国を挙げての盗賊大討伐戦、レオストの号令で開始される!
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください。
初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!
第151話 盗賊討伐開始
5月1日。
アラゴンキアに最西端に位置する領地ルールズの、領主の城がある城下町カラートに向かう街道に、軍馬の蹄の音が響き渡っていた。
それを丘の高みから覗き見る盗賊たちがいる。
「なんだ、あれは……?」
軍列は長く、おそらく3000人はいるだろう。後方には荷馬車が続く。
「ありゃ、侵攻だぞ。ていへんだ! おかしらに知らせるぞ!」
盗賊たちは慌てて丘を降りていく。
王国軍の前方にいる騎馬兵たちが、カラート内の中央広場で止まる。そこには行政舎があり、中央に記念塔がある。
領民たちはそれを見て、皆立ち止まって怯えていた。
「王国軍……。ありゃ、領兵じゃねえぞ」
「なんで王国軍がここに……?」
将軍らしき軍人が広場の中心で止まった。
左右に騎兵を並べ、中央に立ち、民衆に大きな声で怒鳴り上げる。
「ルールズの者たちよ、聞け!」
民衆はどんどん広場に集まり、将軍を取り囲む。
「我らは王国軍第6大隊である。隣国イルマランから大量の盗賊がこのルールズに逃げてきているという通報があった。我らはそれを討伐するために、王都からやってきた。皆、気をつけるがよい。
落ち着くまでは巻き込まれぬように、しばらくは外出をできるだけ控えよ。それから、盗賊を見かけたら、領兵詰所か役場に連絡をせよ。よいな!」
「へ、へい!!」
そう伝えると、軍は西に向かってさらに進んでいく。騎兵の後ろに歩兵が続く。それは、領民がめったに見ることのない、王国軍の行進だった。
群衆はそれを見送りながら、口々に噂をする。
「どういうこったい……。ルールズに盗賊が集まっているってことか?」
「隣国で取り締まりをやっているんだろう。それで逃げて来たんじゃないか?」
「物騒になったな。しばらくは家にこもってるのがよさそうだぞ……」
こうして、ルールズの西側には大量の王国軍の兵士が陣取ることになった。
* * *
5月2日。
ルールズの林の中にぽっかりと広がる平地に、盗賊の根城がある。
いくつかの小屋の中で、盗賊たちはまだ寝ている。全部で46人だ。
少し離れたところの見張り小屋には、見張りが居眠りをしている。
それも仕方がないだろう。森は静かで、なんの刺激もなかった。
すると……。
――バサバサバサッ!
鳥が一斉に飛び立つ。
「な、なんだ?」
見張りは飛び起きた。慌てて天井から降りているヒモを引っ張る。
すると、少し離れた小屋のまわりに結び付けている木切れが音を立てた。
これは、危険度1の警告音だ。まだ危険は確認できないが、注意せよ、というレベルだ。
小屋で寝ていた当直が起きる。
当直は静かに窓の板を開き、外を見る。しかし、明け方の薄明りで、霧も深い。
「何も見えん……」
鳥の鳴き声は聞こえるが、森はまだ静かで、特に何もなさそうだ。
当直はまた横になった。
小屋のある平地の外周には、大量の兵が並んでいる。そして、夜が明け、周囲が見えてくると、霧が少しずつ晴れていき、兵の姿が露になった。その数300。
「殿下! 包囲完了しました」
兵士が跪いて報告する。
王国最高司令官である馬上の王弟レオストは大きく頷く。隣には将軍が並ぶ。
最初の掃討戦は、レオスト自身が開戦の号令を発するつもりで第6大隊に来ていた。
レオストはゆっくり右手を上げた。
「始めよ」
「はっ」
将軍ルジャンドーは一歩前に出て、兵たちに号令をかける。
「作戦開始! 盗賊どもを一掃せよ!」
その瞬間、何百本もの矢が一斉に射られる。矢が風を切る音が森に響き渡った。
――ガガガガガ………!!
