レオスト、異国でコブルー港の特別扱いを獲得してくる
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。その実績で、次第に天才官僚と呼ばれるようになる。また、商人たちが少しでも安全になるように、ミナは領兵で商人を護送する護送団を提案し、さらに手形を使う案を提案する。その危険性も同時に説明した。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
「手形が偽造されるとかですよね?」とネザルが聞く。
「はい。それに関しては、できるだけ防ぎます。手形には番号を付け、それを帳簿に記帳します。発行担当者の名前も記載します。そして封蝋を押します。
多額の場合は、ブリアが提供する簡易保険をご利用ください。手形にブリアの印紙を貼ることで、その額の一部を領地が保証いたします」
ミナはにっこりする。
「そのほかの危険性としては、商会そのものが潰れる可能性です。
仮に、お金を拘束している商会が潰れたら、手形を支払った商会がお金を回収できず、損をします」
「確かに……。自分の商会の安全性はある程度把握できますが、他の商会の支店の安全性までは……」
バンリオルは言う。
「な、なるほど……」
とネザルは眉をしかめる。
「ということで、損失の可能性がゼロではございません。
しかし、こうお考えください。今は、お金を盗まれる危険があり、護衛を付ける費用、保管する費用などがかかっています。時には命が危険にさらされます。それを考慮していただき、どちらの危険を取るか、ということになりますね」
「う~む…」
バンリオルは顎を右の拳で支え、考え込む。
ネザルが言う。
「確かに、護衛を雇う費用もバカにならない。問題なのは、その護衛が盗む可能性もあるということなのですよ。ですから、護衛の選定にも時間がかかる。金を盗まれないために取っている手段の経費は莫大です。……とはいえ……。う~む…」
4人は腕を組んで深く考えこみ始めた。
「こちらからのご提案としては、まずは試験的に運用していただきたいのです。コブルー・タンブリー間で始めることをお願いしたいと思います」
「いやいや、ミナさん。その路線は護送団のおかげもあり、かなり安全な路線。それよりも必要なのは、それ以外の地域では?」
とバンリオル。
「そうですね。今、一番危険なのは、むしろ王国の西側あたりでしょうか」
と、ネザルも言う。
「おっしゃる通りではございましょうが、それではブリアが儲かりません」
ミナは笑った。
「わたくしはブリアの官僚。ブリアが儲かることを考えているのですわ」
「なるほど。ブリアとしては、それによって増えた銀行の利益を税として得ると?」
「はい。あと、保険のための印紙代です。これは領地による保険ですから。それが大きな収入になるでしょう。他領でも実践なさるかはブリアとしては関知いたしませんが、ブリアで必ずやっていただきたいのです」
「ま、ごもっともですな」
バンリオルも納得する。
「で、最初はこの2つの商会でやりとりする、とお考えなのですか?」
とネザルが聞いた。
「はい。とりあえずこの2つの商会は黒字ですし、潰れる可能性が低いというのが理由です。また、海外支店をお持ちですから、将来は海外支店でも採り入れていただきたいと思います」
「ふむ…。それは、我々自身が他の商会を引き入れてもよい、ということになりますか?」
バンリオルが尋ねる。
「はい。かまいません。ブリアはあくまでも手形によって増える商会の利益への課税と、保険印紙の代金をいただくだけです。
……しかし、お気をつけください。危ない商売をしている商会を引き入れて、万が一その商会が潰れれば、手形が危ないものとみなされます」
「ふ…む」
しばらく4人は黙っていた。
「つまり……」
バンリオルは言葉を選んでいるように、間をおいた。
「ミナさんがお考えなのは…最終的にはお金を動かさずに、紙だけで商売する世界なのですな?」
「そういうことですわ」
「な、なんと……」
ネザルが少し恐れをなした表情で言う。
バンリオルは続ける。
「前におっしゃいましたな。ミナさんの元いた世界では、お金は……紙だと」
バンリオルは取り付け騒ぎの時にミナが話した高橋是清の策の話を覚えていた。
