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ミナ、王都に赴き、結婚式の費用を神殿にねぎる……?!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


 この世界の神殿が祀るのは自然神だ。それは、神社に似ている。

 ミナは日本にいたときのことを思いだす。

(神社って、どういうときに利用するかな……)


「う~ん……」

 また、ミナの頭は高速回転を始めた。


 * * *


 6月15日。

 ミナは王都に来ていた。王都フリストルの中央神殿を訪ね、神殿長に面会を求める。


 巨大な神殿の裏側に、神殿の政務部である神庁の執務棟がある。建物の要所には槍を持った神殿儀仗兵が立っている。その衣装は美しく、建物の装飾の一部のようだ。

 ミナは一室に通され、そこで神殿長が現れるのを待っていた。


 2人の文官を引き連れて、神殿長ケルマーンは現れた。

 ミナは立ち上がって深く礼をする。そして、半年前のミナとカイルの結婚式のお礼を述べる。


「ああ、あのときのミナ殿ですね。騎士の身分でありながら、国王と王弟殿下が臨席するという稀な式でしたな…」

 神殿長はゆったりと椅子に座り、微笑んだ。


 白い髭が長く伸びて、とても高貴で清涼な雰囲気だ。この好好爺といった雰囲気の神殿長は、ミナは結構好きである。


「はい。この度はお時間をいただきまして、恐縮でございます。実は、ブリア侯爵家の結婚についてのお話でございます」


「ほう。ブリア侯爵の…ですか」

「はい。王弟レオスト殿下のご嫡男ゼビルス様と、ブリア侯爵の妹君エカーリア様のご結婚の件でございます」


 ミナは、二人の絵姿が書かれた祝祭の告知の板絵を見せる。

「ほう…。これは美しいですな。これがブリア侯の妹君ですか?」

「はい! 大変美しい方で、賢いかたでございます。ゼビルス様にはお似合いのかたかと」

「ほう。これは良いですな」

 ケルマーンは素直にエカーリアの美しさに魅入る。その目が楽しそうに輝いている。


「で、この告知のように、ブリア侯は宝くじをなさる予定なのでございます。いえ、ブリア侯にご提案したのは、わたくしでございますが」

 ブリア侯が世俗的な欲でこれを考えたわけではないぞ、というつもりで、自分が考えたと言っておく。


「ほう……宝くじ……」

「はい。これは、競技会を盛り上げるための工夫でございます。勝者を当てることで、誰もがこの競技会に興味を持つように……と」


 それは建前である。本当はエカーリアの結婚資金なのだが…。


「で、神殿にこれがなんの関係が?」

「はい、そこでございます。わたくしが思いますに、誰もが自分の幸運を願いたいでしょう。そういうときには神殿で祈りたいのではないかと。そして、賽銭箱があれば、そこにお金を投げ込みたいのではないかと」

「さいせんばこ……とは?」

「あ、あの。寄付金箱でございます」

「ああ、なるほど」


 この世界の神殿への寄付金は、神殿備え付けの大皿に置くのが通常だ。


「この宝くじを買うのは、農村、漁村などの者。後は鍛冶屋など、街の周辺の住む者。つまり、神殿からは遠くに住む者たちでございます。

 ですが、彼らは自分の幸運を祈りたいのです。

 もし、彼らの身近なところに「神の印」があり、そこに寄付金箱があれば、皆、そこに来て祈り、そのお礼としてお金を投げ入れるのではないでしょうか」


「ほう……」

 ケルマーンは目を細めた。

「つまり、祈りの気持ちを表せる場所がたくさんあれば、寄付金が集まると…」


 ミナはニッコリする。

「はい。神殿には、民の祈りをできるだけ多く受け止めていただきたいのでございます」

 と、きれいな言葉でまとめる。


「ふむ。おもしろいですな…」

「いかがでございますか? 箱をたくさん作る必要がございますが……。村役場などに置いておけば、役場が管理をしてくれるでしょう」

「ふむ。悪くないですな」


 これは神殿の寄付が増えるということだ。箱を用意するのはお金がかかるが、大した費用ではない。断る必要もない話である。


「で、宝くじですが、当たりは数人で、残りは外れとなります。その外れくじに硬貨を包んで寄付金箱に入れることで、厄払いができるということを謳い、宝くじが終わったあとにも、寄付が募るようにしたく存じます」