「う、うわ~!!!!」
その音を聞いた見張りは飛び跳ねるように紐に飛びつき、ありったけの紐を引く。
「て、ていへんだ~!!!」
盗賊たちの小屋は突然、天井の木切れが吊り下げているなべ底を叩き、ガシャンガシャンと大音響で響く。
しかし、その音はもう遅い。
矢が小屋の壁に突き刺さる音で、寝ていた盗賊たちは飛び起きる。
「な、なんだ?!」
「な、なにごとでい?!」
飛び起きた盗賊たちは一瞬で青ざめる。慌てて剣を差し、弓矢を持ち、小屋の窓から外をのぞく。
すると、再び矢が山ほど飛んできた。
「うわ~!!! 軍だ! 囲まれてる!」
盗賊たちは大騒ぎだ。
「わな、罠はどうした?!」
小屋の周囲には落とし穴や足止め用の罠が仕掛けられている。
「いや、そこまで近づいてねえ!」
「なに?!」
遠くから木々を避けて矢を放っているのだ。邪魔な枝を振り払い、矢が次々と小屋に射られる。
「ふん。小屋のまわりの罠など、お見通しだ」
将軍はフンと鼻を鳴らす。
「どんどん矢を放て!!」
太鼓が鳴り、指令を全軍に伝える。
低い地響きが鳴り響き、地面が揺れる。
「に、逃げ場がねえ!」
「いや、まだ逃げられる! 裏から抜け出せ!」
「で、でも、この霧じゃあ、バラバラになっちまいますぜ」
「命がありゃあ、それでもいい!! まとまっているほうが矢の的だ!」
大混乱の盗賊たちは、それぞれに扉や窓から飛び出す。
しかし、矢にすぐに当たって倒れる者、うっかりと自ら落とし穴にはまる者、逃げおおせたかと思ったら、兵士に斬り捨てられる者。
森は修羅場と化した。
「東側から少し逃がせ」
レオストは将軍に言う。
「はっ。心得ております」
ルジャンドーは頷いた。
太陽が上がりきり、霧が晴れるころには、掃討戦は終わっていた。
兵士がルジャンドーに報告に来る。
「盗賊どもの死者は12人。捕縛20人、逃亡者は頭領を含めて14人です!」
「うむ、ご苦労。ちょうど良い人数だな。逃亡者の逃げた方角は?」
「は、東南です」
「ふむ。予定通りだな……」
ルジャンドーはそれをレオストに報告する。
「殿下、終わりました」
「うむ。まずまずの成果だ」
レオストは満足げに笑った。
兵士たちは小屋を探り、隠していた財産を没収すると、小屋を解体し始めた。二度とここに戻れぬようにがれきの山とする。
「金貨87枚を見つけました!」
「な、なんと! 盗賊とは金持ちよ」
これにはレオストも驚愕だ。
「は、現金輸送馬車を襲うこともあるのでしょう」
「なるほど……」
盗賊の一部をわざと逃がしたのにはわけがある。
盗賊には盗賊の隠れやすい場所がある。彼らは本能的にそこに逃げ込み、他の盗賊団とぶつかるだろう。そして、縄張り争いを始める。
「盗賊とは獣のようなもの。勝手に殺し合いを始める。盗賊同士でどんどん自滅していくがよい」
盗賊団はドミノのように倒れ、数を減らしていくだろう。
そして、生き残りがこの惨状をあちこちの盗賊たちに伝えるだろう。
「恐怖におののくがよいぞ」
レオストは「ハハハ!」と声を上げて笑った。
最後に生き残った盗賊を時間差でコブルーに追い込んでいくのだ。
「よし、この調子で少しずつ東に向かうぞ」
「はっ」
将軍が答える。
こうして、どんどんと盗賊団は討たれていった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
---今までのあらすじ---
ブリア領主アンドリオンは妹エカーリアと、王弟の嫡男ゼビルスの結婚を進めるよう、ミナに依頼した。ミナは、その費用をなんとか作ろうと、大イベントを提案する。しかし、金儲けだけではなく、その裏には別の策がいくつも隠されていた。その一つは、盗賊掃討戦だった。
------------------------------------------------
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…
アンドリオン … 若きブリア侯爵、ブリア領主。20代
レオスト … 王弟。軍最高司令官。ミナの支援者。40代
------------------------------------------------
別小説、完結しています。よかったら、訪問してください!
クリスタル・ハート・カフェ
https://ncode.syosetu.com/n1866mp/




