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モーガダイの軍船、バッフマ港を出られず。そこへ…

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。今コブルー港は敵国グリダッカルに雇われたモーガダイ国の傭兵船団に狙われていた。今軍港を出航しようとしたその日の朝、モーガダイが見たものは…。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


 夜明け前の海は静かだった。バッフマ湾の外海、ワモワ海の南の水平線の向こうから、ゆっくりと風が流れてくる。


 その海に、一隻の商船が漂っていた。帆を半分だけ上げ、風任せに流れている。船体は古く、どこにでもある小さな商船だ。

 だが、その船の甲板では、鋭い目の男が湾口をじっと見ていた。


「……そろそろだな」

 男の名はアルソー。それはトガリア商会の船だった。


 そのとき、水平線の向こうからもう一隻の船影が現れる。小さな漁船だ。

 しばらくして、さらに2隻。

 …また1隻。


 やがて湾口の前には、15隻ほどの船がゆっくりと漂い始めた。

 漁船。小型商船。古びた輸送船。どれも旗はばらばらだ。

 アーガリアの旗。ヨーカイダの旗。どこかの小国の旗。


 だが、よく見れば船は互いに旗を振り、連絡を取り合っている。

「今15隻だ」

 アルソーが言う。

「もう出てくる頃だな」


 湾の奥から、太鼓の音が聞こえてきた。モーガダイ艦隊の出航合図だ。

 霧の向こうから、最初の軍船が姿を現した。


 闇に紛れる黒い船体。敵の乗り込みを阻止する高い舷側。

 船首にはモーガダイ海軍が誇る最新兵器の大砲。そして、水面下に隠された鋭い衝角は体当たり用の装備だ。


 30隻の軍船がゆっくりと列をなして、湾口へ向かってくる。その先に、漂う商船の群れ。


 軍船の見張り台で見張りが叫んだ。

「前方、湾口に商船多数!」


 ガルバはその様子を見て波止場から望遠筒を取った。湾口には船が漂っている。

「……なんだあれは」


 副官が言う。

「商船でしょう。よくあることです。ときどき船乗りたちが腕を競って湾口を通り抜ける競争を始めるんですよ」


 だがガルバは眉をひそめた。そのときには50隻になっていた。数が多すぎる。そして、さらに船がゆっくりと湾口へ集まってくる。まるで、偶然そこに流れ着いたかのように。だが、確実に航路の中央を塞いでいた。


「こんなときに、いったいなんなんだ。……蹴散らせ!」

 ガルバが低く言う。副官が怒鳴る。

「警告砲を撃て!」


 ドン…!!


 腹に響く重い砲声が海に響く。

 それを合図に、各軍船からも警告砲が撃たれた。


 ドン…!!

 ドン…!!

 ドン…!!


 だが、商船はゆっくりと向きを変えるだけで、なかなか動かない。

 漁船は帆をたたみ、修理でもしているかのように止まっている。その間にも、さらに船が増えていく。


 …60隻。…70隻。

 湾口は、いつのまにか船で埋まり始めていた。ガルバの目が細くなる。

「……おかしい」


 副官が言う。

「司令官?」

 ガルバは低くつぶやいた。

「これは偶然じゃない」


 その時、中央にいる船のメインマストの旗が、いつの間にか変わっていることに気づいた。

 ——ドーハイ?


「あ、あれは…ドーハイの旗…? ま、まさか…?!」

 かつて自分たちが滅ぼしたはずの国の旗が翻っている。ガルバは舌打ちした。

「……やられた!」


 だが、その時にはすでに遅かった。湾口には100隻を超す船が漂っていた。まるでドーハイの船に操られているようだ。


 モーガダイ艦隊50隻は、その向こうへ出ることができない。

 海は静かだった。ただ船が浮かんでいるだけだ。しかし、不気味な風が漂っていた。



第110話 アルソーの作戦



 ガルバが商船を蹴散らす命令を出そうかと思っていたときだった。


 湾口から1隻の商船が前に進んでくる。マストには白旗が掲げられている。古びた商船だがそれなりに大きい。船体には武装もない。その船はゆっくりと湾口を抜けて来る。


「……なんだあれは」

 ガルバが望遠筒を見ながらつぶやく。


 副官が言う。

「ただの商船でしょう」

「いや…あれは…」


 しかし、その船は奇妙だった。他の船が湾口を塞ぐように漂っているのに対し、その船だけはまっすぐ軍船の方へ向かってくる。しかも、途中の商船が自然に道を開けた。


「なんであれだけが進んでくる?」

 不可解だった。

「あれはバンリオルだ!」

 ガルバが叫んだ。もう一つの旗を確認した。 


 バンリオルの商船は何事もなかったように、湾口を通り過ぎ、西バッフマに向かう。

「わからん。なぜあの船は抜けてきた?」

 ガルバは唸る。


「おい、あの船の責任者を連れてこい」

 ガルバが言い、副官が部下に指示を出す。

 バンリオルの船は西バッフマの手前で、軍港である東バッフマに誘導された。


 バンリオルの船から責任者という男と、船長が下りてきて、ガルバの前にやってきた。


「何でしょうか。指揮官殿。軍港にお呼びとは」

 バンリオルの責任者は怪訝そうな顔で挨拶した。

「あんたが責任者か?」


「はい。バンリオルの番頭、レンダです。こちらは船長のオルデン。この騒ぎはなんですか? 船があんなに固まっているのは初めて見ました」


さて、戦いの行方はどうなる? レンダとは? オルデンとは?


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用語集

トガリア商会 … モーガダイに滅ぼされたドーハイ出身者で作った商会で、今はアラゴンキアの商会。そして、「王の剣」の称号を持ち、防衛にも実権を与えられている

アーガリア … ワモワ海の南の大陸

ヨーカイダ … ワモワ海の北の大陸。ミナが住むアラゴンキアがある

モーガダイ … 傭兵団を売りにした軍事大国

ガルバ … バッフマ港の司令官

ドーハイ … モーガダイの対岸にあった国で、滅ぼした

バンリオル … アラゴンキアの大商会で、トガリアと同じく防衛を担当する「王の剣」のひとつ

レンダ … バンリオルの私兵。その正体は実は…

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