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ミナ、カイル、照れすぎて、知らないフリの舞踏会

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。その実績で、次第に天才官僚と呼ばれるようになる。ミナをもっと王府で使いたいレオストは、ミナと恋人カイルをふたり同時に騎士にした。今夜はその祝賀の舞踏会だった。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


 カイルはゆっくりと手を差し出した。

「ミナ殿。お初にお目にかかります。カイル・ヨードンと申します。一曲、お願いできますか?」

 カイルが照れながら演技を始めた。演技ならバンリオルで訓練を受けているからお手の物だ。


「まあ、カイル・ヨードン様。光栄でございますわ」

 照れから始まったカイルの冗談にミナが茶目っ気で乗る。確かに、「カイル・ヨードン」とは初めての出会いなのだ。カイルも緊張が解けていく。


 ふたりとも、まるで初めてであった男女のようにふるまっている。おかしくて、ふたりで笑いながら踊り始めた。


 何度か若草宮でダンスの練習をしたが、これは本物の舞踏会での本番だ。

 カイルは、まさか自分がこんな立場に立つとは思っていなかった。しかし、これは夢ではない。初めての本番のダンスの相手はほかならぬ、愛しいミナなのだ。

 カイルはミナを導いて踊り始めた。練習の甲斐あって、初めてにしてはふたりとも余裕をもって楽しく踊れた。


 ミナが小さく言う。

「カイル様、どちらのご出身ですの?」

 初めて会った男女のフリが続いている。

「エルノーという村です。ブリア領の。ミナ殿は?」


「まあ、わたくしもですわ! なんという奇遇でしょう。そこにはユーリカの香りのする、とても暖かい家がありますの」

「おや、同じ村の出身とは。それは奇跡のような偶然ですね。運命を感じます」

「ええ。きっと何かのご縁があるに違いありませんわ。……ところで、このドレスの色、どうお思いになる?」

 ミナは首を傾げていたずらっぽく微笑む。


「ああ、とても美しい色ですね。まるでミナ殿は草原から生まれた妖精のようです」

「まあ、わたくし、そんな言葉を言ってくださる殿方を待っていましたの」

「やはり、運命に違いありません。できれば、一生……ずっと……」

「一緒に暮らしたい……」

 ふたりでクスクスと笑いながら踊り続けた。


 広間の端では、バンリオルが腕を組んでそれを見ていた。

「ふむ」

 満足そうに頷く。

「悪くない」


 横にいた貴族が言う。

「バンリオル殿。誰ですかな、あのふたりは」

 バンリオルはにやりと笑った。

「王国で一番有望な騎士たちですよ」


 広間の中央では、カイルとミナがまるで別世界にいるように踊っていた。

 平民だったふたりは、今――実力だけでこの場所に立っている。

 そして、王城の舞踏会で、同じ騎士として堂々と踊っているのだった。


 舞踏会が宴もたけなわになると、レオストが登場する。王弟の登場に、貴族たちは道を開け、端に寄って礼をする。

 カイルとミナは踊りを終わって、バンリオルとともに壁際に立って礼をしていた。

「ミナ、一曲踊ろうぞ」

 そう言って、レオストはミナに手を差し出した。

「はい。殿下。光栄でございます」


 音楽が再び鳴り響き、レオストとミナが踊り始める。

「どうだ? 気分は。あれと踊ったのであろう? 満足したか?」

「あれ」とはカイルのことだ。

「はい。すべて殿下のおかげでございます」

 ミナは最高の笑顔で答えた。


「ふむ。君が嬉しそうにしているのを見るのは良い気分だ。私もさらに君を使えるというものだ」

 そう言って、レオストは笑った。

「まあ。お役に立ちますなら、光栄でございますわ。何かまたご相談でも?」

「ああ。大したことではない。街道のことだ。また明日にでも話そうぞ」

「かしこまりました」


 王城の舞踏会で、王族と踊ることは貴族にとって最高の栄誉である。ミナは多くの貴族たちの女性たちの羨望のまなざしを受けながら、きらびやかな夜を過ごしたが、――ミナはほとんどその視線に気づかなかった。


