レオスト、アンドリオンとカイルの関係を見抜く
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とするために官僚として働く。一方、カイルは密輸船を摘発し、それが隣国への侵略戦争の一端であることを知る。それを隣国に知らせるために、王弟レオストがコブルーを出港することになる。彼は嫡男ゼビルスとともにブリア城の舞踏会に出席する。ブリア領主アンドリオンは舞踏会で久しぶりにカイルを見た。その洗練された様子を見て驚く。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
カイルの見かけが変わっていたので、アンドリオンはすぐに気づかなかった。そのまま黙って彼を見ている。
なにやら思うところがありそうな視線を感じて、ミナはどぎまぎした。
(………)
結構長い時間、アンドリオンは黙っていた。
「……ミナ、一曲踊るぞ」
アンドリオンはミナの手をさっと取って、広間の中央にひっぱる。
「は、はい…」
残されたバンリオルは、カイルをチラリと見て、「ふむ。君は領主に意識されているようだ」とおもしろそうに言った。
踊りながら、ミナはアンドリオンに尋ねる。
「レオスト殿下と何かお話になりましたか?」
「ああ、君の自慢ばかりしておいでだった」
アンドリオンはムスッとしている。
「そうですか?…」
ミナはレオストがなんどか「見たか! これが天才官僚ミナだ!」と称賛していたのを思い出す。
「ご満足いただけたのなら、よいではございませんか。なぜそんな渋いお顔なのです?」
「また王都によこせなどと言われるかもしれぬではないか」
「まあ、二週間くらいで帰ってこれますし…」
「次は難題をいくつも用意してくるに違いない」
「アンドリオン様、わたくしはアンドリオン様のところで働きたいのですわ。ご安心くださいませ」
そう言って、クスッと笑った。
そう言われると、アンドリオンも少し安心して、微笑んだ。
「ところで、なぜここにカイルがいるのだ?」
「カイルでございますか? 彼はバンリオルの私兵ですから、護衛としてここにいるのでございますわ」
「そうか…。バンリオルの私兵か…。前とはずいぶん雰囲気が変わったな」
「はい。今は王城にも出入りしますので」
「そうなのか?!」
「はい」
騎士団の員外戦闘員だったときにはまだ冒険者の風体だった。それが王城に出入りしているとなると、まったく格が違うということだ。
「どうせ、そのうちカイルと結婚すると言い出すのであろう」
と、目を険しくする。
「何か問題がございまして?」
ミナも目を逆三角にする。
「………」
後は、彼は何も言わなかった。
「そんなことより、ご覧くださいませ、あちらを…。エカーリア様とゼビルス様」
「ああ…仲よさそうだな…」
「絶対にお似合いですわ!」
「…まあ、エカーリアの嫁ぎ先としては、申し分ないがな…」
「ご不満でも?」
「エカーリアに務まるか…。公爵夫人というのは、社交が難しいのだぞ。王家と貴族の間に挟まれる。身分の高い女性がどうふるまっているか、君には想像もつくまいな」
確かに、ミナは女性たちの社交界についてはまったく知識がなかった…。
「でも、エカーリア様は賢い方。潜在的な力を秘めていらっしゃいます。きっと乗り越えられますわ」
ミナはエカーリアを信頼していた。
第130話 舞踏会の魔法
ダンスが終わり、一礼をしていると、レオストがやってきた。
「ミナ、次は私と踊ろう」
「はい。殿下。光栄でございます」
そう言って、優雅に手を添えるのだった。そして、レオストの肘に手をかけて、中央まで歩く。
「この度の禁輸品密輸騒ぎを逆に利用してコブルーを有利にしようとは、さすが天才官僚よ」
レオストは踊りながら、ミナに微笑んだ。
「いえ、3人で出した知恵でございます。セグリオ卿も、バラントン卿も、わたくし以上に老獪な方々ですわ」
「ふふん。君の発想につられておるのであろう」
「殿下にはスリマラビヤにご足労いただくことになり、恐縮でございます」
「まあよい。こういう役柄は私にも得点になるからな」
そもそも、王太子暗殺事件でレオストが処刑を免れたのは、コブルーのために危険な命がけの外交もするという役目をもらったからだ。だから、面目躍如なのである。
「その後、街道の件は進んでいますか?」
「ああ。進んでいる」
「ぜひ、王族のかたがたも出資してくださいませね。そうすると、他の貴族たちが倣いますので」
「わかった。そうしよう」
レオストが微笑んで答えるので、ミナは輝く笑顔になった。
レオストが素直に受け入れてくれるのはうれしいことだ。
「あと、船の工房が決まった。これから造る予定だ」
「それは楽しみでございます」
「ところで…」
レオストは少し表情を変えた。
「あのバンリオルのそばにいる黒髪の男…。あれが君の思い人であろう?」
「えっ?!」
ミナは驚いた。そんな様子を見せた覚えはなかった。
好きな人がいる、それは平民だとゼビルスに言った言葉がレオストに伝わっているだろうとは思ったが、この場で見抜かれるとは思わなかった。
実は、ゼビルスが王都でミナをあちこちに案内したのは、レオストの指示だった。年の近いゼビルスならば、レオストが聞けないことを聞き出せると思い、ミナに付けたのだった。
そのおかげで、ミナはアンドリオンに恋心を抱いているわけではなかったと知って、レオストは少し安心したのだ。
しかも、ミナが見た目よりも年が上で、知識も経験も想像以上に豊富であることがゼビルスによって報告されていた。それは、レオストがミナを信頼するに十分な情報だった。
「な、なぜ、そ、そうお思いになるのですか?」
ミナは動揺してしどろもどろで聞く。
「ふん。ブリア侯が嫉妬の目をしておったぞ。そのくらいわかる」
「お、恐れ入りました。…はい、わたくしが結婚したいと思っている人でございます」
ミナは正直に言った。
「名はなんという?」
「カイルでございます」
「バンリオルが連れているということは、優秀な私兵なのだろう」
「は、はい。彼はもともと魔物を狩る狩人でございました。草原で迷っていたわたくしを助けてくれたのでございます。その後、バンリオルの私兵となりました」
「ほう…。腕が立つのだな」
レオストは少し考えていた。
レオストはカイルを見て、何を考えているのか? ミナをどうしたいのか? アンドリオンは不安です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。
カイル … ミナの恋人で、バンリオル商会の私兵。元冒険者 23歳
アンドリオン … ブリア侯でブリア領主 25歳
バンリオル … ボリック・バンリオル ミナを支援する大商人 29歳
レオスト … 王弟で、コブルーの開発部長 42歳
ゼビルス … レオストの長男で、ミナに好意的。19歳
エカーリア … ブリア領主の妹 22歳
セグリオとバラントン … コブルー担当の官僚




