人でソファに座る。
「今日は何の用だ? ミナ」
「はい。実は昨日、神殿長ケルマーン様とお話しいたしまして…」
ミナは、神殿長との話し合いの内容について説明した。
「なんだと? つまり、結婚式の費用がゼロになるということか……!!」
レオストは驚き、シャンドラと顔を見合わせる。
「それはすばらしいわ……!」
シャンドラも目を見開き、大喜びだ。
「うちにはゼビルスだけでなく、これから結婚する娘や息子がたくさんいますもの。費用は少しでも抑えたいわ」
「ああ。……助かったな」
レオストも、ミナの前では正直だ。
「神殿まで味方につけるとは……。なんという賢さだ。よくやった、ミナ!」
「はい。恐れ入ります。
……ですが、国王陛下の許可が必要となりますので、殿下のお力が必要でございます。その件をお願いにまいりました」
「ああ。陛下は反対なさらないであろう。神殿がそうしたいなら、それは何よりだからな。そこは任せておけ」
「で、あの……。もう一つお願いが……」
レオストはフフンと笑う。
「ああ。なんでも申すが良いぞ。金貨60枚が不要となったのだ。そなたに見返りをやるのは当然であろう」
「は、ありがとうございます……。あの……浮いた金貨から、10枚ほどをわたくしにいただきたいのでございます」
「なに? そなたに?」
「はい。わたくしに……」
ミナはちょっと茶目っ気のある目で上目遣いをする。
「ブリア侯ではないのか?」
「はい。わたくしはブリア侯にお世話になっておりますが、何のお礼もできておりません。そこで、わたくしに金貨10枚をいただけましたら、わたくしからブリア侯にお祝いとして差し上げたいのでございます」
「ははん……。理解したぞ……」
レオストはそれ以上言わなかったが、ニタニタとしていた。
実はミナとしては、レオストから金貨をもらうのがブリア侯では体裁が悪いのではないかと懸念した。だが、ミナがもらう分は単なる報酬だ。それをミナが祝い金としてブリア侯に寄付するならば、レオストからの金ではなくなる。
そのための配慮だった。
「そなたはやはり賢いな。良いだろう。そなたに金貨10枚を支払うと約束しよう」
そう言って、レオストはシャンドラを見た。
シャンドラも理解したようで、にこやかに頷いた。
「そうだわ、ミナ。わたくしから、エカーリアに差し上げたいものがあるの。見にいらっしゃいな」
シャンドラに連れられて、さらに奥の部屋に向かう。
そこで見せられたのは、シャンドラがかつて婚儀の時に着ていた衣装である。侍女たちがそれを広げて見せる。
「こ、これは……」
「どう? 素晴らしいでしょう?」
それは、銀糸の織り込まれた豪華な衣装で、胸元にはいくつもの宝石が縫い込まれている。
ミナは息を飲んだ。赤や紫、青のキラキラとした輝きが胸にきらめく。
「なんて美しいのでしょう……」
ぼうっと見とれてしまうほどの輝きだ。
ミナはシャンドラを振り返る。
「これをお召しになった公爵夫人は……どんなにかお美しかったことでしょう……」
うふふ、とシャンドラは微笑む。
「ここまで豪華だと、王族に嫁ぐ以外には着る機会がないわ。だから、エカーリアに差し上げましょう」
「まあ! ……本当でございますか?!」
ミナは大感激だ。
「ええ。少し手直しすれば、着れると思うわ」
「あ、ありがとうございます!! エカーリア様もきっと泣いてお喜びになりますわ!」
シャンドラ自身が衣装をエカーリアに贈るというのは、エカーリアへの愛情にほかならない。それが嬉しかった。
「エカーリアに伝えて。『あなたをお待ちしている』と」
「は、はい! かしこまりました!」
衣装代もかなりの予算を見込んでいた。王族に嫁ぐとなれば、金貨10枚はかかるのが当然で、その分もしっかりと予算の中に入っていた。それも不要になるということだ。
こうして、結婚式代金貨40枚、衣装代10枚。お祝い金としてミナがレオストからいただくお金10枚、ザッカリムから10枚。計金貨70枚の経費を減らせたのだ。
(これならエカーリア様も胸を張って銀月宮に入れる!)
