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騎士ミナの初仕事と、エカーリアとゼビルスの恋

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。その実績で、次第に天才官僚と呼ばれるようになる。ミナをもっと王府で使いたいレオストは、ミナと恋人カイルをふたり同時に騎士にした。それは二人の結婚の序章であった。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


第137話 騎士ミナの初仕事


 王城内の行政棟の一つの会議室に、レオストは官僚たちを呼び出した。

 出席者は、商務官セグリオ、商務官キアン、そしてブリア行政顧問ミナである。


 そのほか、書記などの官僚たちがいた。前方横には侍従たちが、後方には衛兵が並ぶ。

 机の上には、王国の広域地図が広げられていた。


 レオストが腕を組んで言う。

「街道の整備は急がねばならん」

 低い声が室内に響く。

「護送団のおかげで、王都コブルー線の商人の往来は増えた。そこでだ……」


 レオストはすぐ横に座るミナを向いた。

「ミナ。この護送団の案を、王国全土に広げたい。どうだ?」

「はい。もちろん良いと思います。ですが、あまり便を増やしますと、既得権を持つ護衛員たちの仕事を奪いますので、お気を付けくださいませ。1日2便が適当かと」


「なるほど。……失業者が出るということだな」

「はい。また、それは領地の兵を使いますので、その収入は領主に入ります。ですので、その収入では街道の整備はできません。領主から国税として多少の税収を得ることはできるでしょう」

「ふむ……。それはそうであるな」


 レオストは椅子に深く座って、ため息をつく。

「王都コブルー間の街道は、出資も集まり、工事も始まっている。しかし、そうそう出資は集まらぬ。他の街道まで手が回らぬ……」

 そして、ミナを見る。


「そこでだ。他の方法で財源をつくりたい。そして、その財源でなんとか早く街道を作りたいのだ。ミナ、何か良い案はないか?」

「はい。そうおっしゃるだろうと思い、考えてまいりました」

 ミナは微笑む。

「なに? やはりそなたは有能であるな」

 レオストはニヤリと笑う。


 ミナは説明を始める。

「護送団を全国に広げたとすると、商人は経費を大きく削減できます。そこで、商人から新しい名目の利用料を得るのでございます」

「ふむ。それはなんの利用料だ?」

「はい。商人は検問を通る時、順番を待たなくてはいけません。農民も商人も、すべて平等に並ばなくてはいけません。これは商人にとって無駄な時間でございます。ですから、検問に優先路を作るのでございます」


「ふむ……」

 レオストは再びニヤリした。

「それはコブルーの入港の税関の優先列と同じだな?」

「おっしゃる通りでございます。つまり、検問の列に並ばなくても通れる権利の料金を払っていただくのです。それは定額の月払いといたします。たとえば毎月100ポルを支払う商隊は、各領地の検問で優先通行できるようにするのです」

「なるほど。それならば、税の割引ではないな」

「はい。割引するわけではございません。優先される権利でございます」


「ふむ……。で、その収入は領地と分けるのか?」

「はい。実際の検問をするのは領兵でございますので、多少、領兵の人員を増やす必要があるかもしれません。ですので、取り分を2割程度分けてもよいと思います。それを通過した領地の割合で分けます。それを月に一度精算すればよいでしょう」

「ふむ。悪くない……。セグリオ、どうだ?」

「はい。問題はないかと」


 セグリオはコブルーで優先権制度をまとめた本人だ。

「キアンはどうだ?」

 商務官のキアンはしばらく考えていた。

「ミナ殿にお聞きしたい。それは商会ごとに与えるのですか? それとも商隊ごとに?」

「はい。商隊ひとつにつき、一つの優先権証明書となります。証明書を持ち歩かなければなりませんので」

「なるほど……。それならかなり儲かりますな」


 ミナは続ける。

「また、検問では荷を検めますが、荷を積んだ領地を出るときにする検査の証明書を持てば、他の領地の検問でもそれが通用する、という形にできればと思います。護送団で到着すると、商隊は複数同時に到着しますので、それを捌くためでございます。その証明書も発行料を取り、その収益は領地と王国で半々といたします」

 これは、コブルーで始めた積荷証明を広げるということだ。


「しかし、コブルーではすでに港湾局が積荷証明を発行しておりまして、これは港湾局の収入になっております。これは、そのまま検問でも証明書として使えるようにしたいと思います」

