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ミナとカイル、やっとゴールイン。でもそれはまだ始まりです……

このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下にあらすじと用語集があります!

「なに? 言いたいことがあるんでしょ? 早く言いなさいよ」

 とヨーカが促す。


「あ、あの……。私、カ、カイルと……」

 真っ赤になりながら、カイルを見る。


「こ、これ、私が言うの?!」

 なんか、騙されてないか?という気がして、カイルをにらむ。

「ほら、続きは?」

 ヨーカがおもしろそうにミナを促すので、しかたなく言った。


「あの……、カ、カイルと結婚……します」

 言って、真っ赤になって、下を向いた。

「うわ~! いいな~!」とスージャが言う。

「ええ~、兄貴でいいの?!」とレイが言う。

「おお~、やっぱり!」とヨーカが言う。


 ミナは顔を真っ赤にして、

「とりあえず、今日はもう帰ります……」と小声で言った。

 カイルは笑って、

「いや。まだゾーイは迎えに来ないから」と言った。

「それに、これから昼ご飯でしょ」

 ヨーカが笑いながら、台所に向かった。



 にぎやかな昼食を食べ終わると、カイルはミナの手を引いて、庭を歩き出す。

「どこに行くの?」

 ミナが聞いても、カイルは微笑んだまま、答えない。

 納屋を通り過ぎ、畑を歩き、それから林の中を歩いていく。


 ミナももう、カイルがどこに連れていこうとしているか、わかった。そして、黙ってついていく。

 秋の風が頬をなでる。

 鳥の声が聞こえる。

 秋の草花が小さな紫の花をつけて、揺れている。

 カイルに手を引かれてどんどん歩いていくと……。

 ――あの草原に出た。


「ここがミナの生まれた場所」

 カイルが言った。

「私が生まれた場所……」

 風がミナの髪の毛を揺らす。

 隣を見ると、あの時に見た懐かしい黒い瞳があった。


「ミナが現れて、しばらくは……」

 カイルが優しい目で言う。

「いつまた消えるのかと思うと、怖かった」

 そう言って、抱きしめた。


「でも……。もう消えそうもないから不安が消えた」

「そ、そうなの……?」

 抱きしめられたまま、ミナは3年前を思った。

(もう消えない……?)

