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第12話 カイルの孤独

ビジネス…ときには、じゃま者もいる。それに打ち勝て!

今回は、カイルの昔の思い出…。

ミナは村との仮の約束を取り付けてから、11軒の参加者の村人に、一軒一軒、報告と聞き取りに行った。


村と協力することになったということを報告し、それから、春から予定している定期便開始時にどれくらいの量の農産物が出せるかなどを聞き取った。


あとは、一応初回の試験運行参加者の締め切りは過ぎたが、もちろん本格的に始動するときの参加者は歓迎するので、他の村人に声をかけてほしいというお願いもしなければならない。


すでに数軒まわって、今日は南1区の家を回っていた。


(ええっと…、次はリネットさんのところ)

 ミナはリネットの家の扉を叩いた。


「こんにちは! リネットさん。ミナです」

 しばらく返事を待っていたが、誰も出てこない。

(あれ、いないのかな…)


 家のまわりを見回していると、建物の裏から、赤い髪の毛の若い男が出てきた。暗い顔つきで、皮鎧を身につけ、剣を腰に下げている。この家の人のようだった。

(この人も冒険者なのかな?)

 カイルの装備と似ているので、ミナはそう思った。


「あの…。リネットさんはいらっしゃいますか?」

「あんた、ミナだろ。うちは参加するのはやめた。それだけ伝えにきた」

「えっ? リネットさんは参加しないということですか?」

「そうだ。だから、帰れ」


 男は腕を組んで、威嚇するようににらみつける。年のころは17、8歳だろう。

(なんでこの人は私をにらむんだろう?)

 ミナはどういうことなのかよくわからなかった。


「わかりました。参加しない、ということも問題ありませんので、大丈夫です。でも、一応、役場での話し合いなどがありましたので、ご報告してから、もう一度お返事をいただきたいのですが…」


 そう言ったが、男は言葉の途中で怒鳴った。

「うるさい。参加しないったらしないんだ。帰れ!」


(なんだろう。すごく怒ってる? なんで怒っているの?)

「あの、リネットさんに何かあったのでしょうか?」


男はずかずかと近づいて、ミナの腕をひねり上げようとしたが、ミナはさっと躱すように下がった。

「帰れって言ってんだよ。聞こえないのか?」


「参加しないというのは、リネットさんのご希望なのか、一応確認させてください」

「うるさいんだよ!」


 男はミナを突き飛ばそうとしたが、できなかった。ミナが素早くその腕をはらったからだ。


「お、お前…」

 ミナは後ろに下がったが、男は剣を抜いた。

「帰れって言ったろ。お前、怪我したいのか」


(何、この人!)


ミナはあまりの理不尽さに驚愕した。まさか村の中で剣も持たない女に切りつけることはないと思うが、とりあえず、この男から離れなければ…。


(何かを憎んでいるみたい。私、関係ある?)


そう思ったとき、再び男がミナの腕をつかみ、ひねろうとした。


ミナは思わず男の手首をつかみ、技をかけた。男の身体はくるりと宙を飛んで地面にたたきつけられた。


持っていた剣も衝撃で飛んでいった。


「いい加減にしてください! 私になんの恨みがあるんですか?!」

ミナもキレた。


「お、おまえ…」

 地面に倒れたまま、うめきはするが、男は自分がなぜ倒されたのかわからず、すぐに起き上がることができなかった。


「私がいったい何をしたんですか? 何かを怒っていらっしゃるようですが、その理由を言ってください!」

 ミナは怯えずにピシャリと言った。男は立ち上がりながら答えた。


「お前、カイルの嫁だろう? カイルは兄貴の仇だ。母さんはどうかしてる。こんな女の口車に乗るなんて…」

「え、カイルの嫁? 違いますけど…」


ミナはカイルが絡んでいるなんて、思いもしなかった。


(カイルが仇? なんの話だろう。全然わからない。とにかく、この人はただ私に八つ当たりしているだけだわ)


男はまた剣を拾って、剣を構えてミナの前に立ちはだかる。


「クルム! なんてことするの?! 剣をしまいなさい!」


玄関から飛び出してきたのは、40代の女性だった。ミナの声を聞きつけたのだ。


「あ、リネットさんですね?! ミナです!」


 

リネットはクルムと呼んだ男のそばに立ち、頬をバシッと叩いた。驚いた男は、無言のままリネットを見る。そして、そのまま剣を収めて家に入っていった。


それを二人の女が見送る。


「ごめんなさいね…」

「いえ、あの…。助けていただき、ありがとうございます」


 とりあえず、助かった。


「あの、参加を取りやめるとお聞きしましたが、それでよろしいでしょうか」

「あ、いえ…。参加したいのだけど…。でも、あの子があの様子じゃ無理かしら…」


 ミナはよくわからなかったが、彼に反対されてリネットが参加できない、ということだけはわかった。


「息子さんですか?」

 リネットはうなずいた。


「あの、急いで決める必要はないんです。今回は試験運行の参加者募集ですから。

気が変わったら、また次回本格的な募集をするときに声をかけていただければいいんです。

それは、村役場のほうでかまいません。

役場のかたが一緒に事業を進めてくれることになりましたので…」


リネットは情けなさそうな顔をしていたが、少しほっとしたようだった。


「そう。よかった…。今はあの子が神経質になって…。もう少し後のほうがいいわよね」

「ご相談がありましたら、いつでもお声をかけてください。お役に立ちたいと思っていますので」

「わかった。ありがとうね…」


 そう言って、リネットは力なく家の中に戻っていった。


 それを見送りながら、ミナはため息をついた。


(異世界って危ない。あんな子が剣を持っているんだから…)

ちょっとずれた思いが浮かんで、ミナは帰路についた。


(あの子、なんて言っていたっけ?)