「それはこういうことなのですな?」
「ええ、まあ…そんなところでございます」
ちょっと違うが、現代とここの違いで言えば、大きな差ではないだろう。ミナの元いた世界でも、確かに紙のお金は最初、金銀に変えられる兌換紙幣だったのだから。
ネザルは青ざめる。彼にとって、お金とは貨幣のことだ。ミナはそれを貨幣から紙に置き換えようとしている。それはもはや一官僚の考えではない。大胆な国家レベルの改革に思えた。
「ミナさん、噂には聞いていましたが…、あなたは本当に恐ろしい方だ。貨幣さえも見直そうというのですね……」
「おほほ。恐ろしいなんて……。わたくしは危険性を最小限に抑えることを考えております。そうすれば、経費は低くなり、商品は安くなり、買える人が増えれば、経済が回りますわ」
ミナは危険性を低くする利点を言った。
「…わかりました。エビーナの遣いに従いましょう」
バンリオルはにやりと笑い、ニキールと顔を見合わせた。
アルソーもネザルと顔を見合わせる。
「我らも参加いたします」
そして、ふたりでにやりと笑ったのだった。
第133話 レオストの復権
7月の半ば、暑い夏の午後、ブリア城の上空には高い雲がゆっくりと流れていた。
城門の前には旗が掲げられ、兵士たちが整列している。
遠くから馬の蹄の音が近づき、やがて護衛団の姿が見えてきた。
「王弟ラッスル公レオスト殿下、ご帰還!」
門番の声が城内に響いた。
先頭の馬に乗るレオストは、長い旅の疲れを感じさせない堂々とした姿だった。その後ろには護衛騎士たちが続き、外交の一行がゆっくりと城門をくぐる。
城のバルコニーからそれを見ていたミナは、小さく息をついた。
(戻ってきた……)
スリマラビヤとの交渉がどうなったのか、気にならないわけではない。
だが、ミナの頭の中には、すでに次の構想があった。
(護送団を王都まで広げるなら、今しかない)
王弟が戻った直後こそ、話を持ち出す好機だ。
その日の夕刻。
ブリア城の会議室に、いつもの顔ぶれが集まっていた。
ブリア侯爵アンドリオン。
王都商務官セグリオ。
領地の行政官イソールズ
そして行政顧問ミナ。
重い扉が開き、侍従が声を張る。
「王弟ラッスル公レオスト殿下、おなり~!」
全員が立ち上がる。
レオストは軽く手を振って言った。
「よい、座れ」
そのまま長机の中央の椅子に腰を下ろす。
「いやあ、土の上は久しぶりだな。タンブリーの土地はやはりよい」
そう言って胸をそらすと、アンドリオンが微笑む。
「スリマラビヤとの交渉、ご苦労様でございました」
「ああ。なかなか骨の折れる相手だったがな」
レオストは水を一口飲む。
「レッカの件は、向こうもかなり驚いていたぞ。スリマラビヤでは、幻睡薬にまだ気づいておらず、怪しい病気が広がっていると思っていたようだ。
まさか自分たちの国が幻睡薬の餌食にされていたとは思っていなかったようだ」
セグリオが頷いた。
「それで、例の条件は?」
「うむ。埠頭の優先利用と税率の優遇、積荷証明書の有効性は、ほぼ受け入れられた。
正式な書状はもうすぐ届く」
「それは大成功ですな!」
「おお~」という声が皆から漏れる。
「レオスト殿下、誠にありがとうございました。すばらしいです!」
ミナも笑顔で心からの感謝を述べた。
しばらく外交の報告が続いたあと、レオストは椅子にもたれて言った。
「さて、それでだ」
視線がミナに向く。
「ミナ。どうやら君は、私がいない間にもいろいろと新しい施策を進めていたようだな。コブルーで見たぞ。商人護送団だ。朝から大量の商人が衛兵に守られて出発しておった」
レオストはにやりと笑った。
アンドリオンに恩返しをするため、ミナはせっせとブリアが儲かる方法を考え出します。ミナはレオストに何を頼むのか? そして、次回、レオストはカイルの戦果の報告書を見せられます。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。
ネザル … トガリア商会の残務担当
バンリオル … ボリック・バンリオル ミナを支援する大商人 29歳
エビーナ … 商業の女神
レオスト … 王弟。コブルー港から隣国スリマラビヤに交渉に行っていた
レッカ … スリマラビヤの港で禁輸品幻睡薬が持ち込まれていた