「ほう……。それはおもしろい」


 ケルマーンは長い髭を撫でながら、何度も頷く。

「つまり、ミナ殿は……」

 ケルマーンの目がキラリと光る。

「神殿の収入を増やそうとしている……ということですな?」


「はい、神殿長様。わたくしは民衆の祈りが、実質的な価値を生み出せないかと思っておりますの」

 ミナはなんとか美辞麗句でごまかす。


「民が幸せになっても、神殿の窓ガラスが割れていては困りますから」


「うまいことをおっしゃいますな」

 ケルマーンはフフフと笑う。


「で、ミナ殿にはどのような見返りを差し上げれば良いのでしょうか?」

 ケルマーンは微笑みながら言った。

「は、お察しいただき、ありがとうございます。率直に申し上げます。

 わたくしの望みは、ブリア侯の結婚式の費用を少なくしたい、ということでございます」


「なるほど。……理解しましたぞ。ラッスル公爵家とブリア侯は……あれですな。両家は経済的な問題をお持ちということで……」

「は、ご推察、恐れ入ります。……わたくしはブリア侯の行政顧問として、エカーリア様にはなんの曇りもなくお輿入れいただきたいのでございます。そのためのご提案と思し召しくださいませ」


「ふむ。……忠義ですな」

 ケルマーンは笑顔でしばらく宙を見て考えていた。



「ミナ殿。この競技会は来年以降も行いますか?」

「は、はい。まだ開催もしておりませんので、はっきりとは申せませんが、一度成功すれば、毎年開催されるでしょう。これは農民などの技術を持つ者たちを奨励する事業でございます。皆意欲に満ちて仕事に取り組むようにと考えられた産業振興策でございますので」


「ということは、毎年、この寄付金箱をいっぱいにできる、ということですね?」

 ケルマーンはニマリと口角を上げる。


「はい。寄付金はそうなると存じます。

 ……ですが、ブリア侯主催の宝くじは今年限りとなります」

「ほう……。それはもったいない…」

 ケルマーンはまじめな顔をして、目を光らせた。


「では、来年以降は、我が神殿がその宝くじを主催させていただきたい。いかがかな?」

「えっ?!」


 ミナは驚いた。

(神殿長……すごい! まるでバンリオル並みの商人……)

 ミナもそこに気がつかなかった。


「それはすばらしい案でございます! 次回以降も宝くじがあれば、国民全体で技術者を応援することができます! 民は皆喜び、産業は新興することでございましょう」

「ふむ……」


 神殿の運営は寄付金収入が主で、あとは財務庁から神庁に振り分けられる予算でなんとか賄っている。しかし、寄付金は確定しないし、天候次第で減るのだ。それでは計画性がなさすぎる。

 神殿長は常日頃からこれに困っていた。


「毎年宝くじを主催なされば、神殿の収入も安定することでございましょう」

「本当に、我らが来年以降主催して良いのですかな?」


「はい。この度ブリア侯が主催するのは、あくまでも婚約記念ということでございますので、来年の予定はございません。以降を神殿が引き受けてくだされば、これはブリアの名誉となります。

 あとは国王陛下の許可さえあればよいかと」


「ふむ。わかりました……」

 ミナはそこで言うべきことを忘れない。

「その代わりと言ってはなんでございますが、ブリア侯とラッスル公の結婚の費用を……」


 ケルマーンは手を上げて、ミナの言葉を遮った。

「神殿としては、一度の婚礼よりだいぶ価値がありますな」

 そして、一呼吸して、頷く。

「今年は寄付金、そして、それに加えて、来年以降の寄付金と宝くじ収入……。神殿にとってもめでたい話……」

 ケルマーンは大きく微笑む。


「よろしい。婚礼の費用は神殿で負担いたしましょう」

「えっ、本当でございますか?!」

 割引に……と思ったら、無料で良いとは?!


「ミナ殿が『来年以降の宝くじの主催を神殿に』と陛下にお伝えください。そして、その許可をいただければ、両家の結婚の費用は神殿が持ちましょう」


 ミナはパッと顔が明るくなった。

(両家! つまり、殿下の費用もなくなった! これは、殿下からも報酬をいただくチャンス!)

「あ、ありがとうございます!!」

 ミナは立ち上がって、深々とお辞儀をする。


(王都に来たかいがあった……!)


 ミナは心の中で今までで最大級のガッツポーズをした。

 エカーリアの笑顔がミナの頭に浮かんだ。


(そして、…これはレオスト殿下にも朗報だわ!)


 ミナは神殿を辞すと、大喜びで銀月宮へと向かった。


ミナ、当たって砕けろで神殿長と取引完了! しかも、レオストの費用までなくなった。これをミナが見逃すはずもなく……。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、ミナの予測よりも経費がかかり、予定していた宝くじの利益が足りない。そこで、神殿に捧げる結婚式の費用を値切ろうと、ミナは王都の神殿長を訪ねた。


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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

カイル … ミナの夫で、バンリオル商会の工作員

アンドリオン … ミナが仕える若きブリア侯爵

レオスト … 王弟。軍最高司令官。ラッスル公爵。ミナの支援者。40代

バンリオル … この国最大の商会

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