街道を整備するための、ミナの究極の案とは
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。王弟レオストは王都にミナを呼び、街道の問題を解決してもらおうとした。財務庁はそんな金はないという。ミナは良い案を出せるのか?
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
その午後、ミナはコラル宮に戻り、ソファにゆったりと座りながら、いろいろと頭の中で案を考える。
そして、書字板に殴り書きをしてみては、また考え、それからペンを持ち、紙に書いてみる。煮詰まると、部屋を動きまわったり、少し庭を歩いてみたりした。
そして、また部屋に戻る。
そして、ふと思いつく。
(そう! 通行税が財務庁に入るから用途がわからなくなる。そして、殿下が要求しても、妥当な額がわからず、「出せ」と推しきれなくなる。
だったら、最初から税を財務庁に入れなければいいということだわ)
そして、案を書きあげる。
これも貯水池建設で使う予定のコンセッション方式だ。
(これは…一番喜ぶのは商人だわ!)
商人が喜ぶように道路を運用できれば、その道路はうまく活用できていると言えるはずだ。なにしろ、有事の時はともかく、普段一番道路を使っているのは商人だからだ。
道路が良ければ、ミナも王都に来るとき馬車をゆっくり走らせる必要がないのだ。
(うん。これはいける…)
ミナはうふふと口元が緩むのだった。
* * *
次の日の午前中、ミナは銀月宮に着くと、ルーシャがレオストのいる場所まで案内してくれる。そして、レオストの執務室にやってきた。
レオストと、直属の6人の部下が座っており、ルーシャと護衛兵たちが部屋の隅に立つ。
「ミナ、どうだ。何か考えたか?」
「はい。案を作成してまいりました」
ミナは昨日書き上げた資料を机に広げて見せる。
「もう書いたのか…」
レオストは驚いたようにその資料を見た。
「殿下。こちらは街道商会の案でございます」
と、ニッコリして提案する。
「街道商会?」
「はい。問題は通行税でございます。通行税は財務庁に入るため、道路に使われません」
「うむ」
「そこで、通行税をやめてしまうのです」
「なに?!」
レオストは飛び上がりそうに驚いた。いきなり何を言い出すのかと思った。
「税ではなく、『通行料』とします」
「…ほう…」
なんとか落ち着いて椅子に座り直す。
「そして、その通行料を取るのは国ではなく、街道商会です。商人たちが出資して作る商会で、街道の整備と管理を請け負います」
「つまり……」
レオストは腕を組んだ。
「通る者が商会に金を払う。その金で街道を直すということだな?」
「はい。その通りでございます。そうすれば通行料は必ず道路に使われます」
「なるほど…」
レオストは片手でげんこつをつくって、もう片手の平にポンと叩きつけた。
「理解した。つまり、君が考えたのは、財務庁に通行税をやるからいけないのであって、最初から財務庁に金を回さない、ということだな!」
「さようでございます!」
嬉しそうなレオストを見て、ミナも嬉しくなる。
「通行税をやめるのは、財務庁から税を取り戻すよりずっと簡単であるな!」
「その通りでございます」
ミナも笑う。
「う~む…。なるほど。これは思いつかなかった…。これは財務庁に一泡吹かせられる。愉快痛快だ!」
レオストは声を出して笑った。
「で、その商会はどうやって作る? まずそれに金がかかるであろう?」
「商人たちから出資者を集めます。例えばですが、一口金貨10枚として、100人集まれば資本は1000枚になります。最初はその資金で街道を整備するのです。
それから、通行料を取って収益としますので、順次、他の道路に手を回します。
うまく回せば、資本金は保全できます。
つまり、これは何人もの出資者が集まって、一つの商会を運営するようなものでございます」
「ふむ……」
レオストは少し考えた。
「その商会は道路を整備し、利用を管理するだけで、…土地は所有せぬのだな」
「はい」
「市場の出店権のようなものか」
「はい! まさにその通りでございます!」
コンセッションとはまさに市場や祭りの出店の意味なのだ。
「うむ。おもしろい!」
腕を組んで、何度も首を縦に振る。
「う~む…。これは行けそうだ…」
レオストは力強く唸り、ニマリとした。
そして、6人の部下たちに向かって、誇らしげに言った。
「そなたら、聞いたか?! …これがブリア侯行政顧問、ミナだ」
「はは!」
6人が軽く頭を下げる。彼らはぐうの音もなかった。そして、レオストの喜ぶ姿を嬉しそうに見ている。
ミナは少し照れて、声を出さずに笑った。
壁際で、ルーシャが誇らしそうに微笑んでいるのが見えた。
第114話 御前会議
王城の二階には各種の会議室がある。官僚たちが最終の報告をし、決裁を仰ぐ場である。
この会議室の中で、国王の御前で最終の討議が行われる。
今日、この場にいるのは軍最高司令官であるである王弟レオスト、そして、軍務庁長官ノルガ、金融部長から財務庁長官に昇進したカルドゥス、商務庁長官ディヨルド、その他8人の重鎮たち、宮廷書記官たち、そしてミナであった。
ミナはレオストの後ろに立っている。平民の女が王の前に立つなど、普通はあり得ない。
財務長官カルドゥスはミナを知っている。国家銀行の件で討議をしたからだ。
しかし、なぜミナが王族の庇護を受けているのか彼にはわからない。
商務長官ディヨルドはミナと話したことはないが、自由港の開発本部は形だけとは言え、商務庁にある。その部長はレオストだ。だから、ミナの話は聞いている。ミナがバンリオルと仲が良いことも知っていた。とすると、王族の庇護を受けているのは、バンリオルの影響なのか…。
官僚たちの視線が、ひそかにミナに向けられていた。
「ブリア行政顧問の女か」
「噂の……」
小声が聞こえる。
やがて侍従が声を上げた。
「国王陛下のおなりでございます」
全員が一斉に立ち上がる。重い扉が開き、国王がゆっくりと入ってくる。
国王アルーストはレオストよりも4歳上、現在47歳である。
国王が玉座に座ると、一同がザッと座った。王は深い琥珀色の目で一同を見回す。
すぐ左手には弟のレオストがいる。その後ろには…。
「おや…?」
会議には普通存在しない女性がいることに気づく。
「ミナではないか。年明けにもおったな。確か、取り付け騒ぎのときだ。なぜそなたがここに?」
ミナはその場で深いお辞儀をした。
「陛下。私がブリアから呼んだのでございます」
と、レオストが立ち上がり、代わりに答えた。
「ほう…、そなたが? フフ、また突飛なことを考えたのであろうな」
アルーストは口元と目でニヤリと笑った。
ミナはこの会議で、反対者を押さえられるのか?
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用語集
ミナ … 主人公。ブリア行政顧問。カイルの恋人
レオスト … 王弟で、かつて前ブリア領主と結託して王太子暗殺未遂事件を起こした
ルーシャ … レオストの侍女
バンリオル … 大商会で、先日取り付け騒ぎを起こしたのをミナが救った




