盗賊どもを操るレンダ。そして船がやってくる
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
「おめえ……。なんでそんなこと、知ってやがる?」
サイフラーはレンダをにらみながら尋ねる。
「俺は冒険者だぜ? 危ない仕事専門だ。魔物を狩れないチンケな同業者どもが何をやって稼いでいるか、知ってるさ」
「……」
レンダの言葉は何から何までもっともだった。
「ちくしょう……。俺らは金がねえんだよ!」
「俺に怒っても知らんがな。少なくとも、お前ら、バラバラに行動してないでまとまったらどうだ? 兵に勝つなら、少なくとも100人単位でまとまらなきゃ、勝てんだろ?」
「まとまる?」
「ああ。どうせ逃げて来る盗賊団は他にもいるだろ? バラバラじゃ、そのうちみんなやられちまうぞ。人数がいりゃ、兵にも勝てるだろ」
「……業者はどこにいるんだ?」
サイフラーは大人しくなった。
「まったく。俺、タダで教えてやってんだぜ? 肉もタダでやったろ? 俺はお前のおふくろじゃねえぞ。そんくらい、自分で調べろ」
(お、おふくろ……?)
サイフラーは頭がサーッと真っ白になり、言葉が止まる。
レンダは立ち上がり、ソリを担ぎ、剣を差す。
「ああ~。俺は親切すぎるな。お前らにできるかは知らんがな。……じゃあな。幸運を祈るぜ」
後ろに向けてひらひらと手を振りながら、街道へ戻っていった。
(お、おふくろ……? なんで俺は、あいつに怒られると、おふくろに叱られた気分になってるんだ?)
サイフラーは腕を組む。
(肉をもらったからか……?)
だが、それだけではない気がした。
あの男には、なぜか上に立てない。
サイフラーには、その理由がわからなかった。
* * *
レンダならぬカイルは、そりを引いて街道に戻る。
今回の情報操作の目的は、盗賊どもをできるだけ束にすることだ。
生き延びたバラバラな人数を少しでもまとめれば、それだけ作戦の効率がいい。
プラウ側の西で、盗賊たちができるだけまとまるように仕向けるのが、カイルに与えられた任務だった。
(ま、うまくいっただろう……)
カイルは次の盗賊団の場所へと向かっていった。
第155話 船を持つ盗賊団
6月4日。
サイフラーはレンダの言葉をかみしめる。
「まとまれ」
しかし、それは非常に難しい。
2つの盗賊団がまとまるというのは、どちらかがどちらかの手下になる、ということだ。
どちらの盗賊団の頭領が上になるかは、力で勝負、というのが盗賊団のやり方だ。
だが、その勝負で自分が死にでもしたら、本末転倒だ。よくて怪我。無傷で勝つことはありえない。根城を持たない今、怪我でもしたら、それは死と同じだ。
つまり、「まとまる」には、自分が折れるしかないのだ。
(いまさら俺が、他の男を「おかしら」って呼べるかよ……)
これが最大の関門だ。
(ちぃ……)
自分の傲慢さがじゃまになっているはわかるが、どうしても頭を下げるのは嫌だ。
だったら死んだ方がマシだ、とすら思えてくる。
ブリアに渡ってしまえば、さっさと別れればいい。
そうは思うが、自分が一瞬でも頭を下げるのは、手下の手前、絶対にできなかった。
(ちくしょう……)
「お前らはもう詰んでんだよ」
レンダの言葉がまた浮かぶ。
(うう……。万事休す……)
「おかしら! 東から商隊がやってきます! ブリアから来たようです。やりますか?!」
「馬鹿! 馬もねえのに、襲えるか!」
手下も焦っているのがわかる。
馬があったとしても、ここで荷を奪っても捌けないのがわかっている。
コブルーに行って荷を襲い、それを港の異国の商人に売る。
あるいは直接、金貨を奪う。
この2つしか選択肢がないということが、サイフラーの悪い頭にもわかってきた。
なのに、身体が勝手に商隊を襲おうとするのだ。襲って荷を奪って、ワハハと酒盛りをするのが長年の習性だ。
(それができねえって……まだわかってねえんだよ!)
