王弟、大商人、恋人の男3人でミナの噂
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。その実績で、次第に天才官僚と呼ばれるようになる。ミナをもっと王府で使いたいレオストは、ミナと恋人カイルをふたり同時に騎士にするため、カイルの経歴を大商人バンリオルに提出させた。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
レオストは椅子にもたれる。
「ミナが言っておった。自分は草原で迷っていたところをお前に助けられたのだと。それからの縁だということだな」
「はい。その通りでございます。行くところがないというので、家に連れて帰ったのでございます」
とカイルは答える。
「ほう……。一緒に暮らしていたということか。そして? 詳しく話すがよい」
レオストは興味深そうに聞いた。
「うちは農家ですので、ミナも最初は畑仕事を手伝っていましたが、そのうちに、市場で野菜を売ることになり、そこから商売の方法を考え出したのでございます」
「なるほど。それは初めて聞いたな。そもそも、なぜ行くところがない状態だったのだ?」
「はい。ミナが言うところでは、なぜわからないけど、気がついたら草原にいたのだとか」
「なに? かどわかしか?」
「いえ、危険な目に遭ったのではなく、いわば……神隠しで現れたような……。こことは全く違う世界から転移したように来たのだと」
「ほう? それは不思議な……」
「私も初めて聞きました」
バンリオルも驚いた顔で言う。
「それを信じたのか?」
「はい。……そのときのミナの服装は、まったく見たことのないものでしたので」
レオストの問いに、カイルは答えた。
「ほう……。なんと……。その服はどうなった?」
「はい……。実は姉が作り替えまして、業者に売りました。姉が言うには、見たことのない特別な布だったため、高額で売れたとか」
「ふ~む……」
レオストは大きく唸った。
カイルは続ける。
「それから、その時に身に着けていた宝飾品は、のちに買い取り屋で売ったのですが、買い取り屋は、『この国には存在しない宝石』だと申しておりました。私には何かはわかりませんでしたが、白く輝く丸い宝石でした」
「そ、それはおそらく……真珠ですな」
バンリオルが言う。
「確かに、私も話に聞いたことはございますが、見たことはございません」
バンリオルは唸りながら続けた。
「ミナさんのあの知恵。あの度胸。村娘とは思えぬ品の良さ。普通の娘ではないと思っておりました。私はミナさんをエビーナの遣いと呼んでおりますが、あながち、間違いではないような……」
「ふむ……。興味深いな……。ミナはなんと、19年も学校で学んだそうだ」
レオストがゼビルスから得た情報を漏らす。
「えっ、19年も……ですか? だから、あの知恵……なのですね」
バンリオルもさすがに驚愕する。
「知恵はあるのですが、ミナは常識的なことが通用しないことが間々ありました」
そう言って、カイルは苦笑した。
「野菜の名をまったく知らなかったり。女が街道を一人で歩く危険を知らなかったり。ある時は、オオカミを鞭で追い払おうとしたり……」
「なに?!」
「ミナはオオカミの恐ろしさを知らないようでした」
「ううむ……。それは難儀な……」
レオストは眉をしかめた。
「よく無事でしたな」
バンリオルも驚いて聞く。
「はい。弟がミナを必死で止めているうちに、私が間に合いまして、私がオオカミを殺しました」
「なるほど……」
とレオストもホッとした。
「とにかく、ミナがお前を頼りにする理由も理解した。あれはお前から離れぬであろうよ」
と、レオストは笑った。
それを聞いて、カイルは素直に嬉しかった。
バンリオルがゆっくりと口を開いた。
「殿下、カイルを騎士にしていただくのは大変ありがたいお話でございますが……」
「何か問題があるか?」
「この男は、現在バンリオル商会の護衛として働いております。騎士になれば、その立場で使うことに差し支えが出るのではないかと……」
「はは。そんなことは心配いらぬ。カイル、お前は私の騎士になる。だが……」
指をバンリオルに向ける。
「これまで通り、この男の下で働け。バンリオルは王国にとって重要な商人だ。その護衛をするのは、王弟の騎士としても立派な務めであろう。また、今後も王の剣として功績をあげるがよい」
バンリオルは深く頭を下げた。
「殿下のお心遣い、誠にありがたく存じます」
「うむ」
レオストは満足そうに頷く。
「ミナは……王の功績騎士として推薦する。そして……これまで通り、ブリアで働かせればよい」
バンリオルとカイルはじっとレオストをみつめる。
「ミナはブリアのために働きたいのであろう。コブルーを儲けさせるのだと息巻いておるわ。それでこそ、あれの力が発揮できるのであろうよ」
レオストは会議でのミナの様子を思い出して、クックッと笑う。
「おっしゃるとおりでございます」
「それに、ブリアの領主はミナをうまく使っておる。ミナの速い思考に合わせて、決断が早い。王城には素直ではない官僚が多い。だから、ミナにはやりにくい場であろうよ。
そして、たまに王都に来ればよい。……農民支援制度も、今回の護送団も、ブリアを真似すればそのまま他領に使える。そうやっては広げればよいのだろう」
「それはご慧眼。ミナさんは、他領で同じことをしても問題視なさいません」
「ああ。あれは出世欲も独占欲もないからな」
ふふっとレオストは笑う。
「それは王にとっても、良い官僚の資質だ。手柄にこだわる者は扱いがなかなかに難しいものよ。しかし、あれは手柄にこだわらぬ」
「はい。大変視野の広い方でございます」
「うむ。そうだ。……あれは国全体が見えておる」
レオストは満足そうに頷いた。
「さて、あれは私に新しい仕事を言いつけていった。バドマ、デラー、エレミアにも護送団の仕組みを命じよと。帰り道にさっさとすませてくるとしよう」
そう言って、レオストは大笑いした。
「帰り道まで使われるとは。あきれた効率性だ!」
バンリオルは目を輝かせる。
「ということは、コブルーから王都まで、護送団がつながるのでございますね?!」
「ああ。そうだ」
「さすがミナさん。商人の救いの女神でございます!」
大商人バンリオルが子供のような目でうれしそうに言うので、レオストも大笑いをするのだった。
「この経路で評判が良ければ、他の経路にも導入しやすい。私の実績も増えるというものだ」
「はい、殿下。それはミナさんも望むところでございましょう」
「そうだな。せいぜいミナの言うとおりにやることにしよう」
カイルはふたりのやり取りを眺めながら、ミナと出会った自分の数奇な運命を不思議に思うのだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます! 感謝感謝です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。
レオスト … 王弟。隣国スリマラビヤに交渉に行っていた帰り。42歳
カイル … ミナの恋人で、バンリオルの私兵。23歳
バンリオル … ボリック・バンリオル ミナを支援する大商人 29歳
ゼビルス … レオストの長男。




