自由港がなぜ国を守るのか?
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。ミナは国家銀行の仕組みを考えて、王都を取り付け騒ぎから救った。さらに、王弟レオストに頼まれ、街道商会を作って舗装するという案も弟うんする。レオストの長男ゼビルスは、ミナを王立学院へと案内した。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
学生は次のように質問した。
「ミナ殿の国家銀行の案で、バンリオル銀行の前にいた民が、銀行からお金を引き下ろすのをやめたと聞きました。『支払いを保証する』とレオスト殿下がおっしゃったのに、なぜ支払いを求めなかったのですか? 不思議です」
「まあ、とても良い質問ですね」
学生たちはキラキラとした目でミナを見た。中には、答えられるのかと意地悪な目をする者もいる。
「では、皆様にお聞きしますが、今、お金をいくら持っておいでになるかしら?」
みんな、グッと黙り込む。
「ウフフ。口に出してお答えいただかなくていいのですよ。皆様が今お持ちのお金は、ご自分の家の財産のほんの一部でしょう?」
学生たちは頷いた。
「でも、もし全財産を皆様が持って歩いていたら、どうなりますか?」
「いや、それは怖いです! 狙われます」
「ええ、その通りですわ。安心できませんよね? つまり、人は恐怖を避けて、安心に向かうようにできているのです」
「恐怖を避ける?」
「ええ。つまり、銀行に行ってお金を引き出そうとしたのは、恐怖にかられたからで、その恐怖を避けようとして、お金を引き出そうとするのですわ。
でも、『お金の支払いを保証する』と言われたら、どちらが恐怖になるでしょうか?
引き出した方が恐怖になりますよね。家に帰る間に狙われるかもしれません。家に置いておけば強盗が来るかもしれません。
用もないのに引き出しておいて、盗まれたら、バカだと笑われるかもしれません」
「なるほど…」
そう言ったのはゼビルスだ。
「お金の流れは、お金を見るのではなく、人の感情を見るのですよ。
これを買うと安心するか、これを買うと楽しいか、特別な自分になれるか。
逆に、これを買わないとバカにされるか、恐怖にかられるか。
そういう感情ですね。すると、お金がどう流れるかがかなりわかるのです」
学生たちは声も出さずに何度も頷いた。
「じゃ、僕も質問!」
別の学生が手を上げた。
「ミナ殿は自由港という提案をなさったと聞きました。たくさんの国のたくさんの人に利用してもらうためだと聞いています。なぜこれが国を守ることになるのですか?」
「まあ! これも良い質問ですね!」
ミナは学生の質問のポイントがすばらしいので、目を輝かせた。
「皆様があるカフェをいつもみんなで利用して、そこで議論を戦わせたり、笑い合ったりして楽しんでいるとします。そこへ、横暴な人がやってきて、『ここは俺様のものだ』と言ったら、みなさんはどうしますか?」
「もちろん、みんなで叩き出します!」
がっしりとした学生がゲンコツをつくって、すかさず言う。
「はい。そうですよね」
ミナは笑った。
「でも、叩き出そうとする人と、何もしないで去る人がいるとします。その違いはなんですか?」
「ええと…」
みんなが考え始める。
「あ、わかりました。その店がどれほど好きか、好きではないか、の違いですね!」
「そういうことです」
少し年若い学生の答えに、ミナは頷いた。
「つまり、その店のために横暴な人と戦うか、戦わないかは、その店がどれだけ好きか、…言い換えると、その店がどれだけ貴重か、ということにかかっています」
「なるほど…。そうですね。他にも似たような店があれば、わざわざ戦ってまで守りませんね」
「いや、俺は絶対戦うぞ! 横暴な奴は許せんからな!」
ゲンコツの学生がそう言うと、アハハとみんなが笑う。
「そう。力に自信があれば、力を見せるために戦うこともできますね。でも、国としては、戦うということはお金も人の命もかかることなのです。
ですから、貴重なもののためにしか戦わないでしょう。
自由港の考え方は、これと似ています。誰にとっても貴重な存在になれれば、何かあったときには本気で守ろうとしてくれる国が増える、ということです。一国では勝てるかどうかわからなくても、数か国が集まればたいがい勝てますよね。ということは、戦いを挑む者はいなくなります」
「なるほど………」
学生たちはため息をついた。
一番近くにいた学生が、ミナをまぶしそうに見ながら言った。
「経済とか、国策とか、そういうものと人の感情は無縁だと思っていましたが…。人の感情で国やお金を動かしているのですね」
「ええ。良い理解ですわ!」
ミナは嬉しそうな笑顔で学生を褒めた。
「で、では、次は私の質問を!…」
と次々に手が上がるのをゼビルスは苦笑しながら抑えて、ミナを連れて王立学校を後にした。
次にゼビルスが案内するのは……。
この小説は、読みながらいつの間にかビジネス感覚が身につくという、世界初の機能小説です。よかったら、ポイントをつけて応援してくだると嬉しです! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問で、王都では天才行政官と呼ばれる。見かけは18歳くらい
ゼビルス … ミナを支援する王弟レオストの長男




