ミナ、新しい戦略でさらにブリアを儲けさせる!
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。一方、カイルは密輸船を摘発し、それが隣国への侵略戦争の一端であることを知る。それを隣国に知らせるために、王弟レオストがブリアを来訪。レオストはカイルがミナの恋人であることを悟り、カイルとミナに同時に騎士位を与えると約束する。それはふたりの結婚への序章だった。それを知ってアンドリオンは……。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
舞踏会が終わり近くになると、王族は部屋に戻っていく。
アンドリオンはそれを見送った後、ミナのところに戻った。バンリオルも呼び、立ったまま話し始める。バンリオルの後ろにはカイルがいる。
「バンリオル、レオスト殿下は何をお話しになったのだ?」
「はい、侯爵。王弟殿下は、カイルに身分を与えるとのことでございます」
「なに?! それはなにゆえ…」
カイルとバンリオルを交互に見る。
「はい。殿下はミナさんに身分を与えたいようです。そのほうが仕事がしやすいと。しかし、ミナさんが身分を欲しくないと思っていらっしゃるのをご存じで、それがカイルとの結婚に理由があると思われたのです。ですから、ふたり同時に身分を授けるとのことでございました」
「そ、そうか…」
アンドリオンは大きなため息をついて、黙り込んだ。
「ミナ…。君は結婚するのだな」
「は、はい…。そのうちに…」
「わかった。下がってよい…」
「はい…」
3人で礼をして下がっていく。
3人で一緒の馬車に乗り、帰っていく。
「あんなにがっかりなさって…」
ミナは少しアンドリオンが気の毒だった。
「まあ、しかたありませんね…」
バンリオルも下を向いて言う。
カイルに幸運がやってきたというのに、3人ともお通夜であった。
「仕事はやめませんと言っているのに…」
とミナが言うと、2人の男は顔を上げて、ミナを見た。
「ミナ…」
カイルは何か言いたそうだが、…言わなかった。
バンリオルも首を横に振る。
そして、またお通夜に戻るのだった。
そして、バンリオルはミナを若草宮に送って、それからカイルと共にバンリオル邸に帰って行った。
第131話 決して手に入らないもの
舞踏会が終わってから、翌日はレオストがコブルーに向かった。
残されたゼビルスはミナとともに農民支援策の視察をする。そして、アンドリオンは夜にエカーリア、フィルベラを交えて、ゼビルスのための晩餐会を開いた。
エカーリアもゼビルスが気に入ったようで、終始やわらかな笑みを浮かべてゼビルスを見ていた。
翌々日にゼビルスが王都に戻って、やっと落ち着く。
アンドリオンはあれからミナに対して少し不機嫌だ。むすっとしたまま、黙って仕事をしている。
それを気遣いながら、ミナも仕事をする。
「ミナ殿。この事業だが…」
イソールズがミナの執務室にやってくる。
それは郵便事業だ。
「最初の投資が大きすぎる。今、予算が足りぬ」
「はあ…。そうですね。この予算を見る限り、まだ十分とは言えませんね…」
コブルー港の利用者はかなり増えてきた。税率を下げてから、もう1年以上たっている。
だから、もう増収にはなってきたが、まだ他の事業に回せるような金はない。
(なんとか、今ある施設や財産でお金を生み出したい…。何かないかしら…)
「イソールズ卿、今あるものの中で、一番経費が掛かっていて、そのくせ利益がないものってなんでしょうか?」
ミナは聞いた。
「それはもちろん、兵ですな。そもそも有事の時にしか必要ありませんが、そうそう有事は起きません。いや、起きたら起きたで、さらに金がかかりますが…」
「なるほど…」
もっともな話である。
ブリア領の兵の数を調べた。すると、正規兵だけで約1万5000人。この人数を養うのは大変だ。彼らは治安の維持もするが、それはお金を生まない。そして、問題がなければ、意味がないように見える。
しかし、問題がないのは、逆にそれが機能しているからなのだ。
だが、民はそう見ない。問題がないと必要ないと思いがちなのだ。
なんとかこれをお金を生みだすものに変えられないだろうか…。民に喜ばれ、必要性を理解してもらえればさらによい。
(そうだわ。兵は有事だけでなく、街道の泥棒や強盗など、犯罪も取り締まる。要は金を盗む者を取り締まるのだ。だったら、一番大きな金の集まるところを狙うに違いない…)
