↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
192/241

盗賊どもを操るレンダ。そして船がやってくる

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


「おめえ……。なんでそんなこと、知ってやがる?」

 サイフラーはレンダをにらみながら尋ねる。


「俺は冒険者だぜ? 危ない仕事専門だ。魔物を狩れないチンケな同業者どもが何をやって稼いでいるか、知ってるさ」

「……」

 レンダの言葉は何から何までもっともだった。


「ちくしょう……。俺らは金がねえんだよ!」

「俺に怒っても知らんがな。少なくとも、お前ら、バラバラに行動してないでまとまったらどうだ? 兵に勝つなら、少なくとも100人単位でまとまらなきゃ、勝てんだろ?」


「まとまる?」


「ああ。どうせ逃げて来る盗賊団は他にもいるだろ? バラバラじゃ、そのうちみんなやられちまうぞ。人数がいりゃ、兵にも勝てるだろ」


「……業者はどこにいるんだ?」

 サイフラーは大人しくなった。


「まったく。俺、タダで教えてやってんだぜ? 肉もタダでやったろ? 俺はお前のおふくろじゃねえぞ。そんくらい、自分で調べろ」


(お、おふくろ……?)

 サイフラーは頭がサーッと真っ白になり、言葉が止まる。


 レンダは立ち上がり、ソリを担ぎ、剣を差す。

「ああ~。俺は親切すぎるな。お前らにできるかは知らんがな。……じゃあな。幸運を祈るぜ」

 後ろに向けてひらひらと手を振りながら、街道へ戻っていった。


(お、おふくろ……? なんで俺は、あいつに怒られると、おふくろに叱られた気分になってるんだ?)

 サイフラーは腕を組む。

(肉をもらったからか……?)


 だが、それだけではない気がした。

 あの男には、なぜか上に立てない。


 サイフラーには、その理由がわからなかった。


 * * *


 レンダならぬカイルは、そりを引いて街道に戻る。

 今回の情報操作の目的は、盗賊どもをできるだけ束にすることだ。

 生き延びたバラバラな人数を少しでもまとめれば、それだけ作戦の効率がいい。


 プラウ側の西で、盗賊たちができるだけまとまるように仕向けるのが、カイルに与えられた任務だった。


(ま、うまくいっただろう……)


 カイルは次の盗賊団の場所へと向かっていった。



第155話 船を持つ盗賊団



 6月4日。

 サイフラーはレンダの言葉をかみしめる。

「まとまれ」


 しかし、それは非常に難しい。


 2つの盗賊団がまとまるというのは、どちらかがどちらかの手下になる、ということだ。

 どちらの盗賊団の頭領が上になるかは、力で勝負、というのが盗賊団のやり方だ。


 だが、その勝負で自分が死にでもしたら、本末転倒だ。よくて怪我。無傷で勝つことはありえない。根城を持たない今、怪我でもしたら、それは死と同じだ。


 つまり、「まとまる」には、自分が折れるしかないのだ。


(いまさら俺が、他の男を「おかしら」って呼べるかよ……)

 これが最大の関門だ。


(ちぃ……)

 自分の傲慢さがじゃまになっているはわかるが、どうしても頭を下げるのは嫌だ。

 だったら死んだ方がマシだ、とすら思えてくる。

 ブリアに渡ってしまえば、さっさと別れればいい。

 そうは思うが、自分が一瞬でも頭を下げるのは、手下の手前、絶対にできなかった。


(ちくしょう……)


「お前らはもう詰んでんだよ」

 レンダの言葉がまた浮かぶ。

(うう……。万事休す……)



「おかしら! 東から商隊がやってきます! ブリアから来たようです。やりますか?!」

「馬鹿! 馬もねえのに、襲えるか!」


 手下も焦っているのがわかる。

 馬があったとしても、ここで荷を奪っても捌(さば)けないのがわかっている。


 コブルーに行って荷を襲い、それを港の異国の商人に売る。

 あるいは直接、金貨を奪う。


 この2つしか選択肢がないということが、サイフラーの悪い頭にもわかってきた。


 なのに、身体が勝手に商隊を襲おうとするのだ。襲って荷を奪って、ワハハと酒盛りをするのが長年の習性だ。


(それができねえって……まだわかってねえんだよ!)

