レオストが今一番解決したい問題とは……
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。王弟レオストはミナに王都での問題を解決してもらおうとミナを王都に呼ぶ。ミナは官僚たちの前で、ブリアでの行政改革を説明したが、官僚たちはブリアをバカにする。そこでミナは皮肉で報復した。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
すると、聴衆はむっつりとして、黙り込んだ。
(勝った…)と思って、心の中でガッツポーズをしてレオストを見ると、彼は口元が少し笑っていた。
正面に立つルーシャが、こっそり笑っているのをミナは見た。
「そなたら。質問がないなら、ミナの話はこれで終わりとする。後で、自分の領地に採り入れたいと言っても私は知らぬ。ブリア領主に頭を下げて、聞きに行くが良い。では、これで終わる」
そう言って立ち上がると、皆も一斉に立ち上がる。
「ミナ、行くぞ」
「はい、殿下」
ミナはレオストについていく。そして、ルーシャも一緒についてきた。
レオストはミナを連れて、自分の宮殿に戻った。ソファに座り、「ふう」とため息をつく。
「どうだ、ミナ。私の苦悩がわかるか?」
「はい。よく理解できました」
ウフフとミナは笑う。
ルーシャがお茶を出してくれる。
「それにしては、君は楽しそうだな。なぜ腹を立てぬ?」
不思議そうにレオストが言う。
「えっ? ですが…わたくしは何も損をしておりません。損をしているのは、あの方々ではございませんか?」
損もしていないのに、あそこで腹を立てるのは、彼らに「認めてほしい」と思っている人だけだ。ミナは別に、彼らの承認は必要なかった。そんなものは1円…、いや、1アロにもならないではないか。
良い策を採り入れようとしない者たちのほうが、よほど損をしているのだ。
「なるほど。それはそうだな。……しかし、私も損をしておるぞ」
レオストはこめかみに指をあてながら、悶々とする。
「あの頑固頭どものせいで、国がうまく回らぬ」
「はい。ごもっともでございます」
「ミナ…」
レオストはこめかみを指先で突いたまま、目を閉じた。
「私を助けてはくれまいか。この状態をなんとかしたいのだ」
「はい。お手伝いさせていただきたいとは思いますが、わたくしにできることがあるでしょうか…」
(こちらは平民の女。しかもお荷物と思われている領地の者。それだけで、何か言われるとプライドを傷つけられたと思う人たちって、どうしようもないよね…)
ミナは皮肉でチクリと報復する以外、代わりの良い考えなど思いつかなかった。
第113話 財務庁迂回策
「お昼食の用意ができましてございます」
侍女頭ビオンダが畏まって言う。
「そうか。ミナ、来るがよい」
「は、はい」
銀月宮の食堂…と言っても広間なのだが、そこでミナはレオストと共に食事をとることになった。レオストの直属の部下たち6人とともに昼食を食べる。
これは手でつまんで一口で食べられるような、食べやすいものを集めた料理だ。食べながら話し合うためだ。
現代風に言うと、パワーランチである。
「殿下、お聞きしたいのですが…」
「うむ。何だ。なんでも言うがよい」
「殿下がいま、一番お困りで、一番早く解決したいことはなんでございましょうか?」
「うむ…。それはな…」
レオストはサンドウィッチのようなパンをつまみながら、少し考えてから言った。
「今一番困っているのは、道路だな」
「道路? …でございますか?」
「うむ。私の担当は防衛だ。国を守らねばならぬ。そのためには、いかに早く軍が動けるかが大事だ」
「はい」
「軍が動くには、兵站が効率よくなされねばならぬ。もちろん、武器も十分なければならぬが、運べねば意味がない。だから、まず道が整備されていなければならぬ。そのための費用が足りぬのだ」
「なぜ足りないのでございます?」
「それは…」
レオストは意外なことを聞かれたような顔をした。
「王弟である私なら、すぐに予算を得られると思うか? そこが問題だ。
財務官はなんのかんのと理由をつけて、結局、予算を出さぬのだ。それに対して、我らがどんなに必要性を訴えても、予算がないの一点張り。
それを言われると、私はそれ以上言えぬ。帳簿のすべてを確認することなどできぬからな」
「そうでございますね…」
それは現代でも同じ問題があった。財務省が強すぎて、「財源がない」と言われると、それまでなのだ。
「道がでこぼこであれば、武器を乗せた重い軍の馬車はそこで立ち往生する。こんなことで国が守れるか」
レオストは憤懣やるかたないという様子だ。そして、深いため息をついた。
「考えてもみよ。防衛というのは、ある意味、局所的だ。
ブリアのようにグリダッカルに常に狙われる領地もあれば、マルーズのように、アラゴンキアの中央部にあるから、どこからも侵略される心配がないという領地もある。
マルーズは平和だと言い、ブリアは危機だと言う。
つまり、マルーズにとってみれば、ブリアのために無駄な軍費を払っていると感じるのだ。
そのようなバラバラの領地の調整をしながら、国家は全体を考えるのだ」
ミナはその気持ちがよくわかる気がした。
「それはつまり、官僚の出身地が関係していて、予算の重要性を理解しない、ということでございましょうか」
「ああ。そんなところだな。出身地が問題のこともあれば、利益が絡むときもある。戦争を体験していない世代もいる。身分が違えば、見える世界も異なる」
「なるほど…」
ミナは少し宙を見て、考えてみた。
多くの人は「損、得」で考える。これはまだ視野が狭いときの特徴だ。
全体が見えないと、局所的、短期的に損、得を考える。
心が成長するほど、視野が広くなり、全体で考えられるようになるのだ。
しかし、残念ながら、局所的・短期的な考えの人ほど、自分が局所的・短期的であることを知らない。
ミナはスープを味わいながら、頭を働かせる。
「殿下、もうひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」
「うむ」
「通行税というものがございますよね。それは道路のために使われないのですか?」
レオストは頷く。
「ああ、ある。荷車や商隊から取っている。しかし、それは領地で集められ、最終的には王都の財務庁に行くのだ。そして、他の税と一緒になり、そのときにはもはや通行税ではなくなる。だから、我々はいくら要求すれば妥当なのかわからなくなるのだ」
ミナは小さく頷いた。
「なるほど」
ミナは思わず笑顔になってきた。
「なんだ、ミナ、何か考えたのか?」
レオストは期待に満ちた笑顔でミナに尋ねる。
「はい。何か考えられるかもしれません。少々お時間をくださいませ」
「ふむ。期待しよう」
そう言って、レオストは黙って食事をし始めた。
6人のレオストの部下たちは軍事関連の文官だ。彼らは主人のレオストが期待している娘をそれぞれ値踏みしていたが、レオストの機嫌がよくなったのを見ると、ミナを見る目が少し変わっていた。
取り付け騒ぎを国家銀行案で収め、天才と言われ始めたミナ。
だが、ブリアをバカにする官僚たちはミナを侮る。ミナは街道の問題を解決できるのか?
よかったら、評価やブックマークをいただけますと、泣いて喜びます。
よろしくお願いします。
用語集
ミナ … 主人公。ブリア行政顧問。カイルの恋人
レオスト … 王弟で、かつて前ブリア領主と結託して王太子暗殺未遂事件を起こした
ルーシャ … レオストの侍女
グリダッカル … ブリアを狙う敵国