現状に頭が追い付いていないのが自分でもわかる。
「あっ、おかしら! あれを!」
林の木陰から街道を覗くと、商隊を襲う輩がいる。
「ワハハハハ!!」
(なんだ、あれは?!)
ドドドドという音と共に、10人くらいの盗賊団が、馬で西から商隊を狙っている。そして、商隊を護衛していた6人の護衛たちは、あっという間に、東の方に逃げて行った。
「兵士を呼びに行きやがったな」
ここは橋に近い。兵士が来るのも時間の問題だ。
サイフラーはどうなるか、街道に身を乗り出して、見ていた。
しかし、なんと盗賊団は、荷車を持って東に向かう。
「し、信じられん。なんであいつらは東に行くんだ?」
東に荷馬車を持っていくのは、捕まりに行くようなものだ。意味がわからなかった。
「あ、おかしら!」
手下が西を指さす。
ドドドドという馬の走る音が聞こえ、別の盗賊団が荷を追っている。
「あ、あれは……」
サイフラーはその頭領の頭の赤い頭巾に見覚えがあった。
「あれは……ファラフ団じゃないすか?」
手下も同じことを気づいたらしい。
水辺で会ったやつらだ。
やつらはどこかで馬を手に入れたようだ。
「ふん…。やつらもこっちに来ていたか…」
それはサイフラーが企んだことだったが、やつらもこの橋を越えられるとは思えなかった。
だが、先に荷を盗んだ賊がどうやって橋を渡るのか気になる。東に向かったのは、採算があるからだろう。
「おい、おめえら。奴らを追うぞ!」
サイフラーの一団は2つの盗賊団を追う。
とはいえ、彼らは徒歩なのでとても追いつかない。
すると、2つの盗賊団は橋に着く前に、南へと向かう細い分かれ道に入っていった。
「なんでやつらは南に行くんだ?」
いったい何がどうなっているんだか知りたくてたまらない。この道は一本道のようだ。
ずっと歩いていけば、この先に何があるのかわかるだろう。
* * *
ファラフ団は荷に追いつく。彼らが見たのは、先に荷を奪った盗賊団が、荷馬車の荷を、せっせと船に運んでいるところだった。5人くらいの男たちが馬を降りて陸にいる。残りはすでに船の上だ。
ファラフは9人。ほぼ同じ人数だ。勝てないとは思えない。だが……。
(こいつら、船を持ってやがる……)
ゴーリは思わず荷を奪おうと走り出したが、これは単なる習性だ。追い詰められて、もともとちっぽけな理性が、ほぼゼロになっているだけだ。荷を奪っても橋を渡れないことはわかっている。
だが、船があれば、向こうに渡れる。
逡巡していると、やつらが音に気づいて身構えた。
「おめえら、何者だ?!」
陸上の男たちがすらりと剣を抜き、ファラフを警戒する。
「おっ…、ま、待ってくれ! 話がしたいだけだ」
手下を止め、1人でゆっくりと馬を進めて近づき、ゴーリは馬を降りた。
「なに?! 話がしてえだと?! おめえらも盗賊だろ」
船から大きな男が出てきた。
ぬうっと出てきたその男は、巨体で、両腕に刺青がある。腕組みをして立っている。
「ああ、俺らは盗賊だ。おめえらも盗賊だろ?」
「それがどうした?!」
「俺らと……一緒に稼がねえか……?」
「はん?! 一緒に稼ぐ? どういうこった。意味がわかんねえ」
「つまり……」
ゴーリはゴクリと唾を飲み込む。
入れ墨のある大男……あの男か?!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、金儲けだけではなく、その裏では、国防担当の王弟レオストの盗賊討伐作戦が始められていた。王国軍の攻撃で各地の盗賊団は次々と逃げだし、コブルーを目指して動いていく。追い詰められた盗賊サイフラーは、冒険者レンダにブリアに渡るための方法を尋ねたのだが……。
------------------------------------------------
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
レオスト … 王弟。軍最高司令官。ミナの支援者。40代
レンダ … カイルの偽名。ミナの夫で、バンリオル商会の諜報員。この作戦に参加している。24歳
------------------------------------------------
別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!
クリスタル・ハート・カフェ
https://ncode.syosetu.com/n1866mp/




