↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
190/245

王弟レオスト、盗賊を追い詰め、コブルーへと追い立てる

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!


第153話 盗賊たちと酒


 その頃、王都。

 バンリオル商会では、祝祭の見本市に出品する高級品の目録が着々と作られていた。


「南方産の薬草茶葉」

「最高級の絵付け絹」

「金細工の胸飾り」

「スリマラビヤ産宝石の指輪」


 それらは商人たちの間で、あえて大げさに噂された。

「俺は見本市の目録を見たぞ! 今年開催されるコブルー見本市はすげえらしい」

「聞いたか? 王族の婚約披露もあるそうだ」

「金貨が山のように動くらしいぞ」


 その噂は酒場へ流れ、酒場でも盛んに噂される。

「聞いたか? 商人たちの一世一代の大騒動だとよ」

「何だ、それは?」

「すげえ商品の集まる見本市だとよ」


「すげえ商品……。何だ、そりゃ?」

「知らん。とにかくすげえらしい」

「何だよ、それ……」

「見るのはタダだぞ。誰でも見られるんだとよ」

「ほんとか?!」


 噂は旅人へ流れ、街道を渡り、やがて森の中へも届いた。


 * * *


 5月10日。 

 各領地から伸びる東西の街道がある。それは、王都につながる王都線街道ほどは広くない。そして、ここにはまだ護送団はないのだ。

 商人たちはそれぞれに護衛を雇い、自力で守らなければならない。


 商人は朝早く、市場の端にある天幕の下に座っている元締めのところに行き、そこで護衛の斡旋を依頼するのだ。


 サンダラン領の城下町の元締めの天幕のそばで、1人の男が浮浪者のように壁際に座り込み、眠っているフリで聞き耳を立てている。それはこの領地の盗賊団ガラの手下の情報屋だ。

 男は情報を仕入れて、街を走りぬけ、城門を抜ける。


 情報屋は検問を出たところに潜む、馬に乗った伝令に伝える。

「今日は、コブルーに向けて荷馬車が出るぞ! 護衛は6人。東街道だ!」

「おし、わかった!」


 盗賊が増えた昨今、めっきり荷馬車が減った。食料以外の急がない荷は動いていないのだ。6人の護衛ならば、かなりの価値のある荷のはずだ。コブルーの見本市用かもしれない。

 伝令は馬を全速力で走らせていった。


 * * *


 荷馬車は東街道を領地の境界近くまで進んだところで、先の見通しの悪い緩やかな上り坂の下で、上からいきなり降りてきた盗賊団ガラに襲われる。


「てめえら! その荷を置いていきやがれ~!!」

 頭領が鬼の形相で馬の上から剣を振り上げる。盗賊の数はおよそ20強。

 こちらは護衛6人だ。とても敵わない。


 馬がいななき、御者が逃げ出す。

 護衛もさすがに20人は相手にできない。


「く、くそ~!! 全員、退避だ~!! 保険はかけてある。無理するな~!!」

 馬に乗った護衛たちは、御者を乗せて反対方向に駆けていく。


 それを見た盗賊たちは勝ち誇って、大笑いだ。

「ワハハハ! ご苦労さん! ここまで持ってきてくれて、ありがとよ」

 そう言って、意気揚々と荷馬車を引いて、根城に戻っていく。



 頭領は荷を開けた。

「おい、見ろよ!」

「なんだ、この荷は……?」

「おお~? すげえ! なんてきれいな布だ……。こんなの見たこともねえ」

 それは、大量の鮮やかな染め物の布だ。貴族が身に着けるような高級品だ。


「あ、おかしら! 酒樽がありますよ!」

「祝祭用だろ。よし、とりあえず、金は手に入ったも同然だ。祝杯と行こうじゃねえか」

「へ、へい!」


 勝利に浮かれた盗賊たちは、見張りを二人だけ残して酒盛りを始めた。

 そのうちに、少し離れた場所に立っている見張りの男まで酒をあおり始めた。



 盗賊団が酒を飲んで寝静まったころ、兵が続々と集まり、彼らを取り囲んだ。

 気配に気づいた見張りがハッと目を覚ます。


「ていへんだ!! おかしら~!!」

 慌てて小屋に知らせに行く。

「なんでい!」

 飛び起きた頭領が扉の外を見ると、たいまつがいくつもいくつも並んでいる。

「ありゃ……」

 声に出す前に、いきなり矢が飛んでくる。


 ――ガガガガ!!!


