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ミナ、一生で最大にがめつくなるとき!

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!



第152話 祝祭準備で大騒動



 少し戻って5月1日。

 今日はコブルーの実際の開港2周年記念日である。この日の行事は行われないが、記念日であるため、ミナはコブルーに来ていた。

 祝祭の告知をしてから1カ月経った。本番まであと5か月だ。


 コブルー港湾局の並びにある建物に、「祝祭準備委員会」の事務所が設置されている。

 今日は、ミナはここに呼ばれて、進捗状況を聞くことになっていた。


 全体をつかさどるバンリオル商会からは、次期大番頭候補のカルジャンが派遣されている。バンリオル商会のナンバー3の大物だ。

 それだけ、この事業が重要だということを示している。


 カルジャンとその部下たちは、連日、上を下への大騒動だ。


「倉庫が足りないぞ!」

「おいおい! 宿の予約がどんどん来るぞ。まだ完成していない宿ももうかなり埋まってしまった。大丈夫なのか?」

「馬車だまりは足りるのか?」


 ミナがやってくると、部下たちが押し寄せる。

「ミナさん、倉庫の足りない分、なんとかなりませんか?」


 実は、盗賊退治のための囮倉庫を数か所確保しているので、その分、倉庫が少なくなっている。


「ええと…。港湾局と、この祝祭事務所の空き部屋を解放いたしましょう。あとは、トガリアの宿には倉庫にできる部分があるはずでございます。そこを当たってくださいませ」

「は、かしこまりました!」


「宿はいかがいたしましょう?」

「宿は…。高級宿はこれ以上増やせませんが、一般の商人の方々には、少しランクを落としていただき、港の一般宿に泊まっていただきましょう。そして、7日間、借りることができる商船を当たり、人夫たちはそこに泊ってもらってください」

「は、かしこまりました」


「当日、埠頭(ふとう)がいっぱいになるかもしれません。それは…」

「荷物は数日前に降ろしているはずですので、当日は、船は沖待ちしていただきます」

「は、かしこまりました」


 そこへ、カルジャンの部下が資料を持ってくる。

「ミナさん。大変でございます! 見本市出展の申し込みは締め切りましたが……」

 部下は額に皺(しわ)を寄せる。


「なにか、問題でも?」

 ミナは心配になる。

(申し込みがない……とか?!)


「申し込みが3倍で……。会場がまったく足りません」

「えっ?!」

 まさか、多すぎて悩むとは思いもしなかった。


「仕方がないので、抽選にして、あぶれた者は断ることにいたします」

 と部下が言う。

「えっ?!」

 (な、なんてもったいない……)


 ミナは立ち上がる。

「ちょっと待ってください」

 そして、告知の資料をよく読み返す。


(う~ん。少し出展料が安過ぎたのかしら…)

 そこには、区画の大きさと出展料が書いてある。


 それから、壁に貼られたコブルーの地図を見る。

(う~ん……)

 じ~っと考え込むその姿を見て、まわりは「諦めが悪い」という顔だ。


「わかりました。こういたしましょう」

 ミナはいったん座り、書字版を使って、簡単に案を書いた。


「展示区画を等級付けします。特級、上級、中級、小級です」

「はい?」

「そして……」

 立ち上がって、地図を指示棒で指さす。


「ここは、コーハラル商会が宿を建設中の区画でございます。この背後の広い空き地で競技会を行う予定になっております。そのため、ここには円形の観覧席を作る工事が始まっております」

 カルジャンは大きく頷く。それはもちろん知っている。


「この周りに、見本市の区画を作ります」

「えっ?! 観覧席の下……でございますか?」


「真下ではございません。この周囲に、天幕を張れるように材木を立てます。観客席の周囲ですので、材木も少なくて済むでしょう。そして、ここを基本の区画、中級区画といたします」

「は、はあ……」


「そして、最初に予定していた、コーハラルの宿のロビーの展示室の区画を特級といたします。ここは天幕ではなく、建物の中でございますので、料金を高くいたします」

「な、なるほど…」


「それから、港湾局の二階の大広間…。ここを解放し、上級区画といたします」

「ええ~?! よ、良いのですか?」

「宿が解放しているのですから、港湾局でも可能でございます」

「は、はあ…」


「そして、港湾広場にも、このあたりに小級区画を用意いたします」

 ミナは地図の港の部分を指示棒で叩く。


「こうしますと…。この3倍の申し込みのすべてを受け入れることができるでしょう」

「えっ、文句は出ないでしょうか?」

 カルジャンの部下が眉をしかめる。


「この告知によりますと、区画の大きさと料金は書いてありますが、それがどこか、建物の中か、外かなどは一切書いてございません。ですから、問題はないでしょう。

 そして、等級分けして正確な区画数と中級以外の料金を出したら、改めて、どの場所を希望するかを問えばよいでしょう」

「な、なるほど…」


「とすると…」

 部下が尋ねている間に、カルジャンは大まかに計算をする。


「た、確かに…。3倍の区画数が確保できますな」

「はい。そして、特級、上級、小級ができましたので、その分は収入が増えますね。これでもう一度正確に計算していただき、経費と収益を算出していただきたく存じます」

「ははっ。かしこまりました!」


(儲けを逃がしてなるものですか……!)

