ミナのひそかな楽しいたくらみ
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。ミナは、国家銀行案で王都の銀行を救い、街道を舗装するための商会の案を出し、王弟レオストの問題を解決した。レオストの長男ゼビルスとも交流し、王太子クルストにも会った。王都での日程は終わった。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
第125話 アンドリオンへのミナの返答
17日間の滞在を終えて、帰りの馬車も4日かけてゆっくり移動し、やっとタンブリーに帰ってきた。この道が石畳になるかと思うと、すごく楽しみだ。王都がもっと近く思えるだろう。
翌日の朝から、ミナはアンドリオンの執務室で、数人の官僚たちを交えて王都の報告をした。
エカーリアも王都でのことに興味を持っているので、参加している。
「…ということで、コブルーとフリストル間の街道が石畳に整備されることとなります。ですので、これに合わせて、タンブリー周辺の整備が必要となります」
「たとえば、どんなものが必要だ?」
「はい。まずは宿。今の宿では足りません。それから、宿場と宿場の間に、休憩所をつくり、そこには食堂や農産物販売所などを作ります。あとは、馬車を点検する職人の詰所…と言ったところでしょうか」
「ふ~む…」
アンドリオンは腕組みをして考えた。
「ふむ…。わかった。イソールズ、あとは頼む。担当を選べ」
「は、かしこまりました。しかし、最近は仕事が増えましてございます。少し役人を増やしませんと…」
「ああ、そうだな」
アンドリオンもそのことは悩みの種だ。
「ミナ、人手不足が深刻だ。これをまず解決せよ」
「は、はい! …かしこまりました」
* * *
そのあとは、久しぶりにアンドリオンとエカーリアとミナの3人で昼食会だ。
「ミナさん、王都のお話を聞かせてくださいませ!」
エカーリアは王都に行ったことがない。
「今回は、レオスト殿下のご長男、ゼビルス様にお会いしました。19歳のまだ若い方でございます。大変すばらしい方でした」
「まあ! ということは、その方は時期ラッスル公爵におなりになるかたですね?」
エカーリアは興味を示す。
「はい。そうでございます。今は領地の運営を手伝っているとおっしゃっていました。今度、農民支援制度を領地に採り入れたいとおっしゃっていました。
…もしかすると、エカーリア様にお似合いのかたかもしれませんね!」
「ミナ、適当なことを言うなよ。公爵家の長男なら、もう婚約者がいるに決まっている」
アンドリオンがじろりとにらむ。
「いえ。結婚相手探しの舞踏会で、わたくしを連れてきてくださったゼビルス様に、王太子クルスト殿下がおっしゃったのです。『こんな女しか連れて来れない。さもありなん』と。つまり、結婚相手が今はいないということですよね」
「まあ~!」
エカーリアの目が逆三角だ。
アンドリオンは顔を上げた。
「ああ、そうか…。あの件で…」
アンドリオンも、1年前のあの事件で、ゼビルスの婚約はなかったことになったのだろうと思い当たった。
「でも、ゼビルス様は、わたくしのために王太子に注意なさったのです。『女性に対して失礼です』と。すばらしい勇気だと思いませんか?」
「まあ! そうなのですね! 本当にすばらしい騎士道精神をお持ちなのですね…」
エカーリアはちょっと頬を染めた。
「はい。ゼビルス様はとても賢い方で、わたくしに対する質問も、とても深い質問をなさるので、本当に驚きました」
「たとえばどんなことをお聞きになるのですか?」
エカーリアは興味津々だ。
「たとえば、わたくしが何かの解決策を申し上げると、ゼビルス様はこう質問なさいます。『その答えが出る人と出ない人の違いはなにか?』と。
普通はそんなことを聞く人はいないのです。これは賢者の資質のあるかたの質問ですわ」
「まあ…。本当ですね。すばらしいです」
ミナは、エカーリアがゼビルスファンになるのを見て、満足した。
アンドリオンは、ミナの隠れた意図にうすうす感づいて、しばらく考えているようだった。
エカーリアの嫁ぎ先が公爵家となれば、母フィルベラがどんなに喜ぶかと思うと、アンドリオンも一考に値すると思える。しかも、同じく例の事件で傷ついた者同士。互いに引け目がない。
「で、今回わたくしは、いろいろと王都でのブリアの噂を聞きました。あっという間に改革をしたすごい領地という評価をいただいておりまして、ブリア領主のアンドリオン様のことが知れ渡っていたのでございます」
「いやいや、君のことが知れ渡っていたのであろう? どうせ私はついでだ」
「いえ。船の技師の学生がブリア出張所に設計図を売りに来たのですが、ブリアは平民でも能力さえあれば取り立ててもらえる領地という評判があったからですわ。
これは、他国の良い学生をブリアに取り込む好機。そこで、王立技師養成所に『困窮する平民の学生はブリアが援助する』という旨の張り紙をしておきました」
「な、なるほど…。君は抜け目がない」
フフッとアンドリオンが笑う。
王立技師養成所の学生は優秀な者ばかりだ。優秀な技師がブリアに集まれば、領地の力は上がるだろう。
「ボリックさんもおっしゃっていましたわ。たったの1年半でブリアが変わったと王都では驚きを持って話題にされているのですって」
「…お兄様は王都でそんなに評価されておいでなのですね…」
エカーリアも嬉しそうだった。
「はい。とても。レオスト殿下もアンドリオン様を評価していらっしゃいました。決断と行動の早い領主だと」
レオストは「アンドリオンをうらやんでいる」と言っていた。これは、ミナを活用できているアンドリオンへの賛辞だ。
「今回の王都行は、わたくしにとってはとても良い気づきがございました。アンドリオン様のそばでなければ、わたくしはこうしていろいろなことをさせていただくことはできなかったでしょう。
前は気づくことができなかったのです。わたくしは、これからもアンドリオン様のおそばで働かせていただきたいと存じます」
ミナは素直に言った。
前に馬車の中でアンドリオンに言われた言葉の返答だ。
「それはうれしいことだな……」
ミナに改めて言われると照れくさい。
アンドリオンは以前、自分が馬車で怒り出したことを、子供っぽかったと思って反省していたのだ。
「……まあ、また呼び出されないことを祈る」
ちょっと冷めたふりをして、フフッと笑った。
次は、ミナの大ナタを振るう業務改善です。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらいだが、中身は…。
アンドリオン … ミナが仕えるブリア領主。25歳
エカーリア … ブリア領主の妹。21歳
イソールズ … 領主補佐官
ゼビルス … 王弟レオストの長男。レオストはミナの支援者
ボリック … ボリック・バンリオル。大商人でミナの支援者




