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コブルーに集まる盗賊たち。そして、ミナの金儲け術ははてしなく……

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!



「ひとつの盗賊団になるってこった。もっと大きな獲物が狙えるぞ」

 ヘッヘッっとゴーリは無理やり笑う。

「俺は大きなことを考えている賢い男だぞ」というアピールだ。


「ほう……」

 大男はそのまま黙っている。

「で、船に乗せてほしい……ってこった」

 ゴーリが本音を言った。


「ふん……」

 大男はしばらく腕を組んだまま、ゴーリをにらみつける。その時間がすごく長く感じた。


「この船がどこに行くか、わかってんのか?」

「コブルーだろ?」

「なんでそう思うんだ?」

「コブルーは今、すげえ荷が集まってるって言う。盗賊で船乗りのおめえがそれを知らないはずはないだろ?」


「ほう…。おめえ、頭はいいんだな」

 感心したように、ヒュウと口笛を吹く。


「いいだろう……。乗せてやってもいい。おめえらの仕事はある。……だが」

 大男は言った。

「腰のものを俺らに渡せ。そしたら、乗せてやる」


 ゴーリは「うっ」と身を固くする。


「仲間になるとわかったら、返してやるが、裏切るのがわかったら、その場で首を斬る。それでもいいなら……乗んな」


 そう言って、大男は笑った。


(まあ、まっとうだな……)

 ゴーリはその理屈を理解する。そして、腰の剣を外した。

(とにかく、コブルーに行く。そしたらこいつらとおさらばしてやるぜ……)


 大男はニヤリと笑い、手下たちに剣を回収させた。


「馬はおいてけ。これ以上は乗れんからな。……おめえらだけ、乗っていいぜ」

 後半の言葉で、大男が声色を変えた。緊張を緩め、表情に愛嬌を見せ、まるで子供に言うような調子で軽く手招きする。


(馬鹿にされてんのか……)


 だが、ゴーリはホッとする。頭を下げる儀式もない。

 そして、手下を従えて、板を踏み、船に乗る。


「ようこそ、ドーハイ号へ。俺はオルデン。よろしくな」

 そう言って、ニヤリと笑った。


 ゴーリはこれが娑婆の最後になるとは思ってもいなかった。



(これで、4組目……)


 ドーハイ号の船長であり、「盗賊の首領オルデン」のジオルダンは、同じ手ですでに3組の盗賊団を捕獲していた。


(まだまだ、いくらでも捕獲してやるぜぇ……)


 * * *


 サイフラーが着いた頃には、船の小さな影が見えただけだった。桟橋のそばで馬が置き去りにされている。


(いったい何があったんだ……)


 馬が残って、ファラフがいないということは……。

(みんなあの船に乗っちまったってことか?)


 サイフラーの頭は、焦りでチリチリしていた。



 * * *


 6月5日。

 レオストは西から北の領地を回って、盗賊どもを掃討した。

 ある程度の成果が出たので、後は将軍に任せて、回収した財宝と共に部下と王都へと戻っていく。


 馬の背に揺られながら、彼は考えていた。


(なぜもっと早く、盗賊を掃討することを考えなかったのか……?)


 それは不思議なくらい当然の疑問だ。


 自分が今まで、あまりにも当たり前に「盗賊の存在は仕方がないもの」と思っていたことに気づいた。森には獣がいるように、盗賊もいる。そのような認識だったのだ。


 だから、王国軍が出るほどのことではないと今まで思っていた。

 実際、ミナに言われるまで、掃討戦を考えたことがなかった。


(カイルが言っていたな。ミナには普通の常識がないと…)

 フフッと笑う。

「女が街道を一人で歩く危険を知らなかったり…」

 カイルの言葉を思い出す。


(それは馬鹿なのかと思えるが……)

 レオストはまじめな顔になった。

(ミナにはどうやら、盗賊の存在が理解できなかったとみえる……)



 レオストは「あの日」の事件以来、評判と信頼を落としている。

 だが、街道商会や護送団の件では、商人たちの支持を得た。

 しかし、それはまだミナの功績であって、自分は目立った動きをしていない。


 この盗賊討伐はレオスト自身が軍を動かす。

 成功すればかなり大きな手柄となり、レオストの評判を高めるだろう。名誉がかなり回復するのだ。


 それはゼビルスの結婚だけではなく、ラッスル公爵家全体に利益がある。

 あの事件で婚約が解消となったレオストの子は、ゼビルスだけではなかった。まだ結婚を控えている息子、娘がいる。


 自分の名誉が回復すれば、妻がどんなに喜ぶだろうか……。


(ミナはエカーリアのために頑張っているのだろうが……私にも大いに役立ってくれている……)


