財務庁長官カルドゥスがミナを支持……
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。王弟レオストは王都にミナを呼び、街道の問題を解決してもらおうとした。ミナは通行税をやめるという大胆な策を出した。反対する官僚たちの中で、財務庁長官カルドゥスが発言する…。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
黙り込んでいた財務庁長官カルドゥスが、そこで発言をする。
「…ミナ殿には、我々が見えていない何かが見えているように、私は感じます。
前回の大問題、銀行の取り付け騒ぎのときも、結局はミナ殿に助けられた」
官僚たちはしんとして、彼の言葉に耳を傾ける。
カルドゥスが昇進したのは、あの騒ぎを収めることができたからだ。それはミナのおかげに他ならなかった。
「その案を提案するとき、ミナ殿は言われましたな。『国家が支払いを保証するから、支払いが少なくなる』と。最初、私はその意味がわからなかった。
しかし、今現在起きていることは、それを証明しています。
国家が支払いを保証することで、民は安心して金を預けたままでいる。その結果、銀行の残高は上がったのです。
…それは私の予測とは異なっていた」
カルドゥスは静かに顔を右に向け、国王アルーストを見る。
「陛下、いかがでしょう。ミナ殿の提案通りに、一部の道路を商会に任せてみては?」
官僚たちが驚いてカルドゥスを見る。何を言い出したのかよくわからないという顔だ。
「もし成功するならば、全国に広げればよろしい。もし失敗したならば、その時に止めればよいだけのことです」
官僚たちは血相を変えた。
「カルドゥス長官、ほ、本気でございますか? 通行税がなくなるのでございますよ。財源が減るなど、言語道断…」
「いや、財源が減るのではない。財源も支出も、同時に減るのだ。だから、国庫は変わらぬ」
国庫が変わらぬと言われたら、それを否定することは、通行税から出る予算は金貨3000枚が限度と言った言葉が嘘だということをばらすようなもの。誰も否定できなかった。
カルドゥスの言葉は官僚たちを完全に押さえた。
「ふむ…」
アルーストは顎をなでながら、しばらく黙っていた。
官僚たちは誰も口を開かない。
やがて王はゆっくりと顔を上げた。
「カルドゥス」
「は」
「王都とコブルーを結ぶ街道の通行税を廃止する」
会議室がざわめいた。
「そしてその街道を、街道商会に運営させよ」
「はは! かしこまりましてございます」
そして、レオストを見た。
「レオスト、許可する。そなたがこの事業をやってみよ。そして、王国全体に大動脈を作れ」
「御意!」
立っていたレオストはその場で膝をついて、国王に最敬礼した。
ミナもその後ろで、深いお辞儀をした。
第115話 ミナ、天才技師を発見する
「いや~。愉快であった……」
レオストは側近たちを相手に、何度も言う。
銀月宮に戻り、昼にもかかわらず、祝いの酒を飲んでいるところだ。
「そなたらにも見せたかった。あのカルドゥスが折れたのだ。自ら、『国庫は変わらぬ』と言いおった。あのタヌキめ。あくまでも通行税はあまりないフリをしおる。苦渋の言葉であったろうよ」
側近の一人が言う。
「カルドゥス長官は何を思って、そのような苦渋を受け入れたのでございましょう?」
「うむ…」
レオストも考える。
「まあ、取り付け騒ぎのおかげかもしれぬ。もしあれが抑え込めなければ、バンリオルを含め、王国の大商会はかなりの数、つぶれておった。そしたら、財源どころではなかったであろうよ。つまりは、ミナの言葉を受け入れたために財務庁が助けられたのだ」
「なるほど…。では、今回もきっと何か助けられることがあると?」
「ふむ。私にはわからぬが…。後でミナに聞いてみよう」
レオストは自分でも考えてみた。
財務庁にしてみれば、仮に通行税が金貨1万枚であるのを、3000枚と言い張っていたようなものだから、通行税が丸々なくなるとすると、7000枚の損失だ。
それをあえて「国庫は変わらぬ」と言った意味がよくわからない。ただのやせ我慢にしか思えなかった。
「しかし、あの娘は確かに、殿下がおっしゃるとおり非常に有能でございますな。まだ王都に来て1週間も経っておりませぬ」
「うむ。あれがブリアにいるというのは、誠に惜しい。…いや、コブルーは防衛すべきであるから、それには役に立つとは思うのだが…。王都の問題も解決してもらいたいものだ」
レオストは腕組みをして、深く唸った。
「少なくとも、半分ずつ、ブリアと王都にいてもらうようにするのはいかがでございましょう?」
「そうなのだ。私もそれを願っているのだか、ブリア領主がそれを許すかどうか…」
「何をおっしゃいますやら。王弟殿下であれば、ブリア領主など、抑えられまする」
側近たちは頷く。
「いや…。もしかすると、ミナはあのブリア領主に惚れているのかもしれぬ。年頃も程よいからな。
ブリア領主も未だ結婚しておらぬのもあやしい。ミナを王都に寄こせと言うと、渋い顔をしおる。
もしかすると、ブリアから引き離せば、ミナが機嫌を損ねるかもしれぬであろう?
せっかくの頭脳が活かせなくなるなら意味がない」
「な、なるほど…」
「女ですから、難しいところでございますな」
皆そこで「ふ~む」と唸るのであった。
「ま、手は打ってある。ミナの本音を引き出す手をな…」
レオストはニヤリとした。
レオストが長年、財務庁と争っていた問題をミナは解決に向かわせることができるのか?
財務官僚とのやり取りはまだこれからです。
よかったら、ポイントを入れてくださるとうれしいです! 派手なお話ではありませんが、じっくり、本気で書いています! よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア行政顧問。見かけは18歳。中身は…
レオスト … 王弟で、かつて前ブリア領主と結託して王太子暗殺未遂事件を起こした
アルースト … 国王。レオストの兄
バンリオル … 大商会で、先日取り付け騒ぎを起こしたのをミナ
が救った
ブリア … ミナの働く領地
コブルー … ミナが自由港にしようと開発中の港