 それはこの世界に根を下ろしたということなのだろう。


 冒険者だったカイル。長い髪の毛で、まだ荒削りの若者だった。

 それが、今や騎士として、正装して王城の舞踏会でダンスをする。

「うふっ……。3年はあっという間ね」

 ミナは笑った。

 20歳だったカイルは、あと3カ月で24歳だ。ミナは……見かけはほとんど変わっていない。


 カイルが耳元でささやくように言う。

「ミナ、いつ結婚してくれるかな?」

 カイルが今年の1月に「一年待って」と言った期限は、あと3カ月後なのだ。

「うん。えっと……。許可もらったら、いつでもする……」

 ミナは恥ずかしそうに、子供みたいに答えた。


 どんなに難しそうな商業の話やインフラの話をしても、結婚の話になると、子供のように恥ずかしくなる。

 でも、それでかまわなかった。


 カイルはミナを強く抱きしめて、

「じゃあ、今から用意しなきゃな。王都に行って、許可をもらわなきゃ……」と言った。

 そうだ。ふたりとも騎士の身分をいただいたので、主君にまず許可をもらわなくてはいけない。日付を決めるのはそれからだ。


 他にも、バンリオルやアンドリオンに伝えなければならない。新しい家も探さなくてはならない。

 ふたりとも、それぞれの仕事を続けるには、城とバンリオルの家の間が良いのだろう。

 そんなことを考えながら、ミナはカイルとふたりで暮らすこれからの日々のことを思った。


 カイルがミナに熱いキスをする。それは約束のキスだ。

 いつまでもミナを愛すると。


 それは互いに進化するからこそできることなのだ。



第144話 永遠の愛の誓い



 秋の王城はどこからともなく香る花の香りで満ちていた。

 王城内の庭に植えられているラウケという紫がかったピンク色の花の香りだ。

 重厚な石造りの謁見の間に、静かな緊張が満ちていた。


 王宮内の謁見の間には、重臣たちが並ぶ。玉座には、アルースト王が王冠を戴いて座っており、その一段下に、王弟レオストが立っている。

 その前に進み出たのは、ミナとカイルだった。

「国王付き騎士にして、ブリア侯行政顧問、ミナ・クロエにございます」

「王弟付き騎士にしてバンリオル商会の兵、カイル・ヨードンにございます」

 ふたりは同時に膝をつき、頭を垂れる。


 王の視線が、ゆっくりとふたりに落ちた。

「……用件は聞いている」

 低く落ち着いた声だ。

「結婚、か。まあ、順当であろう」

 ふふっとアル―ストが笑った。

 そして、力強い声で、ふたりに問う。


「ミナ・クロエ」

「はい」

「そなたは今や、ブリアの制度を支える柱の一つだ。その結びが、それを妨げてはならぬ」

「はい、心得ております。結びを終えても、未来永劫、そのお役目を果たすことを誓います」

 ミナは顔を上げずに答えた。

「ふむ。良い答えだ」

 王は満足そうに微笑む。


「では、カイル・ヨードン」

「はっ」

「そなたは何を誓う?」

 カイルは、顔を上げた。

「我が剣は、アラゴンキアのためにあります。そして……、ミナと共に、アラゴンキアを強大な国にするために、働くことを誓います」

「よろしい。良い答えだ」


 国王アルーストは王弟レオストを見る。

「レオスト。カイルはそなたの騎士。この者のミナとの結婚を認めるか?」

「は、国王陛下。異存はございません」

 レオストはアル―ストに向かって、頭を下げる。そして、一言付け加えた。

「このふたりの結びは我が国に益となりましょう」


 アル―ストはゆっくり頷き、微笑む。

「ふむ……よかろう」

 その一言で、すべてが決まった。

 王は立ち上がり、謁見の間に広がる大きな声で言った。

「では、国王の名において、ふたりの結婚を認める」

 ふたりの結婚の許可を高らかに宣言したのだった。


 * * *


 翌年、1月10日。いよいよ結婚式の当日となった。

 国王の指示で、結婚式は教会ではなく、王宮内の礼拝所で行われることになった。そのほうが、国王が出席できるからだ。

 国王の臨席による結婚式は、大貴族級の待遇である。


「ルーンの吐息」で仕立てたミナのウェディングドレスと、カイルの礼服を着て、ふたりは式に臨む。

 国王アルースト、王弟レオスト。それから、レオストの長男ゼビルス。そして、バンリオル、ブリアの王都出張所のケルトンが出席した。


 静寂の中、ふたりが進み出る。

 ミナは白のドレスに金の縁取り。胸に若草色の刺繍。髪には白いリボンでつくった花の髪飾りがあり、そこから腰までの長いリボンが何筋も流れている。

 カイルは華やかなギャザーの立ち襟シャツに、金の刺繍で飾られたひざ下までの長い白の上着。それに羽のついた帽子をかぶっている。

 騎士同士の結婚であるため、交わすのは指輪ではなく、短剣だ。それをミナは国王から、カイルは王弟から下賜された。


 神官が告げる。

「汝ら、何を誓うか」

 カイルが先に口を開いた。

「ミナ・クロエを愛し、共に未来永劫、国の剣とならんことを」

 ミナが続ける。

「カイル・ヨードンを愛し、共に未来永劫、国の盾とならんことを」

 そして、ふたりが唱和する。

「その命の尽きるまで」

 ふたりは向かい合う。


 そして、短剣を交わし合う。カイルの剣はミナに、ミナの剣はカイルに。

 柄に刻まれた王家の紋章が、ふたりの誓いの重さを表していた。

 そして、神官が高らかに告げる。

「ここに、ふたりの婚姻の誓約はなれり」


 ふたりは向き合ったまま、笑顔が隠し切れない。

 ミナは嬉しそうにほほ笑むカイルの顔がまぶしかった。

 そして、カイルとの結婚を国王と王弟に見守られていることが奇跡のように思えた。

 バンリオルも、まるで家族のように温かく祝ってくれる。

 ミナが異世界に来てから、丸3年と4カ月で、ミナはカイルと結ばれたのだった。



(人生って……不思議……)

 そんな思いがミナの心の中に広がる。

 いつの間に、こんなにカイルを愛したのだろう? 

 知らぬ間に熟していた甘い果実を味わったように、ミナの胸に甘いときめきが満ちた。


 ふと、2年前に自分が言った言葉を思い出す。

「でも……、カイルはいなかったよ」


 カイルが前の世界のことを聞いた時だ。

 前の世界には何でもあった。でも、カイルはいなかった。

「当たり前だろ」と彼は言った。


 そう、前の世界には結婚したいと思う相手はいなかった。

 仕事ばかりして、他のものは見なかった。

 それは、仕事がおもしろかっただけじゃない。

 あの世界にはカイルがいなかったからだ。


 ミナはこの世界に来たもうひとつの理由を見出した。

「カイルがいるから、この世界に来た」


 自分をこの世界に連れてきた大いなる存在は、ミナの望みを見通していた。


 何もないところから、自分の力で社会のインフラを作りたい。

 そして、心の底から結婚したいと思える人に出会いたい。

 その二つの願いをこの世界で叶えたのだ。


 だが、ミナはその大いなる存在に勝手に動かされたのではない。ミナがその存在を動かしたのだ。

 ミナが才能を開花させ、最愛の人を手に入れられる場所へと、自分を動かすように。

 願いはか叶えられた。


 目に見えないその大いなる存在に―――ミナは深く感謝したのだった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。


この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。

---今までのあらすじ---

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするためにブリア官僚として働く。王都でも数々の施策により、天才官僚と呼ばれるようになり、騎士位を与えられた。ミナの目的はコブルーで使われる秤を国際基準にすることだ。恋人のカイルと共にカイルの故郷エルノー村に戻った二人は……。

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別小説、連載しています! よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。

カイル … ミナの恋人で、バンリオルの諜報員、私兵。23歳

ヨーカ … カイルの姉。娘はスージャ

レイ … カイルの弟


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