 ――レオストは気分よく帰路を楽しんだ。



第156話 神殿長との取引



 6月9日。

「アンドリオン様、こちらの経費ですが…」

 タンブリーのブリア城のアンドリオンの執務室で、ミナは結婚式の経費の資料を指さす。

 それは王都の神殿への献金だ。実質、結婚式の費用である。それは金貨40枚だ。


「結婚式の費用というのは、ラッスル公爵家からは出ないのですか?」

「いや、出るが、それは6:4の比率で分けたもので、我らの分が4割で、その金額なのだ」

「ええ~?!……」

 あまりの費用の高さに驚愕する。

(これで半分以下……)


「ま、神殿にしてみれば、公爵家級の結婚式でなければ大金は入ってこないからな」

「なるほど……」


 大金がまとまって入ってきたら、そこでため込んでいた補修案件に取り掛かる、というような様子らしい。神殿も苦しいのだ。


(これをなんとかできないかしら……)

 と宙をにらんで考えていると……。


「ミナ。神殿を怒らせると困ったことになるぞ。だから、それはこれ以上削れぬ。公爵家も我が家と同じく苦しい。だから、これ以上負担してもらうことも無理だ」

「は、はい……」


 考えていることを見抜かれて、ミナはがっくりする。

(なんとかできないかな……)


 今のところ、宝くじと最後の祝福の投げ銭だけが領主の利益だ。しかし、その利益は、売り上げ予測でどう頑張っても金貨200枚の利益にしかならないことが判明した。祝儀だから還元率を下げても、販売経費がかなり掛かるのだ。

(ぐぐぐ……。失敗だわ。私の計算、甘かった……)


 まだ販売していないから、どれだけ宝くじが売れるかは未知数だ。1人で10ポル買う者もいるかもしれないが、全然買う人がいない、ということも考えられる。だから、あらゆる手を打っておかないと心配だ。


(婚約記念行事をしたのに、お金が集まりませんでした、では困る。この手は二度と使えないのだから……)

 大きい費用は、結婚式の神殿への献金。それに地元の村や町に配る祝儀、つまり酒代だ。この2つを何とかすれば、乗り越えられるのだ。


(酒代を削るのは……難しい…)

 これは数が多すぎる。

 だが、酒代は祝祭が終わってから考えても十分間に合う。あとで考えればいい。


「ミナ。……金が足りないのか?」

 アンドリオンが不安そうな顔をしてミナをみつめる。


 領主としては、情けないことだろう。彼はお金がなくて妹が結婚できないなどというみじめな思いをするように生まれ育っていないのだ。

 父親の起こした突然の事件で、アンドリオンはお金の苦労を背負い込んでしまった。

 そのことを思うと、ミナは胸が痛む。


 ミナは以前、居並ぶ王都の官僚たちに言われた言葉を思い出す。

「ブリアは金がなくて大変だということですから……」


 ミナはあのときは、領地のことを言っているのかと思っていたが、領地だけではなかったのだ。ブリア侯爵の資産そのものがないのだ。それを薄々まわりに知られている。これはみじめだろう。


 そんなアンドリオンの顔を見ると、ミナは奮い立つ。

「お、お任せください! アンドリオン様! 絶対にお金を作ってご覧に入れます! エカーリア様には、何の曇りもない状態でお輿入れいただきます!!」


 アンドリオンはその勢いにクスッと笑った。

「ミナ、無理するなよ」

「いいえ。……無理でもなんでもいたします! 今こそ稼がねば……!!」


 虚勢のような返事をしながら、ミナはロボットのようにギクシャクと、部屋を出て行った。


 自分の執務室に戻って、椅子に座り、ふうっとため息をつく。

 アンドリオンの不安げな顔を見ると、自分の胸が苦しくなる。

(あんなつらそうな顔、させちゃいけない……)

 そして、再びガッツポーズをする。


(絶対になんとかしてみせる……!)

 そう思って、大きく息を吐き、気分を変えた。


(絶対になんとかする! 絶対に……)

 これはミナが決意を高めるときに、いつも繰り返す言葉だ。

(さあ、頭を使うのよ、ミナ。どうしたらいい?)


レンダの工作通り、逃げる盗賊たちはなんとかコブルーにたどり着こうとする……。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、星の評価をつけて応援してくだると嬉しいです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、金儲けだけではなく、その裏では、国防担当の王弟レオストの盗賊討伐作戦が始められていた。王国軍の攻撃で各地の盗賊団は次々と逃げだし、コブルーを目指して動いていく。追い詰められた盗賊団ファラフの頭領ゴーリは別の盗賊団をみつけ、川を渡るために、一つにまとまることを提案する。


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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

レオスト … 王弟。軍最高司令官。ラッスル公爵。ミナの支援者。40代

カイル … ミナの夫で、バンリオル商会の工作員。偽名はレンダ

ゴーリ … 盗賊団ファラフの頭領

大男 … 実はトガリア商会の私兵で工作員のジオルダン。偽名はオルデン

サイフラー … 盗賊団ジャーガの頭領

ゼビルス … レオストの長男。ブリア侯爵妹エカーリアと婚約中

アンドリオン … ミナが仕える若きブリア侯爵


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