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アンドリオン、レオスト殿下を警戒する

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となり、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。しかし、開発初期は領地にお金がないため、ミナはいろいろと領地の改革を進める。ブリア領はたくさんの改革が同時に行われていた。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


第104話 仕事案内所の提案

 

 春の日差しが差し込む中、アンドリオンはタンブリー城の執務室にて、書類の山を前にして腕を組んでいた。


 ビルガン村での謝罪から戻って3日。王都からもレオスト殿下を含む視察団が来るとの報が入り、城内は慌ただしい。


(王都からの視察団…。目的は何か…)

 レオストはコブルー自由都市計画のトップだから、その件の進み具合を見に来る、というのはわかるが、それだけではないだろう。


(トガリアが王の剣として認められたというのは聞いたが…。ふ~む…)


 そこへ、ミナが分厚い書類の束を抱えて現れた。衛兵が扉を開く。

「お忙しいところ、失礼いたします」


「ああ、また新しい税の案だな。待っていた」

 アンドリオンの目は期待の色を浮かべていた。そして、広い机に移る。


「私をまた、新たな税を取り立てる悪い領主にしようと言うのだな」

 冗談を言いながらも、アンドリオンは楽しそうだ。


「まあ。税は儲けがあるところに生じるのですわ」

 ミナはにこりと笑い、机の上に書類や帳簿を広げた。


「なるほど。確かに」

 アンドリオンは納得の顔だ。


「ですが、今回の案は税ではございません。手数料収入となります。税は間接的に増えることもございますが。…こちらは仕事案内所の創設にございます」

「仕事案内所? なんだ? それは」


「コブルーやタンブリーのように、仕事があふれ、労働者が足りない街もございます。一方で、ネオルのように、労働者が余っている街もございます。ですから、仕事の情報を決まった場所に掲示し、仕事が欲しいものはいつでも、仕事の情報が得られるようにしたいのです」


 仕事案内所とは、現代で言う職安だ。ミナは職安のシステムを詳しく説明した。


「なるほど…。つまり、仕事の情報を提供するということか。それはかなり情報が動くことになるな」


「その通りでございます。役所間には定期的な連絡網がございますので、その連絡網を整備して、情報を早く動かします」


 これは職安と同時に郵便事業を作るということだ。


「なるほど…。情報というのは生かしてこそ価値があるのだな」


 アンドリオンはコブルー港の取引情報を与えると言っただけで、バンリオルが歓喜の声を上げたのを思い出す。役所ではそれらをどう生かすのかがわからないのだ。


「さようでございます。情報は行政の大きな財産と言えるでしょう」


 ミナは試算を見せて、手数料収入の予測を立てた。



「少なくとも、労働人口は2割増しになるかと思われます。そして、労使間の問題が発生したときには、役場が間に立って、話し合います。

 労使ともに仕事の良し悪しを互いに報告し合って、それを点数で評価します。ですから、優秀な労働者はより多く仕事が得られるし、優良な雇用主はすぐに働き手が見つかるでしょう」


「なるほど…」

 アンドリオンは少し考えていた。

「これは働ける民を把握する台帳なのだな。有事の時にどれだけの農民兵を使えるかという台帳にもなるな…」

 そう言って、またしばらく何かに思いをやっていた。


「うむ。おもしろい。ではやってみよ。専用の行政官を何人かつけよう。君は多方面に首をつっこんでいる。内容を教えて、あとは彼らに任せるがよい」

 アンドリオンは期待に満ちた目をして言った。

「はい、ありがとうございます!」


 ミナは新たなインフラをつくりだすのが面白くてたまらなかった。

労働者を増やす。そして、役所も収入源ができる。経済が回れば、利益が増え、間接的に税収が上がる。これは長く残る制度になるだろう。


 職安と同時に、通信網の改革もできる。そしたら、郵便為替の仕組みも動かせるだろう。



 アンドリオンは職安の話が終わると、侍従にお茶を用意させる。


「ところでミナ、王都から視察団が来ることになった。レオスト殿下もおいでだ。これをどう思う?」

 アンドリオンはさきほどから気になっている件をミナに相談する。


「…タンブリーの農産物の競りをご覧になりたいのではないでしょうか。税が増える案ならば、興味をお持ちでしょう。そして、コブルーは防衛の案を考えておられるのでは?」


「ふむ。トガリアが言っていたモーガダイの船団によるコブルー襲撃案のことだな」


「はい。あれは無視できません。こちらも海軍を強化していただきませんと防衛できません」

「だが、トガリアの話だぞ? 信じられるのか?」


「わたくしはトガリアの情報網はかなりの精度だと思います。先日の王都の取り付け騒ぎも、トガリアは予測していたのでございます」


「そうか。では、レオスト殿下がおいでになる前に、防衛策を立てておかねばお叱りを受けるな…」


 アンドリオンは真剣に考え始めた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。


進行中の第三部は、第二部の国家銀行案により、ミナがひそかに王都で名を上げていることから生じていく王都改革編と、カイルとトガリアの共闘編です。


よかったら、ブックマーク、お願いします!


用語集

ミナ … MBAを取得したあと、異世界に来て、自由港を作り上げようとしている

アンドリオン … ミナが住むブリア領の若き領主

レオスト… アラゴンキアの王弟殿下

トガリア … 交易商会。ミナの味方で、影で防衛も担当する

モーガダイ …ミナの国の敵国グリダッカルにコブルー攻略を持ち掛けられている東の国

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