ミナは大興奮とともに、銀月宮を辞した。
* * *
6月23日。
ミナはタンブリーに戻ると、真っ先にアンドリオンに報告する。
「なに?! 結婚式の費用がなくなった?!」
アンドリオンは驚きを隠せない。
「はい。両家共に、でございます。神殿長様はとてもお喜びでございます」
「ま、まさか……」
「さらに、ラッスル公爵夫人シャンドラ様から、エカーリア様に衣装をいただきました。ですから、衣装代も不要になりました」
「なんと……」
アンドリオンはミナの力を良く知ってはいたが、ここまで力があるとは……と、改めて驚愕する。
そして、アンドリオンと共に部屋を移動し、いただいてきた衣装を私室で見ることにする。
「ミナさん! 公爵夫人から衣装をいただいてきたのですって?!」
エカーリアがフィルベラとともに部屋にやってきた。
「はい、エカーリア様。シャンドラ様からの伝言も承ってございます。こうおっしゃいました『あなたをお待ちしています』と」
「まあ!……」
エカーリアは両手で口元を押さえた。思わず涙がにじむ。
フィルベラは侍女を手伝って、立体的に衣装を広げる。
「こ、これはすばらしい……」
アンドリオンもそれを見て、さすがに驚愕する。
それは、王族でなければ縁がない豪華な衣装だ。
「すばらしいわ……!!」
フィルベラも感動だ。
「まるで妖精の女王のような衣装ね……」
エカーリアは嬉しすぎて声も出ない。ただ涙があふれている。
「エカーリア。もう心配いらぬ。ミナは結婚式の費用も神殿持ちにしてきたぞ。ミナに任せておけばよい。そなたはただ結婚式までに心を落ち着けて、マナーや優雅さを磨いておけ」
「は、はい!」
アンドリオンの優しい言葉に、エカーリアは涙を浮かべる。
それから、恐る恐る衣装に近づいていた。
「本当に……ゼビルス様と結婚できるのですね……」
「はい。エカーリア様。神殿長も上機嫌でございます。すばらしい結婚式になりますわ! ご安心くださいませ」
「はい! ミナさん……。ありがとうございます。ミナさんがいなかったら、わたくしは……」
エカーリアは涙をにじませる。侍女のリラが差し出したハンカチで涙を拭くと、エカーリアはアンドリオンを優しく抱きしめた。
「ありがとうございます。お兄様……」
アンドリオンも優しく抱きしめ返す。
「ああ。幸せになるのだぞ」
そして、次にアンドリオンはフィルベラを強く抱きしめた。そして、小さくつぶやく。
「母上……。ご安心ください。母上は私がお守りします……」
それを見て、ミナは幸せな気持ちになる。
(もっと、もっと稼がなきゃ……アンドリオン様のためにも)
もっとお金がなければ、アンドリオンも結婚できないのだ。
ブリア侯の資産が増やせる機会はあまりない。
ミナはまだまだ安心していなかった。
次はいよいよ宝くじの発売! 追われる盗賊たちはそれを見て……
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの長男との結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、ミナの予測よりも経費がかかり、予定していた宝くじの利益が足りない。そこで、宝くじ事業を来年から神殿に渡す代わりに、結婚式の費用をタダにしてもらえることになった。大喜びで、王弟レオストに報告に行くのだった。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
レオスト … 王弟。軍最高司令官。ラッスル公爵。ミナの支援者。40代
ゼビルス … レオストの長男。アンドリオンの妹と結婚予定
エカーリア … ブリア侯の妹で、ゼビルスと婚約中
アンドリオン … ミナが仕える若きブリア侯爵
フィルベラ … アンドリオンの母