「うわ~?!」

 全員が慌てて飛び起きる。小屋の壁が矢襖だ。扉を閉めて窓から見ると、大量の兵に囲まれていた。


「武器を捨てよ! お前たちは完全に包囲されている。抵抗するなら、小屋ごと燃やすぞ!」


「お、おかしら…」

 手下どもはあっという間に酔いを醒まして青ざめる。

 頭領は音を立てて歯ぎしりをしたが、もう遅かった。


「ちっ……。罠……だったか……」



 * * *



 軍の天幕の中で、王弟レオストはどっしりと座っていた。


 まずは山狩りで根城を直接襲う。

 それから、囮の荷馬車を使っておびき出し、根城をみつける。これが疑似餌(ぎじえ)作戦だ。高価な布も、染めに失敗したり、織りに雑なところがある三流品だ。

(ふむ……)


 これで盗賊たちを根城から追い出すのだ。そして、根城を潰し、財宝を没収する。

 かなりの財宝が回収でき、これは王国のものとなる。

 これだけでもレオストの手柄となる。


 ――だが、財宝が目的ではない。掃討戦なのだ。


「殿下」

 伝令がレオストに跪く。周りには3人の将軍が居並ぶ。


「予定どおりです。ルールズに続いて、ポムリール、サンダランの盗賊どもも少しずつコブルー方面へ動き始めました」

 伝令は台の上に置かれた地図の上の番号のついた黒い石をいくつか動かす。


 レオストは静かに頷く。

「よし」


 レオストは伝令や工作員をあちこちに派遣していた。

 ルールズでサイフラーにコブルー記念祝祭の情報をもたらしたカイルとフライアのまわりにも、兵士や伝令が潜んでいたのだ。

 そういう工作グループはあちこちにばらまかれ、盗賊たちにコブルーに集まろうと思わせる操作をしていた。


(次の作戦は……)


 レオストは地図を見つめたまま言う。


「酒樽作戦を始めよ」

「はっ」

 部下がさっと部屋を出て行く。


* * *


 5月18日。

 サイフラー率いる盗賊団、ジャーガ団はサンダランまでたどり着いていた。

 途中、ルールズの隣のポムリール領内の他の盗賊団の隠れ家をみつけ、そこを奪おうと盗賊同士の戦いとなったが、仲間を3人失って逃げ出した。今や13人だ。こっちも向こうを4人殺したが、勝ち目はなかった。


(盗賊を襲って根城を横取りするのはやめた方がいいな……)

 留守を守る人数にも対応できないくらい、こっちの人数が減ってしまった。


 仕方なく、夜に畑に入り込み、そこで食べ物を盗みながら進んでいた。村には金貨はないから、食べ物くらいしか得られない。剣を振り回して立ち回りをする必要もなかった。

 だが、これだけでは酒が得られない。盗賊のエネルギー源と言える酒をなんとか手に入れたいと思った。


 しかし、逃亡して2週間経つと状況が変わった。


 なぜか最近は、村々の一番大きな家の軒の下に台が置かれ、張り紙とともに小さな酒樽が置いてあるのだ。文字は読めないが、その下には花や果物があることがある。何かの祈りのためだろう。

 酒樽を盗賊が見逃すはずもなく、村でそれをみつけると、必ず奪って去っていった。



 それから、ジャーガ団の残党はサンダラン領の奥地の山の中を歩く。

 水の流れる音をたどって湧水まで来ると、ハッと身構えた。

 別の盗賊団が水を飲んでいたからだ。

 向こうもジャーガ団を見つけると、バッと立ち上がって、剣を構える。その数9人。


(こっちのほうが人数が多い……)

 それを確認すると、両手を上げて、戦いの意志がないことを示す。


「おう……。じゃまするぜ。水を飲むだけだ」

 そう言って、水辺に近づくと、やつらは少し下がって固まった。


 やつらも根城を失ったのだろう。水場は獣たちも争わず水を飲む。盗賊も黙って水場を空けた。


「おめえら、どっから来た?」

 先にいた盗賊がにらみつけるような目で尋ねる。


「俺らはルールズから逃げてきた」

 水を飲み終わって、サイフラーが口を袖で拭う。

「俺はジャーガ団のサイフラーだ。おめえらは?」


「俺はファラフ団のゴーリ。ポムリールから逃げてきた……」

 ファラフは皆、頭に赤い布を巻いていた。


「王国軍にやられたのか?」

「ああ、そうだ……」

 ゴーリは面倒くさそうに答える。


「王都線の街道に護送団がやってくるわ、王国軍がやってくるわ。どうなってんだ?」

 ゴーリが尋ねる。彼はまだ根城を失ったばかりだ。

「知らん。そもそもは隣国の盗賊団がこっちに逃げてきたから、王国軍が出てきたって話だが……」


 そもそも盗賊相手に王国軍が出て来ることは今までなかった。

 領兵は領地内だけだから、万一襲われても、他領に逃げ込めば逃げられたのだ。もうその安心感がなくなった。


「ふうん……」

 しばらくふたりとも黙っていた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。

この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの嫡男ゼビルスの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、金儲けだけではなく、その裏では、国防担当の王弟レオストの盗賊討伐作戦が始められていた。王国軍の攻撃で各地の盗賊団は次々と逃げだし、コブルーを目指して動いていく……。

------------------------------------------------

用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

バンリオル商会 …… 盗賊討伐戦、コブルー祝祭に参加している五大商会のひとつ。

レオスト … 王弟。軍最高司令官。ミナの支援者。40代

サイフラー … ルールズ領内にいた盗賊。西に逃げているところ

カイルとフライア … バンリオル商会の諜報員で盗賊掃討戦に参加中 

------------------------------------------------

別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

https://ncode.syosetu.com/n1866mp/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=828069169&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。