 ミナは心の中でガッツポーズだ。


「ミナ殿、競技会の内容と運営ですが…」

 次に打ち合わせをするのは、競技会とその観覧席販売を担当するダルザ商会だ。ここもナンバー3の番頭ラバルだ。


「こちらが競技内容となります」

 ラバルは資料をミナに見せた。

「まあ!」

 そこには、農民や漁民などそれぞれの業種での戦い方が書いてある。


「農民などは、もともと長い時間をかけて技能の差が出るものですから、この収穫期に、各村で判定してもらい、そこで優秀と認められた者が参加、ということになっております」

「それはすばらしい案ですね!」


 ちょうど7,8月は穀物の収穫期なので、そこで各村で品評会をしてもらうという案だ。そして、本番は鍬や牛の扱い方の技術などで判定する。


「で、賞金のほうは、レオスト殿下からこのようにご連絡をいただいております」

 その資料には、優勝者への奨励金と記念品のリストがあった。

「まあ! 素晴らしいですね! さすが、レオスト殿下」


 それは、優勝者と、その村に与える品々だ。

「賞金の配分ですが…。種目が6つですから、6等分ということでよろしいですな?」

 カルジャンが問う。

「あ、いえ…」


 ミナは少し考えた。


「農民の競技の場合は、5等まで用意してください。」

「はあ? なぜです? 優勝者は1人では?」

「農民は人口のほぼ半分です。ですから、できるだけ、人口比率に合う分け方にしていただきたいのです」


「な、なるほど。優勝者の金額は同じで、農民全体の金額を増やすのですね」

「はい、それで公平になるのですわ。そうでなければ、農民の人口が伸びませんので」

「なるほど…。かしこまりました」



 そこへ、ミナに客が面会に来たと部下が報告に来る。


「ミナ殿! 聞き及びましたぞ!」

 それはバンサラー国クッシャリエ商会のザッカリムである。

 焦った様子でどかどかと部下ともども応接室にやってくる。


「まあ。ザッカリムさん。お久しぶりでございます。いかがなさいましたか?」

「コブルーでは祝祭を開き、見本市を開催すると聞きました。なぜクッシャリエにも通達をいただけないのでございますか?」

「は、はあ…。あの。ご参加をご希望で?」

 ミナは冷や汗だ。外国からの参加までは考えが及ばなかった。


「もちろんでございます。9月にはうちの宿も開業いたします。ぜひ、参加させていただきたい」

「わ、わかりました。…ですが、異国からの参加は想定しておりませんでしたので、どこにも通達しておりません。ですから、今回の参加は、ブリア領主からの直接の招待によるもの、という体(てい)でご参加いただいてもよろしいでしょうか?」


「え、ブリア領主からの招待をいただけるので?」

「はい。ただし……」

 そこでミナは少し顔を寄せる。


「今回は婚約記念祝祭でございますので、ブリア領主に婚約の祝い金をお願いしたいと思います」

「あ、なるほど……」


 ここでお金を稼がずにおくものか!とミナはすかさず案を出す。


「あ、あの…。いかほどお包みすれば……」

「そうですね……。金貨10枚ほど…」

 小声で二人でこそこそと話す。

「はあ……。……かしこまりました。ではお願いいたします」


(やった!!……)

「オホホ。領主様もお喜びでございましょう」


 ザッカリムも大喜びで帰っていった。


 クッシャリエの宿のロビーで開催してもらえばよいから、場所代はかからない。

 ただ、見本市の案内板に案内を書いておけばよいだけだ。


 ミナとしては、エカーリアの結婚資金を少しでも増やしたい。祝祭事業で儲けても、それは五大商会の利益であり、領主の懐には入らないのだ。だから、祝い金をもらう必要がある。


(人生で最高にがめつくなるときよ……)

 心の中でボキボキと指をならす。

(さあ、どんどんいらっしゃい!)

 一生に一度しかない大儲けの機会を、ミナが逃すはずもなかった。


 ミナは三階のテラスから港を見下ろす。

 港には新しい宿の建設が続き、材木を積んだ荷馬車が行き交い、船が次々と入港していた。


 コブルーは、生まれて初めて「国中が自分を目指して動いている」という熱気に包まれていた。



いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。


この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


---今までのあらすじ---


ブリア領主アンドリオンの妹エカーリアと、王弟レオストの嫡男ゼビルスの結婚の費用を作るため、ミナはコブルーで祝祭を開催することにした。しかし、金儲けだけではなく、その裏では、国防担当の王弟レオストの盗賊討伐作戦が始められていた。国の一大イベント、コブルー祝祭は果たして成功するのか……。

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…

アンドリオン … 若きブリア侯爵、ブリア領主。20代

レオスト … 王弟。軍最高司令官。ミナの支援者。40代

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別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

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