 * * *


 王城のまわりには、貴族街と邸宅街がある。邸宅街は大商人たちの住まいだ。

 その中ほどの広い敷地を持つ白い巨大な邸宅がバンリオル邸である。

 舞踏会を終えると、カイルはバンリオルと共にここに帰ってきた。


 いつもは裏手の使用人入り口に回るのだが、今夜は違う。バンリオルと共に玄関から入る。……とはいえ、それは入り口だけで、バンリオルが二階に上がっていくのに対して、カイルは一階にある私兵の宿舎の方に行くのだ。


 一階の廊下を歩いていると、小柄な女が脇に寄って礼をする。誰かと思ってみると、……フライアだった。

「なんだ。あんたか」

 カイルが言うと、フライアは顔を上げる。すると、さっと表情を変え、怒った顔でいきなりカイルの胸を叩こうとする。しかし、カイルはその手をなんなく止める。


「なんでいきなり叩くんだよ」

「ふん。騙されたから」

「俺、なんにもしてないし」

「そんな服着てるから、どこかの貴族かと思ったじゃない。うっかり礼をしてしまったじゃない!」

 礼服を着ているカイルにうっかり礼をして脇に寄ったのが悔しいらしかった。


「それ、俺のせいじゃない……」

 カイルは言ったが、フライアの機嫌は直らない。

「なんでそんな服、着てるのよ?」

 フライアは不機嫌なまま服にケチをつける。

「旦那様からいただいた。いいだろ?」


 カイルは上機嫌だ。まだ舞踏会の興奮が冷めていない。

「ふん……。貴族の真似でもして、どこかに潜入?」

「貴族の真似……」

 カイルはふと思い出して、「ちょっと来い」と言った。そして、フライアをカイルの部屋に連れていく。


 カイルは「暑い」と言いながら上着を脱いでボウを外すと、自分の荷物を入れた袋の中から何かを取り出した。

 それを握り締めると、フライアの前に戻る。

「ほら、これ、やる」

 握りしめた手から出てきたのは、金のペンダントだ。少し太めの頑丈そうな鎖がついている。コインには戦いの女神の横顔が書かれている。

「なに、これ?」

 フライアはコインを手に取り、眺めてみる。重い。本物の金だ。そして、カイルを不思議そうに見た。


「お守りだよ。これはお礼」

「え? なんのお礼?」

 フライアはきょとんとした。こないだ助けられたのは自分のほうなのに、カイルからお礼をもらうなんて?


「俺、騎士になった。あんたがいままで助けてくれたから、実績ができたんだ。だから、そのお礼」

 カイルはうれしそうに言った。

「えっ、騎士になったの?」

「ああ。今日はその叙任式さ。旦那様と行ってきた」

「そ、そうなんだ……」

 フライアはかなりショックを受けたようだった。コインを握り締め、しばらく黙っている。


「なんだ。……がっかりしたのか?」

 カイルはフライアが暗い顔をする理由がわからなかった。

「ラフカーンと同じだね……」

 フライアはうつむいて寂しげに言った。

「ああ……。王弟殿下付きだ」


 カイルはフライアの言いたいことがよくわからない。

「そっか……。ありがと……」

 そう言って、フライアはコインを握り締めたまま、部屋を出ていこうとする。

「フライア」

「ん?」

「また、よろしくな」


 フライアは少し表情を変えた。

「う、うん……」

 そう言って、元気なく出ていく。

(へんなやつ……)


 カイルはフライアの気持ちがよくわからなかった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。


この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。


用語集

ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。

カイル … ミナの恋人で、バンリオルの諜報員、私兵。23歳

バンリオル … ボリック・バンリオル ミナを支援する大商人 29歳

レオスト殿下 … 王弟。ミナとカイルを支援する。42歳

フライア … カイルの相棒の女でバンリオルの私兵の一人。24歳

ラフカーン … ブリア騎士団長。フライアの憧れの人

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