ミナはふむふむと考え始めた。
一番襲われやすいのは、お金や商品を持って移動する商人だ。
だから、商人を守ればいい。もちろん、商人には護衛がついている。しかし、大量の盗賊には対応できない。そこにうまく街道警備兵が来ればいいが、そんな都合よく現れるはずもない。
(ということは……商人が移動するのに兵が合わせればいい。今は、バラバラ移動するから合わせられない)
ミナは紙にさらさらと企画を書き始めた。これは、今ある施設や人員を使って、すぐにお金を生み出せる案だ。しかも、民に兵の役割をアピールできる。
(名付けて商人護送団。これで行こう)
それをアンドリオンとイソールズに提案することにした。領主執務室でふたりに提案する。
「今回、ご提案いたしますのは、商人護送団の案でございます」
「ふむ。それはなんだ」
アンドリオンが、ニコリともせずに聞く。あれから、アンドリオンは感情を見せなくなった。ミナはそれを少し気にしながらも、説明を続けた。
「コブルーからタンブリー、そして王都フリストルへと、だいたい商人が動く経路は決まっております。ですから、その商人とともに移動する兵の護送団を作り、出発する時間を決めるのでございます」
ミナは机の上の紙を指しながら説明した。
「例えば、朝七時に出発する隊と、昼十三時に出発する隊の二便を設けます。街道警備兵20人をコブルーからタンブリーへ向かわせます。
申し込んだ商人はその時間に集まり、兵と一緒に移動するのです。すると、商人は兵に守られることになり、安心して街道を進むことができます」
「ほう。それはおもしろいですな」
イソールズが言った。
「街道警備兵は、半日で次の警備兵と交替します。そうすれば宿泊の必要がありません。そして戻るときにも、商隊と一緒に移動します」
ミナは続けた。
「料金はざっと計算して、馬車1台につきコブルーからタンブリーまで5ポル。タンブリーから次の宿場までは8ポル。人間1人につき1ポルといたします」
イソールズは眉を上げた。
「それで採算は取れますかな?」
「ええ。普通は、商人が自分で護衛を雇うと、馬車1台につきコブルーからタンブリーまで20ポルほどかかります。それでも盗賊に襲われれば、荷をすべて失う可能性があります。
ですから、5ポルで安全が買えるなら、商人は必ずこの護送団を利用するでしょう」
「おお、これは儲かりそうですな!」
イソールズは思わず声を上げた。
「で、ここに念のため、保険をつけるのです」
「保険ですか?」
「はい。20人の護衛をつけても、万が一荷を盗まれた場合には、その損失を保証いたします」
ミナは机の上の計算を書いた紙を指した。
「ただし、その場合は保険料をいただきます。保険料は荷の価値によって変えます」」
「なるほど……それなら高価な荷ほど多く払う」
イソールズは腕を組んだ。
「20人の護送団がついているなら、盗賊に襲われること自体が滅多にない。つまり保険料はほとんど利益になる、というわけですな」
ミナは微笑んだ。
「はい。商人は安心して街道を使えますし、費用を抑えることができます。こちらは収入が増えます。民は兵士が護衛をしているのを見て、軍のありがたさがわかります。いかがでしょうか」
「私はすぐにでも導入してよいかと思います。領主様、いかがですか?」
「ああ。そなたが良いと思うなら、それを始めてよい」
アンドリオンはイソールズに静かに言った。
「は。かしこまりましてございます」
イソールズは先に執務室を出ていく。
ミナは一人、アンドリオンの執務室に残る。
言おうか、言うまいか、少し逡巡した。
「あの……アンドリオン様…」
「ああ?」
無表情なアンドリオンだった。
ミナとカイルの結婚を王弟レオストが支援するのを知って、不機嫌極まりないアンドリオンの心の中は……。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。
カイル … ミナの恋人で、バンリオル商会の私兵。元冒険者 23歳
レオスト … 王弟で、コブルーの開発部長 42歳
バンリオル … ボリック・バンリオル ミナを支援する大商人 29歳
アンドリオン … ブリア侯でブリア領主 25歳
エカーリア … ブリア侯の妹 21歳
ゼビルス … レオストの長男 19歳
イソールズ … ブリア侯の補佐官