 そう、カイルが兄貴の仇とかなんとか? 私がカイルの嫁だとかなんとか?

(う~ん。嫁はともかく…。カイルが仇っていうのはどうなのかな?)


 考えながら歩いていると、前からカイルが心配そうな様子で走ってきた。

「ミナ…」

「あ、カイル。どうしたの?」


「リネットさんのところに行ったってヨーカに聞いて…」


そう。ヨーカに行先を伝えたとき、彼女もちょっと首をかしげていた。たぶん、リネットさんが参加することに違和感を感じていたのだろう。


カイルはトラブルを予想して、心配してきてくれたのかな、とミナは思った。


「うん、断られた」

「なにか言われなかったか?」

「カイルが仇だって…なんか若い男の子が言ってた」


ミナにとって17,8歳は「男の子」呼びだ。


剣を向けてきたことや、合気道で倒したことは言わなかった。


「やっぱりな…」

「そうなの?」

「う…。まあ、あいつから見たらそうなのかもしれないけど、俺から見たら、そうじゃない…ってとこかな」


 二人は並んで歩いた。

「どういうこと?」


「ファルクは…クルムの兄貴だけど、冒険者だったんだ。2年くらい前のことで、俺たちはまだ駆け出しの冒険者で村の仲間4人でパーティーを組んでた」


 歩きながら、カイルが静かな声で話し始めた。


「俺には未来視のスキルがあることをみんな知っててな。それで俺がいればいつでも勝てるって、みんな思っていたんだ」


「で、どうなったの?」

「俺は自分が勝つ絵を選んだ。それだけだ」


「そしたらどうなったの?」

「ファルクが死んだ」

「え…」

ミナは思わず息をのんだ。


「俺の未来視には、俺しか出てこない。俺が魔物を無事に倒せることはわかっても、他のやつがどうなるかはわからない。

ファルクがその過程で死ぬかどうかは、俺にはわからないんだ」


「そうか。そう…よね」

「でも、クルムは納得しなかった。なんでファルクが死ぬ戦いを選んだんだって言われても…。俺にはそんなこと、わかるはずなかった」

「そっか…」


ミナはうつむきながら歩いていた。カイルがパーティーを組まず一人で狩りをする理由がわかってしまった。

そして、カイルのつらさもわかる。自分の選択で仲間が死んだのだ。


ミナはカイルの手を握った。カイルはそれにちょっと驚く。


「うん、カイルは悪くない」

手をぎゅっぎゅっと握って、ミナは繰り返した。


「カイルは悪くない。すべては自己責任。自分の身は自分で守る。それを人のせいにするのが悪い。だから、もう気にしないでいいの。私も気にしない」


 そう言って、ミナはカイルに微笑んだ。

「ふふっ、母さんみたいなこと言うなぁ」

カイルが笑った。


「そう? お母さんもそう言ったの?」

「うん、そう言って俺を抱きしめてくれたよ」


「そっか。カイルのお母さん、すごく賢いよね。そして優しい」

 そのときにカイルはもう自分を責めるのをやめたのだろう。


「でもね…」

ミナは思い切り顔を上げて言った。カイルはちょっと不安そうにミナの顔を見た。


「あいつ、私がカイルの嫁だって言った。それは違うからね!」

「あ、……うん」

 素直にカイルが認めたので、ミナとしてはすっきりした。

「でも、カイルのことは大好きよ」


そう言って、ミナは笑った。カイルはほっとしたようにちょっとはにかむ。


「それから、妖精でもないからね!」

「え?」

「私は普通の人間だから。わかった?」


カイルを見ながら、ミナは宣言した。

「そ、そうか、わかった。ミナは人間。ちょっと変なところがあるけど…」

「ちょっと変?」

「うーん…。いっぱい変…かな」

「なにそれ!」

 カイルの背中をパシッと叩いた。


「でも、変なのがおもしろい」

 その言葉に満足して、ミナはクスッと笑った。自分はまだ異物なのだ。仕方がないか…。


成功しない人って、すぐに、誰かを頼って、その陰でいいとこどりしようとする。

そうすると、滅びる。

…これ、投資の極意。

つまり、自分が生きるか死ぬかを、人頼みにしないこと。

それを、このファルクの死で理解してくれると嬉しいです。

投資は自己責任…という教訓…でした。


次回、いよいよミナが商会を登録します。


毎度のお願いですが、ブックマーク、伏してお願いします!!

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