 これは、コブルーの発行証明手数料は半分王国に渡さない、という意味だ。

「なるほど……。抜かりないな」

 レオストは笑った。


「これらの仕組みを広げるにあたって、領地ごとに交渉していては時間がかかりますが、王家からの命令とあらば、すべての領地が一斉に従うでしょう」

「ふむ。そうだな。これは国王にしか命令できぬ」

 とレオストが頷く。


「大切なのは、定期的に得られる収益です。護送団が整備されれば、商人はもっと動きます。すると、検問も列が長くなるということ。それならば優先権を、という商人は増えると思います」


「う~む。なるほどな……。そなたら、どう思う?」

 レオストは官僚たちを見回した。

「は、良い案かと」

 官僚たちは異論なく、ほっとしたように、明るい顔で頷く。

「ふむ。ではこれを導入しよう」

 レオストは勢いよく言った。


「はい。ですが、これでもすぐには街道整備の財源はたまりません。全国から貯めたお金を、どこかに集中して街道をひとつひとつ仕上げていくことになるかと思います」

「うむ。それは仕方があるまいな。だが、これならば、少しずつでも広げられよう」

 レオストは満足した。

「出来上がった街道は、通行料を払ってもらえば、それを次の街道に回せるでしょう」

「なるほど……」

 全員、ふむふむと頷いている。


「よし。この案で行こう。ミナ、よくやった!」

 レオストが決断し、ミナを褒める。

「は、恐れ入ります」

 ミナは一礼して、誇らしそうに顔を上げる。

 騎士としての身分を得てから初めての会議は、レオストの誉め言葉で終わった。



 ミナが会議室を出ていこうとすると、レオストに呼び止められた。

「ミナ、農民支援制度のほうだが……」

「はい。ゼビルス様がラッスル公爵領でお進めになっている制度でございますね。何かご不明点でも?」

 ふたりは椅子に座り直す。


「いや。あれはうまく進めているようだ。アンドリオンの妹御、エカーリアと言ったな。エカーリアに詳しく聞いたと申しておった。そなたが教えたのか?」

「はい。さようでございます。ですが、大変聡明なかたで、退職した官僚や若者に仕事を教えるのに、ご自分で良い方法を開発なさったのでございます」


「ほう。それはどんな?」

「はい、演技法でございます」

 ロープレを演技法と言い換えた。


「ほう。それはどのようなものだ?」

「はい。最初は農民が一斉に役場に登録にまいりますので、そこで大量の役人が必要だったのでございます。役人が足りず、教育も間に合いませんでした。そこで、役割を分けたのでございます。まずは、農民に説明をする者、重要な判断をする者に分けました」


 これは、タスク分解という考え方だ。ミナは、役人教育の問題をタスク分解で解決したのである。


「次に、説明をする者もまた細かく分けます。どのように説明するか、どんな質問にどう答えるか、というのをすべて、役者の台本のように決めました」


 これは業務の標準化というものだ。いわゆるマニュアル化である。


「それを新しく雇った臨時の者同士で農民役と役人役を交互にして、演技のように練習するのでございます。この部分のやり方を、エカーリア様がお考えになったのです」


「なるほど。それは面白いな。楽しく仕事を覚えられそうだ」

 レオストはあごひげを撫でながら、しばらく考えている。


「ふむ。なるほど……。確かに、優秀な役人でも単純労働をすることがある。それは時間の無駄ということだな」

「はい。さようでございます。それは別の者にさせるほうが効率が良いでしょう」

「ふむ……。ブリアではかなり業務改革をしたと聞いている。それをいずれは王国でも真似をする必要がありそうだ」


「はい。必要ならば、ブリアの官僚をお呼びくださいませ」

「なんだ。そなたが教えるのではないのか?」

「はい。他の者ができることは他の者がやる。それが業務改革でございます」

「逃げおったな。まあいい」

 レオストは笑いながら言った。


「まあ、それはともかく、……ゼビルスはエカーリアが気に入ったようだ」

「ま、そうなのですか?」

 ミナは思わず表情が綻びた。


「今も手紙のやりとりをしておる」

「それは良いですね!」

 ミナはすごく嬉しくなった。大好きなふたりがくっついてくれるのはとても嬉しい。


「もともと、ゼビルスには幼い頃に決めた婚約者がいたが、……破談になったのだ。それが却ってよかったのかもしれぬな」

 そう言って、レオストは微笑んだ。

 それは、ゼビルスが自由に婚約者を決めることができるようになった、という意味だった。


 ミナは少し期待した。

「まあ、本人同士に任せるとするが……。そなたも気に留めておくがよい」

「はい。かしこまりました」


 ミナは礼をして顔を下げながら、口元で微笑んだ。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。


この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


別小説、連載しています! よかったら、訪問してください!

クリスタル・ハート・カフェ

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用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。

レオスト殿下 … 王弟。ミナとカイルを支援する。42歳

ゼビルス … レオストの長男


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