 現状に頭が追い付いていないのが自分でもわかる。


「あっ、おかしら! あれを!」


 林の木陰から街道を覗くと、商隊を襲う輩がいる。


「ワハハハハ!!」


(なんだ、あれは?!)

 ドドドドという音と共に、10人くらいの盗賊団が、馬で西から商隊を狙っている。そして、商隊を護衛していた6人の護衛たちは、あっという間に、東の方に逃げて行った。

「兵士を呼びに行きやがったな」

 ここは橋に近い。兵士が来るのも時間の問題だ。


 サイフラーはどうなるか、街道に身を乗り出して、見ていた。

 しかし、なんと盗賊団は、荷車を持って東に向かう。

「し、信じられん。なんであいつらは東に行くんだ?」


 東に荷馬車を持っていくのは、捕まりに行くようなものだ。意味がわからなかった。


「あ、おかしら!」

 手下が西を指さす。

 ドドドドという馬の走る音が聞こえ、別の盗賊団が荷を追っている。


「あ、あれは……」

 サイフラーはその頭領の頭の赤い頭巾に見覚えがあった。

「あれは……ファラフ団じゃないすか?」

 手下も同じことを気づいたらしい。

 水辺で会ったやつらだ。


 やつらはどこかで馬を手に入れたようだ。

「ふん…。やつらもこっちに来ていたか…」


 それはサイフラーが企んだことだったが、やつらもこの橋を越えられるとは思えなかった。

 だが、先に荷を盗んだ賊がどうやって橋を渡るのか気になる。東に向かったのは、採算があるからだろう。


「おい、おめえら。奴らを追うぞ!」

 サイフラーの一団は2つの盗賊団を追う。

 とはいえ、彼らは徒歩なのでとても追いつかない。

 すると、2つの盗賊団は橋に着く前に、南へと向かう細い分かれ道に入っていった。


「なんでやつらは南に行くんだ?」

 いったい何がどうなっているんだか知りたくてたまらない。この道は一本道のようだ。

 ずっと歩いていけば、この先に何があるのかわかるだろう。


 * * *


 ファラフ団は荷に追いつく。彼らが見たのは、先に荷を奪った盗賊団が、荷馬車の荷を、せっせと船に運んでいるところだった。5人くらいの男たちが馬を降りて陸にいる。残りはすでに船の上だ。


 ファラフは9人。ほぼ同じ人数だ。勝てないとは思えない。だが……。

(こいつら、船を持ってやがる……)


 ゴーリは思わず荷を奪おうと走り出したが、これは単なる習性だ。追い詰められて、もともとちっぽけな理性が、ほぼゼロになっているだけだ。荷を奪っても橋を渡れないことはわかっている。

 だが、船があれば、向こうに渡れる。


 逡巡していると、やつらが音に気づいて身構えた。

「おめえら、何者だ?!」

 陸上の男たちがすらりと剣を抜き、ファラフを警戒する。


「おっ…、ま、待ってくれ! 話がしたいだけだ」

 手下を止め、1人でゆっくりと馬を進めて近づき、ゴーリは馬を降りた。


「なに?! 話がしてえだと?! おめえらも盗賊だろ」

 船から大きな男が出てきた。

 ぬうっと出てきたその男は、巨体で、両腕に刺青がある。腕組みをして立っている。


「ああ、俺らは盗賊だ。おめえらも盗賊だろ?」

「それがどうした?!」

「俺らと……一緒に稼がねえか……?」


「はん?! 一緒に稼ぐ? どういうこった。意味がわかんねえ」

「つまり……」

 ゴーリはゴクリと唾を飲み込む。


入れ墨のある大男……あの男か?!


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、金儲けだけではなく、その裏では、国防担当の王弟レオストの盗賊討伐作戦が始められていた。王国軍の攻撃で各地の盗賊団は次々と逃げだし、コブルーを目指して動いていく。追い詰められた盗賊サイフラーは、冒険者レンダにブリアに渡るための方法を尋ねたのだが……。


------------------------------------------------

用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

レオスト … 王弟。軍最高司令官。ミナの支援者。40代

レンダ … カイルの偽名。ミナの夫で、バンリオル商会の諜報員。この作戦に参加している。24歳

------------------------------------------------

別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

https://ncode.syosetu.com/n1866mp/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=828069169&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。