モーガダイの侵攻阻止はなるか?
MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。敵国グリダッカルは、モーガダイ国の傭兵船団を雇い、海からコブルーを侵略しようとしていたが、湾口になぜか大量の船が現れ、出航できない。だが、その障害をすり抜け、一隻の商船が湾に入ってきた。その船に乗っていたのは…。
このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください
初めてお読みになる方は、下に用語集があります!
レンダはどこから見ても商人風の服装をしていた。バンリオルの紋章入りのバッチを襟元に付けている。
「あんたはあの船のことは知らんのか?」
「知りませんね。いったい何をやっているのだか」
「なんであんたらはあそこを通れたのだ?」
「いや…特に何もしていないのですが、軍船が多数見えたので、攻撃されるのかと思い、白旗を上げたのです。すると、他の商船が避けてくれたのです。
よくわからないまま、通ってきました。私はまだ番頭になりたてでして…。
船長に聞いたら、『通れるんなら通ろう』ということで…」
レンダは苦笑いをした。
「ま、我々は荷を下ろせればいいのですが…。西バッフマに行ってもよいでしょうか?」
「ううむ…」
ガルバは何がどうなっているのかわからなかった。
「来るときに補給で立ち寄った港でも、傭兵団が大量にいて、驚きましたよ。戦争でも始めるんでしょうか。とりあえず、そこでも白旗を上げて通り抜けましたが…」
「なに? 傭兵団とはなんだ?」
「なんでも、バンサラーを襲うような…。いや、よくわかりませんが」
「なに? バンサラーだと?! 詳しく話せ!」
「え? と言われましても、我らはそこを通っただけでして」
とレンダはオルデンと顔を見合わせた。
「どこの港だ?」
「マカリ島の港です」
「マカリだと……うぬぬ」
ガルバは唸り声をあげた。
それはコブルーとバンサラーを結ぶ地点にあるワモワ海の島だ。商船の補給に使われる。
「ありゃ、アラゴンキアの王族を襲うつもりじゃねえか。アラゴンキアの王族がお宝を載せてそのあたりを通るらしいからな」
船長のオルデンがレンダに言うように口を出す。
「どこが雇った傭兵だ?」
ガルバが船長に聞く。
「知らんけど、傭兵船団を雇うってのは、だいたい海軍がないか、弱い国っしょ」
「どこだろうな。内陸の国なんて山ほどあるぞ」
レンダも肩をすくめる。
「ま、グリダッカルとか、そういうとこじゃねえのか」
レンダとオルデンが二人で顔を見合わせてしゃべっている。
「アラゴンキアの敵だからな。王族を狙うなら、ありえるな」
うんうん、と頷きながら、レンダが答える。
「な、なに?!」
ガルバの顔から血の気が引いた。
「いやいや、俺ら、何にも知らないっす。巻き添えはごめんだぜ」
オルデンは両手を振って、後ろに下がる。
「…わかった…。もう行ってよい…」
「ありがとうございます」
そう言って、レンダとオルデンは船に戻って行った。
レンダとオルデンが去ったあと、ガルバはしばらく黙って立っていた。湾口の向こうでは、まだ船がゆっくりと漂っている。今や120隻近い船だ。
モーガダイ艦隊50隻は、そこを通ることができない。
しかし、そもそもそこを力づくで通り抜ける必要があるのか?
ガルバは低く言った。
「……グリダッカルの使者を呼べ」
「はっ」
副官が部下を走らせる。
しばらくして、使者が呼ばれてきた。
「司令官殿、どうなされた?」
ガルバは振り向きもしない。
「バンサラーに傭兵船団を送ったのは貴様らか?」
使者の顔が一瞬固まった。
「……何の話ですかな?」
ガルバがゆっくり振り向く。
「とぼけるな」
低い声だった。
「マカリ島から傭兵団がアラゴンキアの王族の船を狙っているそうだ」
「なに?! それはいったい…」
使者は表情を変えた。
「そんな話は聞いておらぬ」
ガルバはにらみながら言った。
「商船が見たと言っている」
「商船…ですと?」
使者は鼻で笑った。
「船乗りの噂を信じるのですかな? 船乗りの言うことなど、嘘八百ではございませんか」
ガルバの目が光る。
「今なんと言った?!」
「いや、…これは失礼。軍船の船乗りのことではござらぬ」
使者はまずいことを言ったと自覚した。
ガルバは湾口を指さす。
「あれを見ろ」
使者は外を見た。湾口には船が詰まっている。数えきれないほどの数だ。
「……あれは?」
ガルバが言う。
「我らは出られん」
使者が振り向く。
「それは貴殿らの問題でございましょう。さっさと撃沈すればよろしい。なんのための大砲ですかな?」
「バカを言え! ドーハイの旗を上げた船は怪しいが、そのほかの商船や漁船は本物だ。それを攻撃すれば、その国を敵に回すことになるではないか」
ふたりはにらみ合った。
「あの船は我らを足止めしようとしている。なぜか? 我らが王族を襲わぬようにするためだろう?!」
「いったいなんの話やら…」
使者はだんだんと血が上ってきた。使者はモーガダイがアラゴンキアの王族を襲う話は聞いていなかった。
ガルバはさらに言う。
「グリダッカルは一枚岩ではないということだ。別の勢力が別の傭兵団を雇い、使者殿とは違う動きをしているということだ。つまり、われわれを侮ったということだろう!」
「話が通じぬ男よ。まったく意味がわからぬわ! 港を出ぬなら、金を返してもらおうか!」
使者もキレ始めた。
「なに?! これだけ準備させておいて、金を返せだと?! バカを言うな!」
二人はどんどんと険悪になり、それぞれの従者や副官が言い争いを止めようとしたが、手を出せない。
「この話、なかったことにしてもらおう!」
「なんと! 司令官ごときがそのようなことを言える立場か?!」
「ふん! 身内に裏切られておる使者など、なんの価値もないわ!」
そして、ガルバは周りを見回す。
「衛兵! 使者殿はグリダッカルにお帰りだ。お見送りせよ!」
「はっ」
「な、なんと…」
使者は青ざめて、動くものかと石のように身を固めた。
しかし、従者ともども衛兵に担がれ、どこかに運ばれる。
「ぶ、無礼な! このような扱い、グリダッカルの王が許しませんぞ!」
叫びながら、使者は消えていった。
「忌々しい…」
ガルバは歯噛みをする。
「一番おいしい王族とその宝を奪われるとは…。なんという不覚…」
「いったいどこの傭兵団でしょうか…」
副官が言う。
「決まっておるわ! マカリ島を補給地とする宿敵ザイトンよ!」
ガルバは吐き捨てるように言った。
(今から出ていってももう遅い…)
握り締めた拳が怒りで震える。
「…グリダッカルなどの話に乗っている場合ではなかった。…次はやつらを叩き潰してくれる…!」
ガルバは望遠筒を腹立ちまぎれに投げつけようとしたが、……それが高価な望遠筒だということを思い出して思いとどまった。代わりにギリリと歯ぎしりをする。
「全軍、引き揚げろ!」
憤懣やるかたなく、ガルバは踵を返して戻って行った。
オルデン…だれ?
次回は、ミナが王都に…
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用語集
レンダ … バンリオルの番頭。実はカイル
バンリオル … 防衛も担当する大商会
ガルバ … モーガダイの司令官
バンサラー … 対岸にある国
オルデン … バンリオルの船長。実は…
アラゴンキア … ミナの住むブリアのある国
グリダッカル … ブリアを侵略する国
ドーハイ … かつてモーガダイが滅ぼした国




