商務庁官僚、ミナの言葉が意味不明
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。ミナは、王弟レオストに頼まれ、街道を効率よく舗装するために、街道商会の案を出した。それを商務部に説明しようとしたが、誰も理解できなかった。わからないとも言えず、彼らは黙り込む。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
「あ、あの…」
末席の官僚が手を上げた。
「私はまだ不勉強でございまして、よく理解できません。もう少し説明をしていただけますでしょうか」
その言葉に、多くの者がほっとした顔をして顔を上げ、みんなで顔を見合わせる。
ミナもほっとして、話し始める。
「はい。失礼いたしました。では、具体的な数字でご説明いたします。
仮に、1000万ポルで石畳の道が敷けるといたします。それが10年で敷きかえる必要があるとしますと、10で割ります。1年では100万ポルの費用がかかることになります。
その道を仮に年間で延べ100万人の商隊、または荷車が通るとしたら、1回分が1ポルとなりますね。これが原価となります。
それでは商会は儲かりません。基本的に商品の原価は価格の半分。ですから、街道も原価の2倍以上を通行料とする、ということになります。
仮に3倍としますと、年間300万ポルが売り上げとなり、原価は100万ポルですから、残りを配当や運営費、次の道路の建設資金に使うのでございます。
うまく行けば、10年後には出資者は出資金を上回る利益を得ることになるでしょう」
「………」
皆し~んとして、誰も声を発しない。
(どうしちゃったのかな……)
ミナはまったくわからない。こんな当たり前のことの、どこが違和感なのだろう?
「あの…、どうか……なさいましたか…?」
小声で聞いてみた。
キアンは腕組みをして下を向いたまま、黙り込んでいる。
「なにかご不明な点がございますか?」
再度聞くが、誰も何も言わない。
(こ、困った…。どうしたらいいの?)
イズランは、全員が静まり返る気持ちがわかったが、どうすることもできない。
ミナはキアンとイズランを交互に見るが、どちらからも返事がない。
「あ、あの…。続けて出資金についてもお話しさせていただいてよろしいでしょうか」
まだみんな腕を組んで黙っている。
イズランは仕方なく、
「ミナ殿。始めよ。書記が記録しておるので、後で皆、文字を確認するであろう」
と言った。
「はい。では、次は出資金についてお話しいたします。これもまだ、建設費が出ておりませんので、仮の話となります。考え方としてお聞きいただければと思います。
仮に、今回のフリストル―コブルー線で1000万ポルがかかったといたします。さらに、初年度の運営費として3%ほどを上乗せし、合計1030万ポルの出資を募ります。
わたくしは大商人がどれだけいるかは存じませんが、仮に、1万ポルを一つの単位として募集しますと、出資者は1030人となり、10万ポルを一つの単位としますと、103人となります。
もちろん、一人で複数単位買うかたがいらしても構いません。
これだけのお金を10年で回収し、その後も配当を得たい、というかたが対象となります」
またまた静まり返って、何も反応がなかった…。
ミナの口からスラスラと出て来る言葉が、頭の中に入ってこない。まるで半分外国語を聞いているかのようだ。
反抗して聞いていないのではなく、道路から金を稼げるということが、頭に入ってこないのだ。
通行税から離れられず、通行料の意図がわからない。減価償却の考え方もわからなかった。道路の費用を年数で割ると言われただけで、頭がバグる。
ミナは「あの~………」と困ってしまうのだった。
イズランはため息交じりに首を横に振る。
「ミナ殿……そのように計算を一度に出されては、皆ついていけぬようだ。時間を少し与えてやってくれ」
思わずイズランは官僚たちをかばう。
「はあ……。失礼いたしました」
ミナも黙ることにした。
「う~む…」
苦しそうにキアンが唸る。なんとか理解しようとしているように見えた。
イズランは心の中で思っていた。
(反対者からミナ殿を守れと殿下に命令されたが、私が官僚をかばうことになるとは…。
ううむ…。おそるべし。これがブリアの天才官僚か…)
…とイズランも腕組みをして考え込むのであった。
第119話 3人の抗議
その日の夕刻、ミナはレオストに誘われ、銀月宮主催のサロンに顔を出していた。
王城の中でも、行政や軍事に関わる官僚や貴族たちが情報交換をする場所である。軽食と酒が並び、立ったまま話す者、ソファで談笑する者などで、ほどよく賑わっていた。
ミナはこういう場にはまだ慣れていない。
「君もこういう場でいろいろな人を観察しなさい」
とレオストが言うので、そのとおりに人を観察することにした。
レオストの隣に立ちながら、周囲の会話をぼんやり聞いていた。
ここにいるのは実務を担当している中央の官僚や地方から出張に来ている地方官僚たちのようだ。だいたいは貴族なのだろう。
すると、3人の男が近づいてくる。とてもにこやかとは言えない、少し険しい表情だ。地味だが、立派な身なりから、ミナはその3人をそれなりの地位の者だと感じた。
「殿下、少しよろしいでしょうか」
やや強い口調だった。
レオストはゆっくりと顔を向ける。
「申してみよ」
男たちは深く礼をした。
「私はバドマ領出張所の所長、カルネスでございます」
「デラー領のロイダン」
「エレミア領のシェルバでございます」
3人は互いに視線を交わし、そしてミナを見た。
「殿下。街道商会の件についてでございます」
空気が少し変わった。サロンのあちこちで話をしていた者たちの声が潜まり、こちらに注目が集まる。
「その案を考えたのが――」
カルネスがミナを見下ろす。
「この女性だと聞きました」
ミナは軽く礼をした。
「ブリア侯行政顧問のミナでございます」
サロンの人々は、こそこそと小声で噂をする。
「あれが噂の…」
「国家銀行の…」
ロイダンが一歩前に出る。
「殿下。あの街道は我らの領地を通ります。通行税は我らの重要な収入源です」
シェルバも続ける。
「それを商会に任せるとなれば、我らの収入は激減いたします」
カルネスも言う。
「領主の権利を奪う制度ではございませんか。我らは領主代行。これは捨て置けませぬ」
周囲の会話が止まり、し~んとした。険悪な雰囲気に周りは緊張している。
3人の所長たちは、ミナの案を敵視する。ミナはどうするのか?
このお話は、小説を読みながらいつの間にかMBAが身につくという世界初の機能小説です。
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア侯行政顧問という地位を得る
キアン … 商務部の官僚
イズラン … 王弟レオストの部下。ミナの保護を頼まれている
レオスト … 王弟。ミナの知恵を信頼し、支援する
国家銀行 … 中央銀行のこと。ミナが提案し、取り付け騒ぎを収めた




